武ニュースDiary


* このサイトはリンクフリーです。ご連絡はいりません。(下さっても結構です。^_^)
* 引用は、引用であるとわかる書き方なら、必ずしも引用元(ココ)を表示しなくても構いません。
* 携帯からのアドレスは、http://www.enpitu.ne.jp/m/v?id=23473 です。
* 下の検索窓(目次ページにもあり)からキーワードでDiaryの全記事が検索できます。
* バナーは世己さんから頂きました。
* Se inter ni estus samideanoj, kontaktu al mi. Mi elkore atendas vin, antauxdankon!


目次前の記事新しい日記


2020年06月25日(木) 「南方人物周刊2017-4-24」 金城武の隠れ身の術・3

ミスターはてな

ーター・チャンが、「如果・愛」で、初めて自分の映画に
金城武の出演を依頼したとき、
彼は驚き、身に余る光栄だというふうだった。
「とんでもない、なんでぼくに?」
しかし、喜びは喜びとして、彼はやはりお断りをした。

(この話をしたとき)彼は私に礼儀正しく注釈を入れた。
「謝絶です、拒絶じゃなく」
”謝絶“の理由を、彼はもうはっきり覚えていない。
覚えているのは、今も解決していない戸惑いだ。
つまり、主人公の林見東(リン・ジエンドン)はどうしてあんなにまで
孫納(スン・ナー)のことを愛しているのか、ということである。

ピーター・チャンは、「愛に理由はないんだよ」と何度も答えた。
猛反撃で攻め立てたことさえある。
「君は、訳も分からず好きになった人っていないのか?
その人のこと、全部わかってるの?
何で好きなのか、みんなわかっていたのかい?」
金城武は口ごもりながら、
「おっしゃること、わかりますよ、でも、ぼくが心配してるのは、
スクリーンではそれがわかってもらえないのじゃないかと」と言った。

2回目のオファーは「投名状(ウォーロード)だったが、これも謝絶された。
ピーター・チャンは一度ならず日本に飛んで、説得しようとした。
その最後のとき、金城武は彼を高級なカフェに連れていった。
以前ピータ・チャンが日本に行った折、
金城武に最高の料理をご馳走したことがあり、
金城武がそのお返しに、別の店にピータ・チャンを連れていき、
ここも同じくらい美味しいのだと言ったが、
ピーター・チャンが勘定書きを見たら、遥かに安かった。

今回、ピーター・チャンは、これはまずい、と思った。
彼の方からこんないいカフェに連れてくるだなんて、
おそらく断るつもりだろうと考えたからだ。
ところが食事が終わると、なんと彼は承諾したのである。

この戦争映画の大作の撮影は、極めて苦しいものだった。
ピーター・チャンが各方面に対応しなくてはならず、
散々な目にあっているというのに、金城武はやはり彼の傍で
「この論理はおかしい」と言っているのだ。

ピーター・チャンは内心では、
「私があの2人の兄貴たちに対応しているのが見えないのか、
こんなときに、論理がどうのこうの、言いに来るなんて!」と、うめいていたが、
口では「映画が面白いのは、論理がないからさ」と言った。

その後、長いこと、撮影現場でピーター・チャンが
他の俳優に演技を付けているのを目にした金城武は、飛び出していっては、
「話は聞かなくてもいいよ、ピーター監督の映画には論理はないと、
監督自身が言っていたからね」
と一太刀浴びせていたらしい。

「投名状」の現場はほこりだらけで、みな、ずっと咳をしていた。
ピーター・チャンは特にひどく、心配事も多くて病気になってしまい、
香港に治療に戻らざるを得なくなった。
金城武は監督のことを心配し、論理への疑問は飲み込んで、口にしなくなった。
その中国医学の知識から、
「悩みは肺を侵すから、悩みを増やすようなことはやめなくては」と考えたのだった。

3作目の「武侠(捜査官X)」になると、
金城武は脚本を読み終え、こう返事をした。
「徐百九という人物を削った方が作品がよくなりますね」
徐百九こそ、ピーター・チャンが彼にオファーした役であった。

「彼がよく私の映画に出るのは、
私を特別に信頼してくれているということだろうか?
私は、私が特別忍耐心があるからだと思う。
なぜなら、彼は何でも断る。誰がオファーしても。
断られた監督は大勢いる。それも何度も断るんだ。
もう一度考え直して、とずっと言い続け、待つ。
すると、やっと彼が軟化する」
インタビュー番組でピーター・チャンはこう語っている。

4度目にピーター・チャンが金城武にオファーしたのは、
大作ではない、ラブ・コメディ「喜歓你(恋するシェフの最強レシピ)」で、
一見、俳優の気をそれほどそそるタイプの作品ではなかった。
しかもピーター・チャンはプロデューサーで、監督はしない。
彼は弱気だったが、なんと金城武は快諾した。
4回の中で、一番順調だった。

