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| 2004年08月23日(月) 明滅の中で |
| 今日はなんだかとても疲れたので、靴を脱いでバッグを足元に置いたら、その玄関先で服をすべて脱いでバスルームに入った。鏡の前に立ってメイクを落としていると、バスルームの灯りがちかちかと光って、電球が切れかかっていることに気づく。 リズムは不規則だけれど、それでもモールス信号のような誰かにだけわかる規則性があるようで、光ったり消えたりそればかりを繰り返す。私は気にせずシャワーをひねり、膝を抱えて雫に打たれる。黒い腕に跳ねる水がたまに光る灯りに輝く。 数秒、灯りが消えたままの空間は水ばかりが流れる音がする。いつもは向こうの部屋からのテレビの音やかけっぱなしのCDの音が微かにするのに、その瞬間だけはどこもかしこも真っ暗で、私はこの小さく狭いワンルームの部屋で灯りもつけずシャワーを浴びていることになる。 誰も知らない誰もいないこの空間で、明かりもなく私はひとりシャワーに打たれる。 そんな時間は、目を背けていたいことばかり思い出され、まるで痛みの残る傷をさらに抉るように、私は自分自身に痛みを与えたくなる。自分が傷つかないようにと避けてきた痛みを、今ここで帳尻をあわせるように沸々と自分を責めたくなる。 私は誰かを傷つけた分、自分も傷つかなければならないのだと、信じて止まないことがある。ぎゅうっと何かが私の内側に矛先を向け、何度も何度もそこを突く。 翌日、部屋に帰ると恋人がいて、おかえりと声をかけられた。私はゆっくりとくつろいで、夜中になってバスルームに入った。最初は気づかなかったけれど、髪を濡らして目に入った雫を拭っているときに気づいた。きっとバスルームの電球は新しいものに取り替えられている。 この私の恋人は、私にとって一体なんなのだろう。 この人にとって、私は一体なんなのだろう。 ひとりで暗がりの中、放っておいて欲しいこともある。 じっとして何かを考えていたいこともある。 じっと、何かを。 不意に自分がちっぽけな存在に思えて、急に心細くなった。 けれど、こんな明るい灯りの下では何も考えられない。 私はいつも何かを考えているけれど、それはいつもとりとめもなく、答えもなく結論もない。 ぐるぐると、同じところをまわって、また元の場所に戻ることさえある。 手を伸ばしても掴めないことのほうが多い。 それなら、考えないことも必要なのだろうか。 私には、何も考えない、ということが必要なのかもしれない。 それならば、私は灯りをつけた恋人の存在を有難く思うだろう。 バスタオルをかぶって顔をかくしたまま、恋人の体に腕をまわして泣く。 |
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