もう跡形もなくなってしまった 旧豊岡病院の場所を 横目に見ながら坂道を上るとき ここで いったい何人が亡くなったのだろうと いつも思ってしまう
ずうっと以前 住んでいた街の病院には 敷地の中に小さな祠があって いつもその前を無意識に通っていたが 今考えると そういう人たちの 魂沈めのためだったのかもしれない
坂道と堤防の下の更地は なんだかすり鉢の底みたいで いくつもの重機が荒々しく動いているのが 墓を暴いているようにも見える 遺すにしても 新しい施設をつくるにしても ここは難しい場所だと思えてしまう
力を入れて自転車を漕いで ようやくてっぺんの橋に差し掛かると 遠くの山々の辺りが 少しだけ白く明るくなっている 以前いっちゃんの教室から見た 虹の掛かった山だ
詰めていた息が そこでほおっと開放される
6年同じ道 でもいつか そこに何があったかなんて 覚えている人もいなくなる
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