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「かおる×シンジ対談」新谷かおると和田慎二の対談 2
2005年04月16日(土)

前回からの続き

長い座談会の中には、エヴァの話題を離れて、漫画家新谷かおるの製作スタイルを垣間見る発言もでてくる。なにしろこの座談会は6時間にも及ぶ長いものなのだ。自宅でおこなっているため、途中から佐伯かよの先生も加わり、話はさまざまな方向に飛び、つきることはない。

それにしても新谷夫妻は仲がいい夫婦ですな。松本零士・牧美也子、富樫義博・武内直子、弘兼憲史・柴門ふみなど、夫婦で漫画家というのは多いけど、ここの夫婦は、佐伯センセが新谷かおる公式サイトの記事を作成するわ、掲示板のレスはつけるわ、風間真のせっけんを売るわ、(ホントに売ってんだよ)思いっきり家内制工業ではないか。私もそのせっけん欲しいぞ。しかも通販担当の新谷摩乃ちゃんって、これ、もしかして娘さんですか?まさに製作受注発注を一家できりもりする町工場のようである。

そんな家族経営の新谷プロであるが、新谷マンガのキャラ造詣について、本人の口からこんな発言があったので、ここに丸写しにしておく。各人参考にされたし。

引用 『新世紀エヴァンゲリオン JUNE読本 残酷な天使のように』 発行:マガジン・マガジン
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―――新谷先生、かおるというのは本名ですか?

新谷 そうです、本名なんですよ。

―――それは親は?今は女性でも男性でもどっちでもありみたいな。

新谷 生まれるときに、男か女かわかんないから。

―――準備しといた。

新谷 準備しといたんだけど、どっちでもつけられるよにって。ただ単に非常にぞんざいに。

―――でもそれで女性っぽくなったっていうことのはなかったですか(笑)

新谷 だから、しばらく少女マンガ描いていたじゃない(一同笑)

―――本名で描ける少女漫画。でも和田先生も、いまだに少女マンガ誌でやり続けているという、貴重な。ついに、柴田昌弘さんも行ってしまいましたから。

和田 摩夜峰央だって行っちゃったもん。俺一人になっちゃった。不思議なもんだね。

―――そういう意味では女性性というものもないと。

新谷 どうなんだろうな。作家というのは、女性と男性の両面をみんな持っていますからね。

和田 男だけ出る、女だけ出る、マンガ描いているわけじゃないので。

新谷 もちろん男性の完成で描いていかなきゃならない時もあるし、女性キャラを描くときにはやっぱりできるだけその女性キャラの身になっセリフも吐かさなきゃなんないし。だけど、例えば、不得手な女性っていうのは、キャラに出て来ないですよね。自分の性格からあまりにもかけはなれている女性像で、仮にそういった女性がいるっていうことは認識していても、「わからんね、この手の女は」っていうような女は。

―――ある場面で、どういうセリフを言うかわからないとか。

新谷 わかんないですね。そういうのはね。

和田 出てきても、要するに深い性格にはなってにないよね。

新谷 いわゆる上っ面をなでた程度の。

(中略)

新谷 だから確実にセリフがあって、その物語を左右するようなセリフを吐いてくれるようなキャラクターには、そういった自分が嫌いなタイプの男性、またあるいは自分が非常に嫌いなタイプの女性というのは、登場してこない。何本も何本もいっぱいお話描くんだけれども、ずーとそれこそ最初っから俺のマンガ読んでいるファンの中には、すでにそれを見抜いているのがいて、「どんなふうな、どんな状況で、どんな家庭環境で育って、どんな過去をひきずってても、あなたの描く女性キャラっていうのはこうですね」って行って来るのがいるわけ。

―――そこはかわらない。

新谷 そう。

和田 うちにも言ってくるのいる。やっぱり長いことやっていると読まれちゃうよね。

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「わからんね、この手の女は」というセリフ回しが、新谷っぽい。

