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| 2004年07月27日(火) 男の子女の子 |
| 今年の新卒は何人入社したのか知らないけど、私の身近にはふたりの新卒がいる。 ひとりは私と同じ部署で斜め前の席に座っている女の子。そしてもうひとりは、私がプロジェクトの仕事をするときにしょっちゅうお邪魔する部署にいる男の子。彼は私とは部署も違うしどんなクライアントを担当しているかもあまり知らないけど、よく顔をあわせたり彼の隣の空いたデスクでよく雑務をしているので、よく話す機会もある。けれど、残念ながら私と同じ部署だというのに女の子の新人とはあまり口も聞いたことがない。 男の子と女の子の違いについて考える。 私が営業という仕事を始めたときに先輩がこう言っていたのを覚えている。「男の子と比べれば女の子は“売れる”のが早い。入社して数ヶ月で新規の受注をとってこれる。でも、男は仕事に慣れるまでにまず時間が掛かるし受注をとってこれるまでにはもっと時間がかかる。でも、女の子は“売れなくなる”のも早い。男は“売れ続ける”時間が長い。女の子には慣れとか物覚えに瞬発力があって、男には持続力と安定性がある。」理由は?と聞いたら、「女はどうせ結婚したら仕事をやめるでしょ?クライアントだって女の子の営業担当なら、“買ってあげようかなぁ”なんて思うけど、どうせ仕事をやめるだろうという考えがあるから、“長く取引しよう”とは思わないんじゃないの?」と言った。私は、なんてバカバカしい理由だろうとそのときは思った。その理由はどうであれ、女の子の瞬発力と男の子の持続性には、多少頷ける部分もある。身をもって体験したことがあるし、身近でよく見かけるから。 私の身近にいる女の子のほうの新人は、とても真面目で努力家だ。そして周りの先輩や上司とうまくやっていこうと、あれこれ気を使っていることが窺える。残業時間に女の先輩達が「会社の近くに安いランチが食べられる店がある」と話していたら積極的に話の輪に入って溶け込もうとしている。庶務の仕事をする先輩を手伝って、コピー用紙を運ぶ手伝いをしているのをよく見かける。仕事の相談に乗ってくれる先輩の話に必死にメモを書きながら真剣な顔で頷いている。真面目でよく周りに目が行き届いていて、健気な姿が印象的だ。 男の子のほうは、一言で言うと「いつもボーっ」としているということだろうか。何分もパソコンに向って唸っていたかと思えば、頬杖をついてぼんやりと考え事をしている。デスクの上が汚いと上司に叱られ、比較的時間が空いてそうな先輩がいるのに、忙しそうな先輩に仕事の相談をしようとして叱られている。残業の時間は雑談ばかりが過ぎていつも帰りが最後になってしまう。ネクタイを汚してしまって庶務の先輩に洗ってもらっている。仕事で同じ間違いを何度か繰り返す。電話の相手の名前を何度も聞き間違える。手が掛かる子ほど可愛いと言うものだけど、本当に彼はその言葉そのもので、馬鹿っぽいんだけどそれでもどこか憎めない男だ。 入社したての女の子は、男性の先輩からも女性の先輩からもちやほやされて、よく気遣ってもらえる。入社したての男の子は、みんなにいじられいじめられて、それでも結局は「仕方ないなぁ」と言って手をさしのべてもらえる。うちの会社の特色なのかもしれないけど、新人達はそうやって先輩に育てられていく。 そんな彼らは比較的恵まれた場所で仕事をしているといっても過言ではない気がする。彼らは恵まれている。けれど、私はひとつ気になる点がある。危惧さえ感じるしどうにかしなければいけないんじゃないかと思う部分がある。 月末なんかは、オフィスは戦争のように慌しさを極める。新人達の仕事はそれほど量も多くないので、先輩たちの慌しさに置いていかれる。何も手伝えこともなく、だから仕方なく自分の仕事だけに没頭する。そんなとき、彼らの仕事の中で小さなトラブルが起きそうになる。それを誰かに相談したい。トラブルが起きそうな問題を、どう話をつけて収束させればいいのか。どんなふうにクライアントに話しをすればいいのか。彼らにはそれがまだわからない。誰かに相談したいけれど、いつも相談に乗ってくれる先輩たちには、月末の慌しさで誰も手が空いていなさそうだし、困っていることに気づいてくれない。だから彼らから声もかけ辛い。時間はどんどん過ぎるからクライアントへの回答は先延ばしに出来ない。 そんなとき、男の子は一生懸命手をあげて「誰か助けてください。