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| 2004年03月26日(金) 上空1万フィートからの手紙 |
| AIRDO11便に乗って、私はいま日本列島を羽田空港から北上している。まずはじめの驚きは、私が乗っている飛行機が地上を飛んでおり小さな窓から見下ろせるものは、くねくね曲がりくねった高速道路だったり河だったり、様々な濃さを持った山岳だったり、港だったり、それが私にとっては新鮮だった。いつも飛行機を利用するときは、東京から実家のある四国まで帰省するとき。四国へ向かう航路はたいていが太平洋の上空を飛ぶ場合が多く、いつだって窓の外は白い雲と青い海と青い空しかない風景だったのに、北上するときはその列島の形をそのままなぞるように飛ぶので、飛行機の外から眺める風景はとても私を飽きさせずに眠ることも忘れさせてしまう。少し厚い雲の中を通り抜けるとき機体は揺れ、振動が伝わってくるけれど、それを抜け出るとそこは一面に朝陽の世界だった。着陸したあとの機内アナウンスが到着地点の気温を伝え、私の隣に座っていた彼は膝にかけていた厚めのコートに腕を通した。 私は昨晩、小さな旅行へ行くための小さな準備をした。薄手のトレーナーとジーンズ、Tシャツとカーディガンと化粧水。コートは厚手のものを取り出しているしキャップは戸棚の奥から引っ張り出している。手袋を用意したほうがいいのか迷ったけれど、さすがにもうすぐ4月になろうとしているのだし、それはただの荷物になってしまうのではないかと思い仕舞い直した。準備は整っているか何度も確認しながら、とても興奮していてなかなか寝付けなかった。明日の朝は5時おきだというのに、私がベッドに入ったのは午前3時だった。楽しみに待ちわびる気持ちを久しぶりに思い出し、明日への期待を込めて私はじっと目を瞑って眠りに誘われるのを待っていた。 小さめの空港を出ると、彼は電車に乗って街へ向かうことを提案したけれど、私はなんと言っても観光するのであれば断然バスがいいと主張した。ただ電車の窓から山やトンネルを抜けるよりも、バスからの眺めは街をくぐり抜けて様々な場所を見ることが出来る気がしたから。彼は、腕時計を何度か確かめて時間にまだ余裕があるとわかれば、小さなバッグを持ち上げてバス停へと向かってくれた。空港の自動ドアをくぐった途端、私と彼は息を呑んだ。雪がまだ残っている。路肩によけられた雪の残りがまだきらきら光っていて空気は冷たかった。私は急いでコートのボタンをとめ、キャップを目深にかぶった。バス停を探しながらも、彼に初めての北の地を踏みしめているんだと、興奮しながら話し、見つけたバス停では「このバスは北海道に行きますか?」なんて並んでいた人に聞いてしまったけれど、もうすでにここは北海道で私たちが向かう街は札幌である。 バスを選んだのは正解だったかもしれない。車窓からの眺めは本当に新鮮だった。広くて真っ直ぐな道路と遠くに見える白い粉を吹いたような山々や、クリスマスツリーの樅ノ木のような林や一面に敷き詰められている雪、すべてが私にはとてつもなく嬉しかった。遠くへ来たんだという実感がじわじわと沸いてきた。 風景を見て不思議だったのは、びっしりと並ぶ木々の根本には必ずといっていいほど、雪が積もっていない。根本だけぽっかりと避けられているように雪が降り注いでいないのは、どうしてだろうと思う。雪が降っている大地に木を植えたのではないかと思うほど、不自然だけれどなにか自然の法則があってのことなのだろうかと、ただそれだけでも私は何もかにもに意味や理由を見つけたくなってしまう。その思考は休みなく続けられて昨晩は2時間しか眠っていないというのに、少しも眠くはならないほど、小さな冒険にこれから臨むかのような気分で胸が浮かれた。 ここは、どうしてこんなに広いんだろうと、ずっと向こうにそびえる山でさえその姿がすべて見渡せるほど、何の障害もない大地だと思った。だからこそ多分きっと、いいことが待ち受けているんだと私は寝息を立てる彼の横でずっとそう思っていた。 |
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