愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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はー、今日は一段と忙しかった…バイト…。ん? あれ? 土曜なのに何でバイト出てるんだっけ? よし、一昨日の続きいくか。面接は形ばかりのもので、真田は即採用です。ちなみに、面接に現れた真田と接し、オーナーはちょっと意外に感じていたよ。若菜が友達を連れてくるって言うから、まあまあチャラいのが来るのだと思っていた。そしたら、全然違うタイプの子だったから。一目見た瞬間は、無愛想に見えたので、接客向きじゃないと感じたんだけど、履歴書が丁寧で、受け答えからは真面目さが伝わってきたので、大丈夫だろうと思っている。ただ、すごく緊張してるのが分かったので、慣れるまではしんどいだろうなと心配しています。 ところで、コンビニの立地は、まあまあ駅から近く、周りに高校やら会社やらマンションやらもあるので、平日の早朝と昼時は混みまくりです。それにしても、これは何月頃の出来事なのだろう。夏休み前くらいにしとこう。それで、とりあえずは週一のつもりだったんだけど、もう夏休みだし、週三くらいにすることに。平日二+土曜くらいで。バイト初日は土曜だった。若菜も一緒に入ります。あとは、ベテランのパート(Bさん)と、バイトの大学生(女性、Cさん)です。普段の土曜日は、そこまで混まないことが多いんだけど、その日はたまたま近くでイベントがあったせいで、客がわんさかやってきて、てんやわんや。真田には、ずっと若菜が付いていたけど、落ち着いて教える暇などない。 「アイスコーヒーSと、からあげくんの赤。あと、アイスブラスト(タバコの銘柄)。それと、これ」(振込用紙を何枚かレジに置く)「お支払いと商品は会計ご一緒でよろしいですか?」「うん」「お弁当は温めますか?」「これだけあっためて」「コーヒーにお砂糖ミルクはお入れしますか?」「砂糖1、ミルク2。あ、あと、コーヒーもう一つ。そっちはブラックで」「承知いたしました。もう一つもアイスコーヒーのSでよろしいですか? お持ち帰り用の袋にお入れしましょうか?」「うん。袋は、うーん、じゃあ入れといて」「承知いたしました。アイスブラストは何ミリでしょう?」「5」「はい、承知いたしました」「お支払い内容に間違いありませんでしたら、画面タッチお願いします」「ん」「恐れ入りますが、年齢確認のタッチもお願いいたします」「ん」「袋、お分けしますか?」「一緒でいい」 何これ。何このやりとり。このようなやりとりが繰り返され、ゆうパックが持ち込まれたり、商品の在り処を聞かれたり、コピー機の使い方教えて言われたり、道を聞かれたり、レジ以外にも品出しやら、揚げ物やらしてるうちに、タバコが届いたり、パンが届いたり、外のゴミ箱を確認したら山盛りでゴミ出しに行ったりで、もうこれは何なのか。真田は、若菜に付いてレジに入ってるだけだったが、呆然としていた。店内はエアコンがガンガンに効いていて涼しいのに、背中にびっしょり汗をかいていた。 休憩中、「一馬、大丈夫か?」と、問う若菜に、真田は首を横に振る。 「結人、俺、もう帰りたい」(小声) 「ほー、お前、相当な覚悟はどうしたよ? でも、そんな奴もいたらしいぞ。初日に、途中でこっそり帰ったバイトもいたらしい。まじで帰るのか?」 「帰りたいけど帰らない。帰れない」 「よし、じゃあ、最後までやれ」 「…やります」 地獄! 終わってから、真田はもうヘトヘトのボロボロです。 「結人、やっぱり俺には絶対無理」 「そう思うだろ? 最初はそう思うんだよ。でもしばらくしたら、あれが当たり前になるから大丈夫。慣れたらむしろ、忙しいと快感だね。日中は基本三人体制なんだけど、急に一人が途中で帰ることになって、代わりもいなくて二人体制になって、一人が電話対応とかでいないときに、客がどっと来て、結構な行列出来てるときなんか、レジやってて、ちょっとしびれるね。こんなときにゆうパックとか大量の支払い来たらどーする、とか思うと、ゾクゾクするね」 「絶対嫌だ! 結人、変だよ!」 「でもまあ、飽きる。飽きるんだよ。正直だるい。時給安いし。割に合わねー」 「…飽きたからとか、時給安いからやめるんじゃないよな? 勉強するからやめるんだよな?」 「まあ、そういうことにはなってるな」 「何それ。夏期講習とか行くのか?」 「そうそう。なんか行くことになった。かわいい子いるかもー。出会いがあるかもー」 「アホだな」 「アホだよー。お前も行くか?」 「俺は、家で勉強するからいい」 「家庭教師とかつけてもらえば? お前んち金持ちだろ」 「金持ちではないけど。家庭教師なんて…、見知らぬ大学生とかと部屋で一対一なんて、考えただけで息が詰まる…」 「でも、塾の雰囲気も嫌なんだろ」 「別の学校の生徒もいるし、なんかやだ。学校終わった後、また学校って感じで、息が詰まる」 「お前すぐ息詰まるのな。 そういや、俺と同じマンションに、D高(この辺で一番偏差値高い高校)行ってる友達がいるんだよな。そいつ、知り合いの中三の家庭教師みたいなことやってて、俺らの倍以上の時給貰ってる。そいつに勉強教えてもらおうと思えば、教えてもらえるはずなんだけど、どうもやる気にならん。いつか一馬に紹介してやるわ」 「それ前も言ってたけど。なんで紹介しようとするんだ? 紹介していらない」 「なんで? 協調性なくて友達少ないっていう、お前との共通点があるのに」 「お前ほんと腹立つ。でも今はそんなことはどうでもいい。バイトだよバイト! 俺はどうしたらいいんだ…」 「言ってなかったかもしれんけど、来週からはもう俺いないから。なんとか頑張れよ」 「…聞いてない!」 「Bさんの言うとおりにしてたら大丈夫。Cさんもしっかりしてるから大丈夫」
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