誰か相談に乗ってください」と言える。周りが忙しかろうと誰も手が空いてなさそうでも、そんなことをいちいち気にしていられるほど気を回したって仕方ない。そう思って手をあげる。誰か相談に乗ってください。 けれど、女の子は忙しそうな先輩にどうしても声をかけられない。手をあげようとするけれど、その手がどうしてもあがらない。みんなに迷惑をかけちゃいけない。ひとりでやらなければいけない。だって、これは私が任された仕事なのだから。ひとりでやってみようと深呼吸をする。 別れ道がひとつここにあった。 会議のとき、新人の男の子はしつこいほど質問をしてよく先輩に叱られる。「そんなこと、新人研修で習ったでしょう?」と。わからない、と思ったらすぐに聞く。彼はそれが癖なのか思いついた疑問をすぐに口にしたがる。苦笑しながら先輩は丁寧にその質問に答える。でも、女の子は会議の進行を邪魔することもなく真剣に頷いてメモをとる。ただ必死に先輩達の話についていこうと頷いている。でも、私は知っている。そのメモに書かれてあることは彼女が会議の中で理解できなかった部分が書かれていて、だから彼女は会議が終わったあといろんな資料をひっくり返してはその答えを自分で探そうとしている。 彼女が、彼のようにその場で質問することが出来て誰かに意見を仰ごうとしていれば、きっとその資料に書かれている以外の先輩達の実体験の話しを聞くことが出来たのに。実体験は資料に書かれていることよりとてもリアルでとても解りやすいのに。 別れ道がもうひとつ。 深夜のオフィスで、誰もが空腹に耐えながら仕事をする。「コンビニに行ってきますけど、なにか買って来るものありませんか?」と女の子がみんなに声をかける。先輩たちは財布を取り出しながらパンやらおにぎりやら飲み物を彼女に買って来るようにお願いする。 男の子は、「コンビニ行って来まーす」と間延びした声を出してオフィスを出ようとする。数人の先輩に呼び止められて買い物を頼まれる。「調達料金、いただきます」なんてちゃっかりお釣りはもらっている。 男の子だからとか、女の子だからとか、はっきり分けられるわけではないのかもしれないけど、彼と彼女はこんなにも違いがある。スタートは同じだった彼らは小さな分岐点をくぐってその道はどんどん別のものになってしまう。それが個性というものかもしれないし、人それぞれのスタイルなのかもしれない。もちろん、その別れ道の決断の先には誤りというものはない。どれを通ってもそれが彼だし、それが彼女自身の道なのだから。誤りや正しいという判断は彼ら自身で下すしかない。 彼女は真面目すぎて、気を使いすぎることが私には気に掛かる。気分が疲れるのではないのだろうかと心配になる。責任感が強くてひとりでやってみようと頑張るのも、それはとても大切な要素なのだけれど、大切なときに誰かを頼りに出来なくなるのはそれもまた淋しい。その悩みに気づいてあげられない私たち先輩にも悪い部分はあるけれど、でも社会は学校じゃなく、だからこそ先輩たちは君たちに常に気を配っているわけじゃない。誰かに助けてもらえる、気づいてもらえると待っているだけでは事は動かない。わからないことをわからないと言えること自体が、実は強さだとよく言われることだし、叱られることは悪いことだけじゃないし恥ずかしいことではない。気を使ってアウトプット出来なくなるようであれば、それはとても危なっかしいと思える。彼女は周りとうまく協調しているようで、実はまだ仮面をかぶっているのかもしれない。疲れはどの程度溜まっているのだろう。 私が気に掛かることは彼女のことで、いく人かの先輩たちも気にしていることかもしれない。彼女が自分を打ち明けない限り、誰もそのことについて助言をしてくれないことを、彼女は気づいてくれるだろうか。社会は誰も教えてくれない。自分から乞わない限り、教えてくれない。乞えば何らかの答えはある。それが自分の予想外の答えや不服な答えや納得できないことであっても、きっと何かは返ってくる。彼女には早くそのことに気づいて欲しい。 男の子のほうは、大丈夫じゃないのかなぁ。だって、天真爛漫だもの。自由人だもの。ボーっとしていても、うるさいくらいアウトプットしてくるので、彼の状況は部署が違う私の耳にも届いてくる。だから、大丈夫じゃないのかなぁ。彼の社会への乞いは自分で少しは考えなさいよと思うほどうるさいもの。かなりうるさいもの。 |
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