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| 2004年05月28日(金) 夏の日の坂道 |
| 東京には緩い坂道が多い。 私たちは知らず知らずにその坂道を上らされている。 その道は長く緩やかな坂道だ。滑り止めの穴が規則正しくあいている。私はその穴に足を合わせてゆっくりと坂をのぼる。重く熱い空気が私のわき腹を撫でていくのを感じる。じりじりと太陽が肌を焼く。 足をあげるリズムに合わせて鼻歌を歌う。追い抜く自転車のお兄さんに聞かれたって坂から降りてくる買い物帰りのお母さんに聞かれたってかまやしない。声を絞り出してじんわりと流れる汗を感じながら歌をうたう。 坂の左側には高校のグラウンドが広がっていてそこからは高校生たちの歓声が聞こえる。野球をしたりテニスをしたりハードルを飛び越えたり。彼らの少し日に焼けた腕がやけに眩しい。たまにそれを見下ろしながら私はもうすぐ坂を上り終える。 この坂のてっぺんには彼のマンションがあって、その部屋に招きいれてもらえれば私は冷房の効いた部屋で涼むことが出来る。直射日光を浴びてきらきら輝くガラスの向こうにグラウンド中に散らばった高校生たちの姿が見渡せる。部屋からは学校のチャイムが聞こえ、校舎の向こうには巨大なマクドナルドの看板が見える。足元だけを照らす太陽の光がゆっくりと長く伸びて部屋の端まで明るく照らした。それは部屋の奥におかれたグランドピアノまで届いていた。 鈍く光るピアノは美しいと思った。 私たちは冷たいビールを飲みながらただそんな風景を眺めていた。 そんな夏の日の風景。 坂の上のマンションで過ごしたある日を思い出した。 |
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