オークション漁りをしていたら 以前いちど返品した あの偽モノ大島を 同じ売り文句と値段で しっかり落とした人がいるのを発見 なんだかフクザツな気分になった
このところまた いろいろな着物の燃焼実験をしているが あの染大島の糸を燃やしたときの 指先で潰せない黒い塊の感触が忘れられない 正絹なら玉になっても かさっと簡単に壊れる灰になるのだ
けれど同じ正絹でも 泥染めとなると違う 燃えにくいとはよく言われる泥大島だけれど きっちり黒に近く染められた部分を 短冊状に細く切って火をつけると じっくりとふちの辺りを焦がして消える 糸の状態なら燃えるが 灰は玉にならずに繊維のかたちをそのまま残す
ついでに言えば 木綿は燃えるのが遥かに早く 炭化の度合いもきつく真っ黒に 燃え尽きるかまたは繊維のかたちの焦げが残り ウールもあっという間に燃えて じゅぶじゅぶと音を立てて 潰せる丸い黒い塊になる
泥大島のグレーの灰は 繊細でなんだか美しく 絹よりも 強靭な麻の灰によく似ている 夏ものの麻の端切れはゆっくり燃えて 向こう側が透けて見えそうな 羽衣のように美しい灰になる
詳しい化学的な組成は解らないが 身近な燃やすという行為をしたとき 蚕という生き物の産物である絹が まるで植物繊維のようになっているのが 泥染めの大島なのかと思える
泥大島は絣だから そんな泥染めの部分と 染まっていない部分とが 一本の糸の中に交じり合って 植物と動物がバランスしている それをなすために不可欠なのが 泥という鉱物のちからだとしたら
もうそれは自然そのものじゃないか ひとつの宇宙と言ってもいい 着物を泥の中に隠したという偶然からはじまって 気の遠くなるような染めが今に続くには 祈りすらも超越した そういう秘密があるからかもしれない
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