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2004年12月18日(土)  瞳の奥
自分から手をはなしたものは、けっして戻ってはこないよ。

と、誰が私に言っただろうか。
誰だったか、今ではもう思い出せない。

そのときは、わかってるよと意地を張っていたけれど、今になればああそうだねと思える。

ずっと前にもらったメールを見ていた。
僕は結婚しましたと書いてあった。
私があのとき手をはなさなければ、彼が結婚しなかったのかというとそれは違うかもしれないけれど、彼を一瞬でも迷わせることは出来たのかもしれないと思う。けして、彼が結婚するために私は手をはなしたつもりはなく、自分のためにそのほうがいいのだとあの時は思っていた。
今となっては、いっそ、ずっと捕まえておけばよかったと思う。
後悔というよりも、今という時間軸とは別の時間軸に憧れを持つのと似ている気分だ。


言わないことと、思うこと、それは別の次元のことだ。
一緒くたに考えることはナンセンスだ。
思っているけど言わない。
言ったからといって本当に思っているかどうかはわからない。
思ってもいないことを言えるわけもない。

彼は、このメールの中で何を一体言いたかったのだろう。
私に何をわかって欲しかったのだろう。
この私に、何を想像して欲しかったのだろう。

二度と会いたくないと思う。
もう一度会えたら何を伝えようかと思う。

僕は君に何もしてあげられなかったと書いてあった。
あのとき私は、彼に何をして欲しかったんだっけと思い返そうとしてみる。
瞼を閉じて空想してみても、その人の顔はもう思い出せない。
けれど、瞳の色はなんとなく覚えている。
おかしなことに、ただ瞳ひとつの色だけ。


けれど、バスは通り過ぎる。
私を見落としてブレーキランプを光らせることもなく、走り去る。
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