2010年03月20日(土)
文章が熟れすぎました


 今日はお休みだったので、星組マイ楽をしてきて、グラフとユミコ氏本とグラフを買って、マッサージ行って、靴かって服買って(久しぶりにネットじゃない買い物だよ!)(笑)、お茶して延々ポメってました。あああああ満足。
 星組さんの感想も書きたいんですが(二回目でまったく違う読後感になったよ、芝居)、とりあえずポメラの中でここ一ヶ月近くくすぶっていた、SSとソルフェリーノ感想文を先に出します。


[SSS]

 ソルフェリーノのSSその1
 さゆみなです(ええ?そこ?)
 


[雪組メモ:ソルフェリーノ総括]

 ※いつもながらに勝手感想ですよ。

 というわけで、ソルフェリーノ。本当に相変わらず世間と逆行して「おもしろかった」という感想です。ネタとしても、作品としても「おもしろかった」。
 っていう話を初見の後に現地で会った友達にしていたら、「……まあ、むっさんが楽しかったならそれでいいよ」とやんわり引かれていました(笑)。

 まあ、相変わらずの植田節炸裂なんですが、それでもキャラは異様に立っていたし(立てていたし)、「ミズナツキでアンリー・デュナン」の書き方が「そうきたか!」とすごくおもしろかったのです。まあ、そこには雪組の熱演で相当底上げされているとは思うのですが、いくつか目をつぶればそんなに破綻した物語でもないかな、という印象です。


[雪組メモ:アンリエットの話]

 この物語の主人公は、アンリエットだと思っています。というかアンリエットに感情移入するのが一番わかりやすいというか。
両親をオーストリア兵に殺された憎しみにしばられていたアンリエットが変わったのは、もちろんデュナンがきっかけであると同時に、ハーベルマン先生もあるんじゃないかな、と。あの「あちゃ☆よけいなことを言ってまった」の場面で、アンリエットは「苦しいのは自分だけじゃない」というより「ハーベルマン先生が酒に逃げたように、私も憎しみへ逃げている」って思ったんじゃないかな。もうちょっとひねると「え?あたしこの酔っぱらい先生と同レベル?」的な(笑)。
 そしてもう一つのきっかけのデュナン。デュナンというよりデュナンのバケツに入っていた赤い血塗れの包帯なんじゃないかな、と。あの場面、そんな事一言も言っていないのにアンリエットの「オーストリア兵の血も赤かった、私たちと同じように(=同じ人間なのだ)」っていう台詞が聞こえるのだよ。
 あのみなこの包帯を前にした芝居がほんと秀逸で、あそこがアンリエットにとっての分岐点なんだとよくわかる。そしてアヴェマリア→デュナンへの同調(傾倒)、ソルフェリーノの横断……この流れは実際よく書かれていると思うし、みなこがちゃんと脚本の理解してやっているよなぁと思うのです。ちらりとみたナウオンでシンディがみなこをベタほめしていたのがよくわかる。やっぱり役者だなぁ。


 それに比べて、男子(男子言うな)二人は弱いなとは思います。エクトール先生は完全に書き込み不足と、起承転結が起→結になっているかな、と。デュナンさんは書かれている次元が違っていてわかりにくい……ってゆってる私がわかりにくいですね。


[雪組メモ:エクトール先生の話]

 エクトール先生の何がすばらしいかというと、まず眼鏡が萌え眼鏡ではないところです!(ええそれが一番最初?)。
 この場合、眼鏡の形状を指すのではなく、眼鏡の活用方法を指すと思ってください。だって眼鏡を付け外しする→目的を持って眼鏡をかける→萌え目的ではない→そこに萌える!という……ちなみにその目的は傷病兵の血が飛び散るのを防ぐためです。なんて実用的!いやもちろん狙われた萌えにも萌えてしまうのですが(exヘンリーの貸切眼鏡)、やはり萌えを狙わないところに萌えを見いだすのが、ナパームスクエアの信条です。

 (しまったこのままでは眼鏡の話で終わってしまう)