ああ、あの漫画書いている人のしゃべりだなぁとへんなところで納得してしまった。

新谷マンガ女性キャラは、本当にこれ、男の人が書いているの?本当は女の人が書いたんじゃないの?と錯覚するような、非常に女らしいセリフを言う女性が多いですな。描いている人が男という感じがあまりしない。特に女性キャラのセリフは、男がこのセリフ吐かせたとは、ちょっと思えないようなものが多い。
女性キャラの感性が、女からみても女らしくて、好感度が持てるのんだよね。
島本和彦も言っていたけど、女性キャラのセリフは、抜群にうまいと思う。
私は女なので、いかにも男が考え出したような男にとって都合のいい女は、男の傲慢が透けてみえるみたいで、そのキャラ以前に、作者の傲慢さにアンチパシーを感じてしまって、反発してしまうんだけど、(谷口監督とか谷口監督とか谷口監督とか)新谷マンガの女性に対しては、そう思うことはないですな。
なのでエログロ話も、女キャラのセリフが、女っぽいおかげで、わりあいに読める。今やっている刀神妖緋伝も、エロくてエグい内容だけど、主役の女の子達の会話が、どこか幼児向け少女漫画を思わせる節があるので、結構に楽しく読んでいますよ。

新谷かおるはかおるいう名前のせいもあって、よく女性に間違えられたりするらしいけど、絵柄が少女漫画画風だからというより、会話に女っぽい感性を含んでいるんで、そっちのほうで、間違えたりする人も中にはいるんじゃないかなと思う。私は、絵はメカが精密でマニアックなこだわりというかコレクター魂が感じられて、あんまり女の人って感じることはなく、むしろセリフのほうに、女性らしさを感じる。そして、セリフは本当格好いいものが多いね。

島本和彦の「新谷かおるになる方法」の中に、松本師匠が大空で戦う男のロマンを描くのなら、新谷は大空で死んでいった男を地上で待つ女のロマンを描く、という解説があったのだけれど、私はこれにはいたく納得した。まったくその通りだと思った。私はこのくだりを読んだとき、それだよそれ、それだよ島本と、床をバンバンとたたいた。

大空で死んでいった男を地上で待つ女のロマン!

それだ!松本師匠の女性は、男よりも一段高いところにいて、至高の存在として座し、男の中の男とはいかなるものかと、男のロマンについて語るのだけど、新谷の女性は、女のロマンについて、男に語るんだよ。神崎を見ろ、あの神崎も、女のロマンの前に窮して、答えにつまるところあったじゃないか。これは男性作家にはなかなかできない芸当ではないかと思うぞ。

(脱線するが、自分がなんでスクライドにはまりきれないかよくわかった。ありてい言ってしまえば、私谷口監督の作る女ダメ・・・金持ち特権階級嫌っているっぽい印象を与えるところもダメ・・・民主政治を冒涜しているラストもダメ。だたしこれは嗜好であって評価にあらず。嗜好と評価はあくまで別。)

一方和田さんの話は、男の人が描いたって感じがします。男の人が書いた戦う少女。この人の話読むと、私はルイス・キャロルとアリスを思い出します。

続いて、本人による女性キャラの傾向自己分析も。
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新谷 それはしょうがない。だって、描いているのは、ひとりだし、変えようがないから。だからたいてい、俺の描く女っていうのは、自分の意思をどこかで見え核にしてしまう女だよね、こういうふうに生きたい、こういうふうに生きるっていう形を非常に明確に持っている女になってしまう、それが貧乏から出ようが、お嬢様であろうが、あるいは犯罪者であろうが。

―――なるほど。

新谷 たぶん、俺がそういう女性が好きだから、またあるいはそういう女性だと自分が感情移入しやすいから、たぶんそう描いているんだと思うし。

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新谷マンガはスターシステムなので、同じ人が別の漫画に出てきても、気にしてはいけないのである。

あれはみんな、劇団しんたにの団員なのさ。


次は男性について。つづく



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