ここに『妻についた三つの大ウソ』という文庫本がある。柳田邦男著である。

タイトルが妙に気になって買ったものだが、妻についたウソを全編にわたって弁解しているわけではない。40編ほどのプライベートなエッセイ集となっている。この中の一つを本のタイトルにしているわけであるが、なんとも興味をそそる付け方に目を細めてしまった。 まあ、私の場合、三つや四つではないのだから、タイトルのような格好いい見出しにはできないだろう。『妻についた数え切れないウソだらけ』とか・・・。
エッッセイの内容はこうである。 広島のある喫茶店で、取材のためK子と会った。プライベートな魂胆もあったようだ。その時K子から「お酒と煙草はやりますか。」と聞かれたが「いいえ」と答えてしまった。煙草はやらないが、酒は底なしの状態だ。 そしてまもなく二人は結婚することになるわけであるが、これが大ウソとわかるのである。そして二つ目は、バーでの付け。結局、結婚後そのバーは閉店してしまって未払いのままだ。最後は、奨学金の返済額がほとんど残っていたこと。どうも独身時代は、飲み代に消えてしまっていたので、結婚後に支払うことに。
まあ、これらはたわいもないと言ってしまえばそれで終わりのような気もするのだが。タイトルにするような内容でもないし、ほかのエッセイのほうが断然おもしろい。おそらく、私のようにタイトルに促されて買う読者目当ての『妻についた三つの大ウソ』なのだろう。
「あとがき」にこうある。 「プライベートなことを出版物にして、見ず知らずの読者に伝えるというのは、妙なことかもしれないが、私は《読者は友人だ》と考えているから、読者となると見ず知らずであっても、つい私語を交わしたくなってしまうのである。」
ちょっと共感を覚えたのである。私の場合、愛読者はわかっているから、見ず知らずとは言えないかもしれないが、《友人》に話をしているようなものかもしれない。恵さんなんか、ちょっとさぼるとすぐに催促の電話がくる。寝たい時なんか、くそっ!と思うこともある。が、これ、けっこう、後押しの推進力になるのだ。何でもそうだが、なかなかひとりでやり通すことはむずかしいものだ。
最後に、本の紹介にはこうある。「天文や気象に魅かれ、夢見心地で空ばかり眺めていた少年時代。シューマンの歌曲に激しく心動かされた高校時代。そして大学卒業後、古き良き時代のNHKに入局。デンスケ担いで飛び回る駆け出し記者の日々が始まった。そこで出会った妻。人生は、些細でありながら重要な日々の積み重ねからなる。」 ふーむ・・・。
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