いつ頃だったか、ストリング・ベースの修理をしようと、静岡のあるヴァイオリン製作者からいろいろとアドバイスをもらって、修理に必要な「にかわ」の購入やら、変形を矯正する「ジャッキ」の製作やらをしてきた。
それ以来ぷっつりと中断していたのだが、少しずつでも進めなければと思い修理方法を検討してみた。静岡のSさんのアドバイスでは、当初、表板をはずしての大掛かりな修理方法であったが、その後のメールで素人にはむずかしいということで、f字穴からのジャッキを使用しての修理方法に変更したほうがよいとのお話であった。 そこで自作のジャッキを突っ込んで、外れている「バス・バー」の下側を持ち上げてみた。しかしどうもびくともしないのだ。表板をふかしていないので当然かもしれないが、少々ふかしたくらいでは矯正できないのではないかとの不安もよぎる。それにニスを塗った面に水分を与えても中まで染み込まないしなあ、と考えあぐねた。
結果、くそ、やってしまえと表板をパカッとはずしてしまう暴挙に出ようかと思っているのだ。ベースの大御所、Iさんからも表板をはずのはやめたほうがよいと言われていた。素人がやると演奏中にばらばらになってしまうというのだ。あの強大なベースの弦の張りでは当然かもしれない。
表板のはずし方がわからない。静岡のSさんのアドバイスでは、塗装にカッターナイフで切り込みを入れ、接着剤である「にかわ」を暖めてゆるくしておいて、接着面にへらを突っ込みながらうがしていくというものだった。 暖めるものはヘヤー・ドライヤーでいいのだろうか。ほかの箇所の接着面がいっしょにはずれてしまわないだろうか、など不安だらけである。
表板をはずす段階までいっていないのだが、ニスを取り除いて次にどんな色のニスにしようかなど悠長なことを考えたりもする。どうせ大工事をするなら、塗装までやってしまえである。


じつはこのストリング・ベース、前から気にはなっていたのだが、サインがしてある。所有者が自分の名前でも書いているのかなと思っていたのだが、イニシャルをじっくり確認すると、「Tshio Mishima」とある。 え!ひょっとして「三島敏夫」? 当時、「三島敏夫とそのグループ」としてテレビに出演していたと思う。子供心にその当時の雰囲気を覚えている。歌の題名までは覚えていないが、ムード歌謡か何かだったと記憶している。どうも「三島敏夫」はハワイアンから出発しているようだ。時流に乗って歌謡曲に転向したのだろう。もうそこそこの年齢になられるだろうが、まだまだ現役で活躍されているご様子。
で、このサインを消すかどうかが問題なのだ。ニスを塗り直すとなると消さなければいけないが、前の所有者が誰かは知らないのだが、どうも気が引ける。そこだけ残すという手があるにはあるが。
いやいや、もっと大きな問題は、そこまで至ることができるかどうかだ。おそらく無理かな・・・。
|