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| 2004年01月18日(日) 彼の背中 |
| 彼の後ろ姿が見えた。 彼の座っていた場所は、私がさっきまで座っていた場所だった。 どこかのカフェの中で私は彼の後ろ姿を見つけた。すぐにわかった。一目見てすぐわかるようになるまで、どれだけの回数を重ねて、彼の背中を見たことだろう。 私は雷に打たれたようにその場から動けなくなった。彼に見つかると殺されると思った。別れた恋人に殺される理由は、一体なんだったか忘れたけれど、そんな理由はどうでもよくて、今は彼に見つからないようにこの場から立ち去るのみだ。別れた恋人の背中は、とてもうきうきしている。新しく心を寄せる女の子に出会ったのだろうか。私のことなど微塵も思い出さないかのように、その背中は恋の喜びや戸惑いを一手に楽しんでいるかのように見える。 足を忍ばせて出口に向かう。どうか彼が振り向きませんように。彼の目の前にあるガラスに私の姿が映りこみませんように。ヒールをゆっくりと床に着け音が鳴らないように祈った。視線は彼の背中に向けたままだ。ああ、振り向きませんように、でも振り向いてくれますように。彼に会いたい。背中ではなく彼の目を見たい。彼に会いたい。彼に見つかると殺されると思っている反面、彼に会いたいと思う自分がいる。けれど、足は恐れをなしたかのようにゆっくりとしかし確実に階段を降りていく。 振り向きませんように。 振り向きますように。 見つかりませんように。 見つめてくれますように。 私は、足を踏み外して長くて暗い階段を転げ落ちた。 目が覚めると、ベッドから半身が落ちかけていた。 そんな夢にうなされた話し。 |
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