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2004年06月22日(火)  結婚ごっこ2日目
結婚ごっこ2日目。
朝6時に起きる予定が、気がつくと7時前。
やばい、遅刻してしまう。今日の旦那様は代休のため、昨日はお酒を飲んで午前様で帰宅され、いまだ夢の中。旦那様が起きるのは昼前だろうか、と思いつつ、朝ご飯を作ってあげるべきか否か、いややばいよ、もう既に遅刻へ半分足を突っ込みかけてるっていうのに。そんな暇はないということで、朝ごはんの支度をすることもなく、妻出勤。
昼前に旦那様からメールが届き、「もしかして昨晩のこと、怒ってる?」と、朝ご飯の支度もなく、モーニングキスさえなく、眠っているあいだに出かけていった妻への御機嫌うかがいのもの。そんな旦那様を怒る妻がどこにいましょう。お酒の席も仕事のひとつ。大丈夫、怒ってないからぜんぜん。だって、私も金曜の夜は同僚と飲みに行く約束だし。ね、だから怒るわけないの、自分も怒られたくないから。

よほど暇なのか、旦那様は数時間おきにメールをよこしてくれる。「晩御飯は僕が作るね!」「何が食べたい?」「昼ごはんはなに食べたの?」「今日は何時ごろ帰ってくる?」まとめて聞いてくれよと思うほど、今日の妻は忙しいのです。昼ご飯も食べてなければ、帰宅時間も予測不可能。
「今日は、豚のしょうが焼きにするよ! 早く帰ってきてね」という優しい旦那様のメールですが、残念ながら妻のほうは、ぐだぐだとミーティングは続くし、客の電話は長いし、メールは引っ切り無しに送られてくるし、アシスタントのヘマのフォローをしながら、ファックスしながら、新人の頭を小突きながら、菓子を食べながら、今日はしょうが焼きかぁ、しょうが焼きってどうやって作るのかしら? とぼんやりと考える。新人君に「豚のしょうが焼きって作れる?」と聞いたら、「作れませんよ。僕、あまり自炊しませんから。あ、あいさんもしかして、作れないんですか。えー、最低」と、かなりむかつく。年下のクセに偉そうだ。
腹の虫が鳴る。早く帰りたい。しょうが焼き食べたい。
よし、今日はもう仕事なんてどうでもいいから、9時には帰るよ。このままじゃ、「家事は互いを助け合ってやろうね」といってくれる優しい旦那に家事を押し付けたまんまになるじゃないか。やばいよ、妻のプライドがなくなるじゃないか、家事もしないで仕事でいっぱいいっぱいになっている妻なんて、妻失格じゃないの。
というか、そもそも私は「家事と仕事の両立は無理」派なので、「家事は役割分担でお互い仕事も両立させる」派の彼とは考え方が異なる。ではどうして「結婚ごっこ」なんてしているかと言うと、彼が「僕だって家事くらい出来るよ! 両立してみせるよ!」と威張るので、じゃあやってみせてよ、と言った具合で始まったもの。なんだ、じゃ、私、頑張らなくていいじゃん。べつに頑張って両立させようとしなくていいんじゃない? 彼にやってもらっていいんじゃない? と思いやりのない妻である。
そして仕事はまだまだ終わることもなくやっとタイムカードを押せたのが午後10時過ぎ。なんだか、家で私の帰りを尻尾を振って旦那様が待ってるかと思うと、ちょっと涙が出てきそう。ああ、早く帰って旦那様の作ったご飯が食べたい。腹が減って倒れそうだ。昼飯抜きなわけです。

でも、やっぱり現実はそううまくはいかないもので、自宅の最寄の駅から10分ほどで帰れる道を、私は30分もかけて帰る羽目に。帰路の途中で電話がかかってきたのです。相手は、派遣社員の女性。わんわん泣きながら電話をしてくるのは彼女の常套手段なのです。「えっぐえっぐ、きょ、今日、職場の○○さんにぃー、えっぐえっぐ」と、彼女は私に職場であった辛い出来事の愚痴を言うために、わざわざ11時過ぎに電話をくれたのです。彼女の愚痴はいつも少し被害妄想で、何気ない一言にひどく敏感で言い返すことさえ出来ず、いつもいつも私にぶつけては泣くのです。ほとほと困った方です。もうちょっと、強くないと仕事していくのは無理じゃないかしら、と私はいつもそう思いながら彼女の愚痴に付き合ってあげます。聞いてあげると数日後にはケロッとしている彼女なので、それほど深刻なことでもないようですから。
だけど! 今日は無理だよ。付き合ってあげないよ。
だいたい、何時だと思っているのかしら。甘い顔して愚痴を聞いてあげてたのが、甘やかしになってしまったかな。これじゃいかんよ、ちゃんと派遣社員のマネジメントをしなくては。「うんうん、わかったわかった。辛かったデスネ。ソウデスネ。もう夜遅いから、また明日話しましょう」と言っても彼女は電話を切る気配なし、涙もとまる気配なし。「あのね、泣いてちゃなに言ってんだかわからないんですよ。(もうこの人、35歳になろうとしているのに!)もう少し冷静になって考えてみて? ね? もう今日は遅いからまた明日電話ください」と迂遠に電話を切りたいことを伝えているはずなのに、涙を流す彼女は興奮してよけいに泣くばかり。だんだんイライラしてくるね。マンションはもうすぐ目の前なのに。「ねぇねぇ、今日は夕飯食べました? なに食べました? ああ、そうですか。私、まだ家にも帰ってないんですよねぇ……。夕飯も食べてないんです」と、恩着せがましく彼女に早く電話を切りたい旨を伝えますが、「ああ、そうですか。大変ですね、営業さんも」だってよ! じゃあ早く切れよ! まだ帰れないのもまだ夕飯食べれないのもあなたのせいなんですけど! 気づけよ、オイ!


ということで、帰宅したのは午前0時。
テーブルの上にはサランラップがかけられている、豚のしょうが焼きが。
旦那様はソファの上でぐーすか眠っている。
人の愚痴を聞いて胸が一杯になってしまってうんざりするし、腹が減りすぎて何も食べる気がしなくなった。でも、これで箸をつけなかったら、きっと旦那様は悲しむんだろうな。あー、食べるべきかもしれないなぁ。太るなぁ。

はー、切ない。すれ違い夫婦。
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