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2004年07月19日(月)  いと愛しい
私の愛しい人。


大きな鏡の前に座って髪の毛を乾かしていた。鏡の中のベッドの上では、恋人が寝そべって雑誌を読んでいる。足の親指のつめが伸びてきたのが気になって、私は爪きりに手を伸ばしている最中だった。恋人が、雑誌を指差しながらこの記事を読んでみてと私に言う。私は、生返事をしながら慎重に爪きりを親指のつめに沿わせる。「早くここに来て」と恋人はベッドの上を叩く。ちょっと待ってと言いながら私は勢いよく爪きりを握った。早く早くと恋人は急かすけれど、私は床のどこかに落ちた親指の爪をさがす。

濡れた髪の毛に指を絡ませながらドライヤーを使って風をあてる。鏡の中の恋人が私のことをじっと見ている。彼がにっこりと微笑むので、私もにこりと笑い返した。彼がにやりと笑うので、私はなに?と彼に問う。前髪が伸びてきたので少し切ろうかと、私はハサミに手を伸ばしている最中だった。鏡の中の恋人が、私の名前を呼ぶ。私は、うんと答えながら慎重に髪の束から前髪を選んで掴んだ。恋人はシーツを掴んで頭からかぶり、大声で私の名を呼ぶ。私は息を詰めてハサミの刃を髪の毛に沿わせる。はらりはらりと落ちる髪の毛。シーツを少し持ち上げて、恋人はこちらの様子を窺っているけれど、私は床に散らばった髪の毛を一本一本指で掴む。


休日の電車の中で、私たちはうたた寝をする。
こっくりこっくりと船を漕ぐ恋人は、時おり私の肩に頬を預けようとする。私は少し体に力をいれながら誰にも体を預けずに眠ろうと努力する。がたんごとんと電車の音が変わり、いまは鉄橋の上を走り抜けているところなんだろうと思ったのを最後に、私の記憶は途切れた。ハタと気づいて目を開くと、隣に座っている恋人はその向こう側に座っている美人な女性の肩に体を預けて眠っていた。美人も俯いて眠っているようだ。恋人の左腕を静かに引っ張り、美人からその体を引き剥がす。止まりかかったメトロノームみたいに彼は私の体にぴたりと寄り添う。少し鼻をすすった。目の前に座っていた大学生くらいの男の子と目が合った。少し照れた。

休日の電車に乗っていると、ひどく眠くなる。
もうすぐ目的の駅に着くから起きてたほうがいいと恋人が言う。私は頷きながらも意識が遠くなる。恋人の腕がぐいと私の肩を抱いて私の頭はことりと彼の肩に落ちたのを最後に、私の記憶は途切れた。名前を呼ばれて重い瞼をひらいた。恋人が私のバッグを持ち上げ私に手を差し出す。その手をとって腰をあげる。まだ少し寝ぼけた頭を振りながら、私はふらふらと電車からおりた。彼を見げると彼の喉仏が別の生物のようにぐるりと回った気がした。すぐに目を逸らした。同じホームに降り立った大学生くらいの男の子と目が合った。また目を逸らした。


セックスを連想した。
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