| days |
| 2004年08月21日(土) イマ、現実に戻る |
| 競泳男子平泳ぎの200Mで北島康介が金メダル2つ目なるかという日、私はどうしてもその決勝を見たかった。恋人は今晩も仕事から帰ってきてからずっとテレビの前でオリンピック観戦だ。深夜1時まで、私はうとうとしながらもちゃんと起きていたはずなのに、はっと目を開くと時計は2時をさしていて、テレビでは北島が表彰台にあがろうとするところを映していた。 どうして起こしてくれなかったの、といがらっぽい声で恋人に言うと、一度起こしたけど寝かしてって言ってたよ、と言って笑った。そんなに見たかったんだね、ごめんごめんと言ってまた笑った。 週末、私はビーフシチューをはじめて作った。料理の本を見ながらかなり手間をかけて作ったし、料理なんて慣れないのでとても時間がかかってやっと出来上がった。美味しいねと言って恋人は食べてくれた。私は少し味が濃すぎてしまったかもしれないと思いながらも食べた。普段から、料理をしなかったほうが後片付けをすることにしている。私がシャワーを浴びている間に恋人が使ったお皿を洗った。シャワーを浴び終わって台所に立ってみると、鍋の中に少し残っていたと思っていたビーフシチューが捨てられていて、鍋はきれいに洗われていた。恋人はテレビを見ている。どうして捨てちゃったの、と私はちょっと怒っていた。だって少ししか残ってなかったし、捨てるのかなと思って、と恋人は答えた。三角コーナーに溜まったシチューを見てちょっと傷ついた。勿体無いとか、そういうことじゃなくて、私が作ったものを捨てられたのがイヤだった。怒ってるの?と恋人が聞いたけど私は答えもせず髪の毛を乾かした。ねぇごめんね、と恋人は私にじゃれついてきたので、どうせ美味しくなかったから捨てたんでしょ、と意地悪を言うと、そんなことないって困ったなぁ、と唇を歪めて私の目を見つめた。 短い髪の毛がよく似合っている。最近、その腕が陽にやけて更に逞しく見えてきた。ほっぺたにぽつんと、目を凝らさないと見えないほどのホクロがある。寝起きがいい。歯を磨くときはいつもベランダで腰に手を当てて磨く。髭はあんまり伸びない。鼻歌ドロボー。旅行が好き。平べったい爪の形。匂いに鈍感。外では冷静沈着、うちでは気の優しい心配性。タオルケットをかけないと落ち着いて眠れない。すぐちょっかいを出してくる。靴下の脱ぎ方がいつも芋虫。甘いものをよく食べる。顔を真っ赤にしながら歯の浮くような言葉を口にする。「“絶対”って予測できるものなんてないよ」というのが口癖。ビールが好き。 私の現実は、この彼によって成り立っている。恋愛がすべてだとか、じゃあ仕事がすべてなのかとか、そんなことではないはずだけれど、私の現実世界のほとんどを占める部分が、この彼によって成り立っている。そして、そんな彼のことを私はどうしようもないほど愛しく思っている。当たり前なのだけれど、それは純粋な異性への恋愛感情であり、私はそんな気持ちを今まで幾度も誰かに対して持っていた感情でもある。いまは、この目の前にいる彼であり、私はいまこの彼のことを失いたくない大切な人だと思っている。 私は最近、いろんなことに惑わされている。 たまに、彼のいない非現実的な世界に身を置くこともある。彼を置き去りにして、または彼を遠ざけて私はその非現実的な、たとえば空想や思い出の世界に身を沈めることが多くなってきた。 それでも、私はこの現実の世界に生き、この世界で暮らしている。 戻らなければ。 そろそろこの彼のいる現実の世界に戻らなければ、もう二度と引き返せなくなりそうで怖くなる。私は、何かと何かの間で身の置き場に迷っている。 現実の世界へ私は戻る。 何もかもを振り払って、彼の元へ私は帰る。 |
| Will / Menu / Past |