武ニュースDiary


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2020年07月05日(日) 「南方人物周刊2017-4-24」 金城武の隠れ身の術・5

みんな地球という星で一生懸命生きている

く聞かれるんだよ、君と金城武は本当に親しいのか、と」
ピーター・チャンは、目の前の金城武に言った。
「ぼくはこう答えるさ。イエスと答えて、彼がそうじゃないと言ったら、
メンツがないよね、って」
「イエスですよ、イエス。ただ、しょっちゅうは会わないだけで」と金城武は答えた。

こんな長い付き合いでも、金城武が自分との関係をどうとらえているのか
わからない、という困惑は、呉里璐も経験している。
以前は映画撮影のとき、今のようにスターが
大勢のスタッフに取り囲まれているということはなかった。

金城武はアシスタントを連れず、撮影の合間には、
腰を下ろして呉里璐とよくおしゃべりしたし、
ネットゲームのやり方を教えてくれたりもした。
2人は共に恥ずかしがり屋で内にこもるタイプであり、
時にはただ何もせずただ座って、ずっとしゃべらないままでも、
気まずくなることなく、心地よくいられた。

その後、何年かは顔を合わす機会がなく、
オンラインゲームの中で出会うと挨拶を交わすぐらいだった。
再び一緒に仕事をしたのは「喜歓你(恋するシェフの最強レシピ)」の
衣装決定の日である。
呉里璐はスタッフルームで準備をしながら、
そうだ、金城武と会うのだと思った。
嬉しくもあり、少し心配でもあった――
彼は自分のことを親しい人間と思ってくれているだろうか?

結果は――金城武は部屋に入ってくるや、
呉里璐をお姫様抱っこしたのである。
これは全く金城武らしからぬ気持の表現方法だった。
「大勢人がいたけど、みんなびっくりしていました」
呉里璐は今も印象深く思い起こす。

ピーター・チャンと呉里璐が抱いたような心配が、的中した例もある。
1990年代の末近く、金城武は香港で「心動(君のいた永遠)」に出演し、
制作会社は記者たちを伴って、現場訪問をした。
金城武は取材を受けたくなく、気まずい雰囲気であった。

王雅蘭も記者の1人だったが、彼女は金城武とは
デビュー作のテレビドラマ「草地状元」のときに早くも知り合っており、
その後も何度か交流があった。
あるとき、王雅蘭が日本にいる金城武を訪ねてインタビューしたとき、
合間を見て、こっそりデパートにウィンドウショッピングに行った。
すると、金城武もこっそり彼女の後をついて階段を上ってきて、
驚かせたこともある。

このとき、王雅蘭は場をとりなそうと、
「大丈夫よ、みんな古いお馴染みばかりじゃないですか」と言った。
金城武が「誰が古いお馴染みだって?」とピシャリと返したので、
一同は静まり返り、気まずさはいや増したのである。

しかし、機嫌のよいときには、
彼は記者会見で会った王雅蘭に自分から挨拶をし、
「雅蘭さん、お久しぶり。
うわあ、スニーカーにショートパンツなんですね」と声をかけてきた。

金城武がしまい込んでいる小さな世界は、
時たまその断片が洩れてくるだけである。
例えば、何かをする前には、あれこれ考えて長いこと迷うとか、
出かける直前まで、まだ荷造りをしているとか。
たあらかじめ時間はたっぷりあったとしても、スーツケースに入れられない。
どの服を入れたらいいかわからないからだ。

また、例えば、ゲームが好きで、「投名状(ウォーロード)」の撮影中、
ピーター・チャンが明日の夜一緒に夕食をしようと誘うと、
約束があるから行けないと言う。
こんな山奥で誰と会うというのか、ピーター・チャンが不思議がると、
オンライン・ゲームを一緒にやる約束をしているのだと答える。

彼の小さな世界は、友人たちの目にはもう少し多く触れるが、
それでもはっきりとした限界がある。
「彼が変わり者だという理由は、
彼には小さな、人に入ってきてほしくない部分があるからです。
でも、そこから出てきたときは、裏表なく、怒るときは怒るし、
喜ぶときは喜びます」
プロデューサーの許月珍は言う。

「ときどき、とてもおかしな風になることがあって、
私たちは、あ、また来た、と思います。
でも、私には彼の感じ方を守ってあげたいという気持ちがあります。
彼のことを知れば、自ずと守ろうとするようになるんです」
この保護しようという気持ちは、50歳を過ぎたピーター・チャンと、
30代の許依萌にも生じている。

2000年に日本のNHKテレビが、
金城武の11日間の南極の旅をカメラに収めた。
これは金城武としては稀に見る、
普段の彼に深く切り込んだものであった。
フィルムの中の彼は時に子ども、時に哲学者のようだ。

様々な動物を見かけると、金城武はいつも興奮して大声をあげる。
匍匐前進でアザラシに近づき、アザラシが横たわったまま、
大きな口を開けて氷をかじるのを見ると、
自分も雪を掘って、塊を口にしながら、こう言う。
「アザラシの気持ちがわかったような気がする。
うまい、ほんと、ほんと」
そして、カメラマンにもどうぞと差し出す。

死んだアザラシを見つけ、長いこと黙って見つめながら、
昔、映画撮影のとき、1羽の小鳥が急に死んでしまったときのことを思い起こす。
「助けなくちゃ」と言うと、
スタッフは、大丈夫、まだあと5羽いるから、と答えた。
動物病院も見つからず、彼はただ、小鳥をずっと掌に乗せているしかなく、
温かかったものが冷たく、柔らかかったものが硬くなるのを感じていた。
奇跡が起きるのを期待したが、結局は、その小鳥を埋めてやった。
「こういう仕事は、本当にやりたくない」と彼は言う。

「生きている、人間として。
この仕事が一番成功する、現状態で一番想像できる
ステートメントって何だろう。
ハリウッドの映画スターになって、アカデミー取って、
映画がみんな売れて大金持ちになって、自分の飛行機を持って、
自分の土地を持って、
結婚してもいいし、しなくてもいいし、彼女がいっぱいいてもいいし、
車が10台くらいあって。

で、気が付いたら、50歳とか、60歳とかになり、
それでも、いや、俺は一番有名な俳優なんだよ、とかってなったときに、
どうなんだろうって思うんですよね。
生きているってことを実感したのかなあ、って思っちゃうんですよ」
と金城武は言う。

「動物の生態とか見てみると、生きているんだな、と、思うんですよ。
目的は生きているだけ、一緒に。
ペンギンが山の上から、一生懸命海に行って、魚を獲って食べるのは、
多分幸せじゃないんだけど、幸せだなと思っちゃうんですよね。
みんな、この地球という星に、一生懸命生きているだけなんだなと思う」

金城武は、おそらく、南極で感じたことを実践しているのだろう。
地球という星で一生懸命生きることを。(完)

(ピーター・チャン、リー・チーガイ、呉里璐、許宏宇、許依萌、許月珍、
チュー・イエンピン、そして「一条視頻」に感謝の意を表します)


やっとこの項、終わりました。
最後に謝辞があるのって、珍しいです。特に中国の記事では。
直接、これらの人に取材したんだぞということを示しているんですね。
まともな記事の作り方をしていると思います。



   BBS   ネタバレDiary  20:30


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