中林淳眞先生が「これはいい音がするよ。」と何やら古臭いギターを渡してくれた。 私の「ホセ・ラミレス」に比べると音質が全然ちがう。音量的にはそんなに大きくはないが、とても落ち着きがあり、甘い音色だ。そして響いているのがよくわかる。おそらくステージでは遠達性があるに違いない。 そして私のギターを弾いてみると、ガンガン鳴っているがちょっと品がないかなと思ってしまうくらい、この古めかしいギターは奥深い音色を持っている。
1920年代の製作ということだが、作者の名前を聞いてもよくわからないし、ラベルもボロボロになっている。しかし銘器だそうである。どうやら先生が若かりし頃、スペインで手に入れられたそうだ。「古けりゃいいってもんじゃないけど、作りがしっかりしていればほんとうにいい音がするよ。」 おそらく再塗装したのだろう、刷毛でべたべた塗ったような汚い塗装跡がある。それに普通は鏡のようにピカッと光るはずの表面板もべこべこと傷だらけである。こんなのを楽器店に展示していてもだれも見向きもしない代物のように見える。
「M君、買わないかね。云百万円だ。店で買うともっと高く取られるよ。」「はあ・・・」「お金を貯めて、買ったほうがいいよ。」
中林先生の銘器を弾かせてもらったことがあるが、それとも違っていい音がするのだがなあ・・・。
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