愛なき浜辺に新しい波が打ち寄せる
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2015年03月12日(木) コンビニネタ6

 そしてやっと話は過去から現在に戻るんです。妄想から現実に戻るんじゃない。まだ妄想の中にいるんですよ。そんなわけで、3月8日の日記の続きなんだ。
 断固拒否、と言い切った真田だが、どうしたらいいのか悩む。悩みまくる。コンビニバイトなんて絶対嫌なんだけど、結人の頼みを無下にはできない。できるものなら応えたい。真田は、二つ目の幼稚園の入園式を今でも覚えている。自分と母親は、門の前で足が竦んでしまった。心が竦んで、動けなくなってしまった。前の幼稚園でのことに、囚われてしまっていた。でも、若菜に名前を呼ばれ、体も心も、我に返った。母親が、若菜の出現に安心したのが分かって、自分もホッとした。自分と同じ小さな手なのに、真田の手を引く若菜の手が、とても頼もしく感じられたのを、今でも思い出す。そんな若菜と、小中は別だったが、高校は同じになって、本当に嬉しかった。
 それでまあ真田は、うじうじと悩みます。若菜はそうなることを分かっていて、「悩みに悩んだ末に、断るか、断れずに引き受けるか、半々だな。どっちにしろ、この世の終わりみたいな顔して言ってくるだろうな。断るなら、無駄に罪悪感を抱いてるだろうから、適当に慰めよう。引き受けるなら、…ま、いい経験になるだろ」とか思ってる。
 真田は、母親に、「一馬、結人君の代わりに、コンビニでバイトするかもしれないって聞いたけど…」と言われます。
「えっ、いや、それはまだ、考え中なんだけど…」
「一馬がしたいなら、してみたらいいと思うし、お父さんも反対しないだろうけど、したくないなら、したくないって言えば、結人君も分かってくれるわよ」
「…そんなこと、分かってる」
 そんなことは分かってるんです。しないなら、しないでいい。そう言えば、「だよな〜」って若菜は笑って、それで終わり。それ以降、特に話題にもならないだろう。それは分かってるんだけど、「やってみる」って言える自分であれたらいいのに、と思ってるんです。
 無理しちゃ駄目よ、と母親は言った。無理しちゃ駄目って、まだ何もしてないのに、引き受けるか断るかすら決められないのに、無理をするもしないもない。何も始まってない。
 真田は、小さい頃に色々習い事をしてたんです。ピアノやらスイミングやら英会話やら書道やら。でもどれも長くは続かなかった。習い事の内容が嫌なのではなく、先生や一緒の教室の子に馴染めなかった。母親はいつも、「無理しちゃ駄目よ。やめたいのならやめたらいい」と言っていた。やめたくてやめたから、その後はホッとしたけど、罪悪感や、自分はダメなんだ、という気持ちが残った。そういうことが続くと、もう、何かを始めること自体が怖くなる。何か始めても、またやめることになるかもしれない。こんなんでいいのか。そう悩んでいるのに、母親は、始めるのが怖いなら始めなくてもいい、とでも言うのか。そんなのって…。
 一週間後、真田が出した答えは。
「俺、やってみようと思う」
「そんな思い詰めた顔で言われてもなあ」
「引き受けるからには相当な覚悟でやる」
「重っ! 重いわお前。それ一日目で潰れるわ」
「…俺もそんな予感がする…」
「まーまー、せっかくやるなら、一日ではやめんなよ。だいじょーぶだいじょーぶ! 多分!」
「多分って…。絶対大丈夫じゃない気がするけど、俺はやる…やるぞ…」(自分に言い聞かせている)
「あのー、やる気になってるとこ悪いけど、まずは面接からだから。採用されるとは思うけど、それを決めるのはオーナーだから」
 そんなわけで、真田はコンビニバイトを始めることにしたよ! 人手不足だから採用されるはずだよ! 頑張れ! 私はやめたいけど! 人手不足だからやめれないけど!


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