なぜ、今回はすぐ引き受けたのか、金城武はこう答えている。
「チャン監督が、優秀な編集技師が監督で、
2人の優秀な若い人が脚本担当だと言いました。
そのとき、もし自分が参加することで、
チャン監督を助けられるならいいなと思ったんです」

ピーター・チャンは、彼が知らない人の前では不安になることを知っていたので、
「私は毎日いるから、どんなことでも私に話してくれ」と言い、
少しでも安心感を持たせようとした。
しかし、金城武は早くから直接監督のところに行って
コミュニケーションをとるようになったので、
ピーター・チャンが間に立つ必要はなかった。

脚本についての話し合いに初めて金城武が参加したとき、
2人の若い女性脚本家、許依萌と李媛は、まだちょっとバラ色の心地の中にいた。
彼が1枚の紙を取り出し、質問を山ほど提出し始めた。
苦難の道は始まった。

2カ月近くの撮影の間、許依萌と李媛は毎朝起きると、
まず金城武の撮影が何時からかをチェックしに行く。
2人は早めに現場に行き、彼とその日の撮影について討論するのである。

普通、“覇道総裁”物の作品は、主にヒロインの視点から描かれ、
総裁は神様のような存在として、ヒロインと観客を振り回し、
リアルさはそんなに要求されない。
だが、金城武は賛成しない。

映画は主人公、路晋(ルー・ジン)が、ホテル買収を検討する過程で
美食を楽しみ、恋をするのを描くが、
金城武にとっては、主人公が具体的に何を観察するのか、
その過程はどうなているのか、知らねばならず、
ただ、それらしいポーズをとってすませるわけにはいかなかった。

ルー・ジンがビーフ・ウェリントンを試食するとき、
「牛肉とパイ皮の間のキノコソースは、ポルタベラ・マッシュルームではなく、
ブラウン・マッシュルームを使うべきだ」という台詞がある。
金城武はブラウン・マッシュルームとポルタベラ・マッシュルームは
どこが違うのか、知りたがっているので、
2人は出まかせを言うわけにはいかず、マッシュルームの写真を探し出して、
比べながら彼に説明せねばならなかった。

頭では、こういう彼の要求は正しいと、2人はわかっていたが、
毎日このような苦難が続くと、パンクしそうになった。
同じような苦しさは「擺渡人」の監督、張嘉佳も体験している。
「こんなに大勢の出演者の中で、一番恐ろしいのが金城武だった。
毎日大きな目を見開いて、なぜ、と尋ねてくるんだよ。
とうとうある日、彼はぼくのところに駆けてきて、こう言った。
ぼくを怖がらないでください、ただ真面目にやってるだけですから、とね」

ここ10年ほど、金城武は、ほぼ、以前仕事をしたことのある
監督の映画にしか出演していない。
彼は、意識的にそうしているわけではない、
ただ、一緒に仕事をしたことのある監督から、また依頼があると、
こう考えて、うれしくなるのだと言う。
「あんなに面倒をかけたのに、またオファーしてくれる。
ということは、ぼくのやり方を受けて入れてくれたってことだ」

高暁松は金城武と一日、あるシーンで共演してから、
彼を自分が以前仕事をしたことのある陳道明(チェン・ダオミン)と並ぶ
“芝居を知り尽くしたベテラン俳優”と言うようになった。
撮影開始の前、金城武は、よく、このカメラは何ミリかと尋ね、
演技に入るときには自分が画面のどの位置に来るのか、
前景の様子、背景の様子を、知り尽くしていた。

サングラスをかけて演技するシーンで、
金城武は演じるときに、わずかに首を傾けていた。
高暁松はどうしてそんな風にするのかわからなかったが、
カメラマンの方を見ると、そばで親指を立てていた。
実は、金城武は、現場のライトや機器やスタッフがサングラスに映り込み、
カメラがそれを拾ってしまわないようにしていたのである。
(続く)


時間がとれずに、少し空いてしまいました。
文中の「覇道総裁」は、前にも出てきたことがありますが、
ネットドラマによく登場する人物のタイプで、
“背が高くハンサムで、クールで傲慢で、実は情の深い、
大企業の要職についている男性”といったところで、
そんな人物が、ヒロインには最後に心を開く、みたいな、
ハーレクインなんかにも出てきそうですね。

高暁松のコメントとか、ピータ・チャンや張嘉佳とのやりとりなどは、
以前にもご紹介したことがあると思います。




   BBS   ネタバレDiary 22:00


前の記事あさかぜ |MAIL

My追加