| days |
| 2005年05月15日(日) ハザード |
| 私はずっと夢の中で生きているようだ。 まったく地に足が着かず、頭もぼんやりして、目も開いているのか閉じているのかわからない。 早く家に帰って眠ればいいのに、このまま家に帰るのはもったいないという思いがある。 ビールの泡はグラスの淵をのぼって空気に溶けていく。 私はさっきから相手が何を言っているのかまったく理解できない。 もっとわかりやすい言葉で説明してくれと頼んでいるのに、相手は言葉を変える気はないようだ。 よく知りもしない人と同じ時間を過ごすのは苦手だ。 隣の椅子に座るその人を、私は知っている筈だと思い込んでいたけれど、人はそんなに簡単に分かり合えるものではないと、いま思い出した。 ビールの泡がどんどん空気に触れて溶けていく様子を見ていると、私はだんだんイライラしてきた。 赤信号で立ち止まり、向こうのコンビニの前に止まる車を見ていた。 ハザードが規則正しく点滅している。1,2,3,4とハザードが点滅する回数を数えてみる。 目の前の相手を、深く傷つけてやりたいと思うときがある。 コンビニの前を通り過ぎ、車のドアを開き、私はシートに座って、彼はサイドブレーキをおろして指示器を右に出し、私たちはあてのないドライブをした。 信号は赤の点滅ばかりを繰り返し、ぬめぬめと光るアスファルトは不気味な生き物の皮膚のように見えた。 私たちには、行き場所がない。 どこかの店に入るのも億劫で、どこかに車を止めるのも億劫で、かといってどちらかの部屋に入るのも億劫で、だから私たちには居場所がない。 居場所がないふたりは、だからそのまま車を走り続けることしか出来なかった。 それはとても悲しいと思う。 もう帰りたいのだけど、自分の家がどちらにあるのかどこにあるのか、それさえもわからなくなって、私は誰に対して怒っているのか、何に対して怒っているのか、それもだんだんわからなくなってきた。 じっと前を見つめるその人の瞳を見ていたら、だんだん眠くなってきて私はシートにもたれて目を閉じた。誰かが私の耳元で「真剣になれよ」と囁いた。私は一度目を開いたけれど、誰が囁いたかはもう知ろうとも思わない。 |
| Will / Menu / Past |