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一条ゆかり『デザイナー』と新谷かおる
2005年01月17日(月)

これまた古い話題で失礼。BS漫画夜話(04年4月放送)の一条ゆかり特集で、一条ゆかりの『デザイナー』は新谷かおるがアシスタントでメカを書いていたんだよ、ということやっていたそうで、どんなんだろうと興味を持ったので私も読んでみました『デザイナー』。

この漫画を読むのははじめてで、少女漫画界の女王・一条ゆかり初期の代表作だと聞いていたので、それなりに期待をこめてページをめくったのですが、ふ、古い、絵が古くせぇ。開口一番まずでた感想がそれでした。いやあごっつい昔の純少女漫画絵柄ですね。今じゃ見かけない絵柄だよ。
昔の漫画なんで、それなりに時代かかった絵だろうと想定していたんだけど、ホントに古いですね、絵だけで、時代が透けてみえます。一条ゆかりは有閑倶楽部の初期ぐらいの絵のイメージが一番強いので、若かりし頃の画風にまずは驚きました。どのぐらいのころに書かれたものなんだろうと思って巻末をみたら、1974年、りぼん掲載でした。女王も昔はこんな絵を書いていたんですね。
でも、絵は抜群に巧いや。うん、巧い。こりゃ凄い若手が台等してきたって感じですな。将来有望な若手の登場に、ベテラン勢もさぞあせったことでありましょう。

そして、問題の新谷かおる・弓月光・聖悠紀らが書いたというメカ。これか、なるほど!メカやオーディオや背景が少女漫画離れしていて、キマッテいるよ。それまでの少女漫画にありがちな現実無視のファンシーな背景やメカニックと違って、緻密でリアルな画がゴージャスな一条絵のバックに登場していますよ。特に車はいろんな車種が登場してこだわって書いております。そしてオーディオ類も書き込みが細かい細かい。特に感動したのが、町並みと看板。看板の文字のレタリングが実物みたいで、で整っていて美しいこと美しいこと。
背景が白い顔漫画とか、トーン頼りのライトな漫画とか、ラブリーなお花ばかりが咲き乱れる脳内ポエム漫画とは、一線を画した画面構成ですね。

話のほうはというと、デザイナーを目指すチャームな女の子のどたばた青春ラブコメ・・・じゃなくて、もうドロドロの純・少女漫画。いかにも一条女王らしい。孤児、出生の秘密、交通事故、親子どんぶり、近親相姦、男色、自殺、妊娠、双子、とこれでもかというくらい少女漫画エッセンスがてんこ盛りに盛られてた密度の濃い話になっています。
長さ的はコミック本で2冊、文庫なら1冊なので、そんなに長いわけではありませんが、中身が濃くて読むのにえらい疲れました。大長編を読んだときなみに、ぐったりと披露しましたよ。

ちょっとストーリーを紹介すると、主人公の亜美は孤児で人気のトップモデル。しかし交通事故でモデルの道断念をよぎなくされる。そこに突然現れたのが正体不明の謎美少年実業家。彼が亜美にデザイナーに転向することを薦めるのだけれど、この少年はいつも傍らに妖しげなしもべを抱えていて、この二人の関係が妖しさ大爆発。デザイナーとなった亜美のライバルはファッション界をリードする人気デザイナー鳳麗香。がしかしこいつが、なんと亜美を捨てた実の母なのだ。しかも、心を寄せていた男性がなんとなんと、実の父その人だったからさあ大変。相手が血を分けた親子だけに、プライドを賭けた戦いも激しさがひとしお。やがて亜美は美少年実業家と愛し合うようになるのだけれど、なんという運命の悪戯か、結婚直前になって実は二人は双子だったという大どんでん返しが待っていた!ガーン!もう後は自殺をするやら、精神崩壊するやら、それは読んでのお楽しみ。

それにしても注目すべきはこの少年実業家。これが超がつく美形で、ありえないくらい王子様のようなフリフリの洋服を着て仕事をしていたり、ここは日本だよな?と確認したくなるぐらいの大豪邸にメイドつきで住んでいたり、かぐわしき薔薇を持って登場したり、なれた手つきでレミーマルタンのグラスを傾けたり、ありえないことのオンパレード。なかでも極めつけが、彼の傍らにいつもたたずむ部下との妖しい関係。私は不覚にも私は、新谷メカやゆかり女王のプライドを賭けた対決よりも、倒錯した主従愛にくぎづけになってしまった。ああ、たまらんこの関係。ゴメン、かおるたん。所詮俺はそんな人間さ。私の腐女子精神もまだまだ衰えちゃいないな・・・フッ・・・。あああッ何を書いているんだ俺は。

このように、『デザイナー』は一条ゆかりのゴージャスな絵、著名漫画家たちの手による背景を支えるこだわりのある緻密な絵、それに70年代が生み出した濃いメロウなストーリー、この3本の組み合わせが一体化し、ハーモニーを生みだし完成度の高い作品になっているのです。
新谷かおる・弓月光・聖悠紀・大矢ちきら脇をかためる豪華執筆陣が魅力の『デザイナー』興味を持った方はお読みなってみるとよろしでしょう。(最後によいしょ)





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