⊂フレイバ⊃
2004年01月23日(金)

”あの時”という曖昧な言葉で、いつも過去を独占してきた。
誰にも渡したくない。
正体を見せている振りをして、本当は布をたくさん被っていく様だったよ。
無力な自分を知っていたから傷や痛みで武装していたんだ。
得体の知れない寂しさや悲しさが込み上げても、未だに宥め切れない。
いつもひとりだと、相変わらず思う日々。
友達といても誰かといてもとても大切にされてても、ひとりなものはひとり。
誰かがいる、などと今更に自惚れたところで、生きれなくなるだけだ。
寧ろそんなことを出来なくなったのはもうずっとずっと前。
自分以外は他人、そう思うようになる前の話し。
神様の存在も未来の存在も運命の存在も、見えないのに信じてしまう危うさもあたしにはない。
ちゃんと今は昔より現実に近付いている。

さびしくてさびしくて、小さな頃を思い出す。
旅行で来た東京の、足下に広がる未知な世界。
明るくてあたしは、何度も窓に張り付いては見ていたよ。
いくつもの夜を感じた。
ひとりひとりの生活を、あたしがこうして今夜を見ていて、
こうして見ているあたしの夜の他に、無数の明かりの中でみんなが夜を生活していた。
それなのに今夜は3人の存在しか気付かなかった。
錆びれてしまった新鮮な世界、あたしはそういう物悲しさにとても死にたくなる。
あたしは子供じゃない。それでも子供だ。大人じゃないのなら子供なんだ。
それでも違う、自分の存在が見えない。

あと6日であたしは東京からいなくなる。
家に帰るんだ。
それからあたしはうたうことをやめないよ。
今度は自分の力で、東京に出てくるんだ。
自分の稼いだお金と、培ったうたと、それを諦めなかった自分の心が、
目標にそぐったのなら、あたしはまた東京へ住みに来るよ。
いままで東京に住めてよかった。
見えるものになら希望をいだける。
あたしにはもっとたくさんのやることがある。
それをこなしてちゃんとする。
力を入れずにあたしは自分のあるだけの思いで頑張るよ。
さようなら。
同じような人間にはなりたくなんてない。



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由弥 [御手紙]