 正直に言ってしまうと、あの「花のように雪のように」につなげる為に、エクトール先生の人格とか、お芝居上での人物の感情の流れがねじ曲げられてしまった、よう、な……。その「花のように雪のように」にシンディの(曲がっているとはいえ)愛がちりばめられているだけに(それは間違いないと思う)、真っ向からそれを否定したくはないのですが、それにしたっておじいちゃーん!繋がってないよー!
 アンリエットとのエピソードをあと一つ、ちょっと入れてやればいいんだと思うんですよね……別れの場面でいきなりアンリエットが「いかせてください」と抱きついたときには「え?いつからそんな関係に?」とびっくりしたのですよ。まあ、そこは釜をまわせばいいんだろうけどさー(ぶつぶつ)。
 おそらくは(はい、ここからスーパー妄想タイム)この作品の中で誰よりも「絶望」しているのはエクトール先生かと思います。手を尽くしても手を尽くしても、指の間からこぼれる命。敵味方もなく命を救うのは、人間愛からというより、医師としての使命なんじゃないかな、と。もっと言うと、彼にとってはオーストリー兵とかイタリア兵とかどうでもよくて、っていうかその長い長い明けない夜に、どうでもよくなってしまったのじゃないかな、と。
 脚本の穴つつきになってしまいますが、オーストリー兵の深夜の治療にエクトール先生がいなかったのがその大きな理由で。目の前の傷病兵は同じ命としてわけへだてなく救うけれど、救われた命とその政治背景(捕虜がひどい目にあっている)には頓着してないというか、できないというか、できなくなってしまったというか。
 そんなエクトール先生に一筋のひかりをもたらしたのがアンリエットだった……っていう話が書きたいです(下書きか)。
 要するに、医師としてのエクトール先生は「任務」から「人間愛」に変わっていったんじゃないかな、と。なんだかラストのユミコ氏が神々しくて、おっきすぎて、私は神がいる、と思ったんですね。すべての愛を受け入れて、すべての事実を受け止めて、「明日を抱きしめるために」。実は「人間愛」はデュナンじゃなくて、エクトール先生なんだと思っています。(スーパー妄想タイム終了)。


[雪組メモ:デュナンさんの話]

 そこから繋がってデュナンさんの話。実はデュナンさんは「人間愛」というより「正義感」あるいは「倫理感」の方が勝っていると思うんですよね。
 それは慈愛の心ではなく「間違っているものは間違ってる、おかしいものはおかしい!」という理論。そのバカみたいにまっすぐで単純な理論しかあのひと持ってないし、それは作中ずっと貫いているよな、と。
 そういうまっすぐさと単純に、私は「なんて安っぽいヒューマニズム」と思ったのです。けれどもその安っぽさを隠すこともごまかすこともせず、額面通りに提示しているところがすごい、と。政治も駆け引きもない、高尚な愛でもなく、崇高な理論でもなく、ただ「こんなの間違っている!」だけでつきすすむアンリー・デュナン。ただ、今できることをするという単純な行動の人。
 そしてあの戦場で「できることをする」っていうのが、ひどくまっとうな心理だなぁと。喧嘩を止めるアンリー・デュナン「歌ってくれ!」ちょ、いきなり!wwwともなってしまったのですが、あれがあの場でみんなでできること。国を越えて言葉をこえて、誰にでもある故郷への郷愁、あの混乱で全員の共通項を提示した訳です。それしかできないから、それなら皆ができる、これで何が解決するわけでもないとは、たぶんデュナンさんもわかっていると思うんです。でも彼は行動の人だから、だから「歌ってくれ、頼む!」そこに高度な思想も何もない、ただ、行動の人。
 おもしろいのはそのデュナンさんの行動の人、というステータスが作品中まったく変わらないと言うことです。よく吉野さんが、物語の中で誰が成長したか、という話をしているのですが、その文脈で言うと、デュナンさんは成長も変化もしてないと思っています。普通主人公は物語の終わりには成長したり変わったりするものだと思いますが、デュナンさんはおもしろいぐらいに一環している(だから成長と変化をするアンリエットが主人公に見える)。それがなんだかたまらなかったです。

 まあ、今回のお話は、確かに「アンリー・デュナンの生涯」ではないけれど、ただただ行動していたあの人になんだかひどく感動してしまったのです。最初、この役をナツキさんがやると知った時、ナツキさんの中のハートフルというか、ヒューマニズムというか、そういう人間味が溢れてすごくマッチするんじゃないかな、と思ったんですが(まあこれは史実のデュナンさんをあまり知らなかったせいもあるんですが)、実際はあの人のストイックさとかかたくなさとか、まじめなまでの厳しさとか、そういうものが生きていたな、と(ごめんドリーム過多で)。歌劇の作品背景解説を読む限り、アンリー・デュナンさんは「普通のひと」だったというし。
 彼はヒーローでも神でもない。誰かを教え諭したわけでも、導いたわけでもない、ただ行動した。そのリアルに人は動かされてそれが赤十字の思想に繋がったんだなぁと。思想があって行動したというより、行動したことが思想となる、みたいな?(わかりがたい)。


 ムラで一度だけ1階の、わりと前方席で観たとき、赤十字の旗を持って上手花道にはけていくデュナンさんがよく見えたんです。終幕で暗くなり始めた場内に、花道のカーテン奥からの明かりが、デュナンさんの行く先を照らす。なんだかそれがひどく印象に残っています。




 ひさしぶりなんで文章のおかしいところはお見逃しいただきたく……っ(いや、いつもおかしいだろ?)


 最近すっかりついったーびたりで、もうサイトいらないんじゃね?とも思っていたのですが(笑)、やっぱりこうやって書くことがたのしい。感じた事を文章にする行為がやっぱり好きだなぁと思う次第です。




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