| days |
| 2004年01月04日(日) いなくなってしまった人 |
| これから数日間は、あなたは私のことを考えるのでしょうね。もちろん、私も同じです。忘れよう、忘れなければと思えば思うほど、あなたのことばかり思ってしまっては、腕に爪をたてていたりします。 あなたと会った頃は、あなたは本当に鈍感で、だからこそ私を知りたいと思うあなたの思いが、私にとっては本当にとても嬉しくて。ひとりぼっちのあなたに私が寄り添いたいと願ったのは、とても自然なことだったとも思います。はじめは、本当に辛くて本当に悲しい思いをさせてしまったね。辛かったでしょう。寄り添っていたとはいえ、何も出来なかったあのころの私を、今でもとても歯痒く思います。やっとふたりだけになれたとき、あなたは段々と私に慣れてきた。鈍感だったあなたは、どこにもいなく私の目の前に現れたあなたは、どこにも行かずずっと側にいてくれるような錯覚さえもたらせて。そんなあなたと居て、私はきっと幸せだったんだと思います。終わってしまったことを思い返して、幸せだったなあなんて思うのも癪なんだけど。本当に毎日が楽しかったね。夏が終わって秋になって冬が来て、楽しかったの一言に尽きるのではないでしょうか。私は、本当に好きすぎてしまいました。夜中に、目が覚めて時計を見ればまだ4時くらい。あなたが夜中まで仕事に打ち込む姿を思い浮かべたことが何度もありました。あなたの家に行きたいと思って、電車に乗り込んだけれど少し怖くなって途中の駅でおりてベンチに何時間も座っていたこともあります。さっき切った電話なのに、もういちど受話器をとって声を聞きたくなってしまう。 好きなのに、なぜかイライラしていました。 それは愛ではなく、ひとりよがりの恋になってしまったんだと思う。 だからあなたが、私に何もしてあげられないと思うことは、至極当然です。私はあなたの支えになれていたと思えません。度が過ぎて自分勝手になってしまった。あなたが私を突き放そうとするのも、私があなたと同じ立場ならそうしていたと思います。私の思い描いていたあなたは、本当のあなたではなかったのかもしれませんね。私は自分を見失っていたと思います。 辛い仕事をしているね。身を削ってまでもやりたいことをしているね。あなたはすべてを周りのせいにして人にあたり散らしていると言ったけれど、それは私も同じことをしていたんだよ。私の仕事も身を削るようなものです。夜にあなたから電話をするたび、どれだけ私はあなたに心のもやもやををぶつけていたと思いますか。けれど、あなたは優しすぎたのでそれを自分のせいだと思っていたでしょう。誰にも愚痴を吐かずイライラも見せずに生きていくことなんか、ましてや自分の気持ちや考えを表現する仕事をしているのであれば、そんな生き方なんて不可能に近いと思います。あなたのしていることは、ごく自然なことだと思います。けれど、あなたはとてもいい仕事をすると思うよ。私があまりあなたの仕事に口をはさむことはできないでしょうけれど、私の勘はそう言っています。私だって、音楽をしていた身なので、表現者の辛さや成功してきた人を目の当たりにしたこともあるので。だから、たとえ辛いと思ったとしても、それ以上に喜びが訪れることを忘れないで下さい。それを忘れなければ、きっといい結果が生まれるから。 私、あなたを失った今、自分自身を慰めるためにこう思うようにしました。 私もそうなんだけど、あなたの幸せは、きっと他の人より少し、遠くにある気がします。そして、自分が幸せの中にあることにとても鈍感で、自分の幸せの訪れにとても敏感だった。だからこそ、あなたにとっての幸せって少し遠くにある気がするのです。けれど、それを不幸だと思ってはならない。あなたの中にある大きな空洞は私の中にもあったけれど、私たちに足らなかったのは、その幸せの先に、お互いが何を求め、何を与えればいいのかわからなくなったのです。あの時分、幸せだと思っていた。けれどその先には一体何があるの?このまま幸せが続くの?私はあなたに何かを求めていて、あなたもそれに懸命に応えようとしていた。『愛の言葉を囁いたり、食事に出かけたり、プレゼントを贈りあうことは誰だって出来る。けれど、それ以上、進むことが出来なかった』そう、それ以上って一体なんなのかしら?いま、幸せだと思う先には一体何が待ち受けているのでしょう。きっと何も待ち受けていない。私たちがすべきことはそれ以上何もなかったでしょう。私たちは、いま幸せの真っ只中にいることに少し鈍感で敏感すぎた。その先の見えない何かに怯えていたのかもしれません。 だから、あなたが、私が、お腹一杯に幸せになることは、人より少し遠くにあるのかもしれません。 もうこれ以上、何も出来ることはないのに、なのに私たちは何かしなければと、狼狽した。そうすることで、また自らの手で幸せを遠くに押しやっていったのです。決してあなたの仕事のせいで私たちは別れたのではないでしょう。もっと別のところに私たちのすべての理由と言い訳と意味と価値があったのでしょう。 これは綺麗事じゃない。自分に酔っているわけでもなければ、顕示欲や憂いや慰めでもなく、ただの事実です。 あなたは大丈夫ですか。 私は、たぶん大丈夫です。 朝起きて、あなたのいない一日が始まるのかと思うと、絶望の中にたたされてしまいます。仕事をしているといくらかは気分がまぎれるので、昼間は仕事に没頭することになると思います。夜になって部屋に戻ってきて、ああ諦めなければ忘れなければと思いながら、決意を固めるのだけれど、朝になるとあなたがいないことにまた涙が出てきます。こうやってこれからの私の毎日は繰り返されていくことと思います。そうしてだんだんと、夜の私と朝の私の落差が縮まってきて、すっかり泣かなくなったとき、はじめてあなたののことから一歩を踏み出すことが出来るんだと思います。 そして、あなたはとても魅力のある人で、そしてとても淋しがり屋だからきっとまた恋愛をしていくでしょう。あなたは、多分、相手が私でなければきっと幸せを引き寄せることが出来るでしょう。あなたが、僕はキミに相応しい人間ではないと言ったように。 私たちの恋火は短い期間で燃え上がり火花を散らせてじゅんと音を立てて消えていった。私はけれど、その短い期間の中でも全身全霊を傾けてあなたを好きだった気がします。私は、きっとそれを幸せだと思わなければいけないのでしょうね。 もう二度と会えない。 私は、恋や愛が永遠でないように、永遠の別れもないのだと言ったけれど、もう会うことは永遠にないのかもしれないね。 |
| Will / Menu / Past |