ということで。 創作の世界パート・・・5ですか?6ですか? まあ、どうでもいいですが。笑 再び、ドナちゃん夢見ちゃってるなあ〜と思いつつ、お楽しみくだサイ〜。 ********************************** 【満月】 「なんか最近、りょうちゃんが元気ないんだよね」 ふと、カウンターの中の直人がそう言った。 会社帰りの午後7時。 いつも寄り道をする喫茶店“小さな家”にて。
私は北原笑美子、23歳。その辺の会社でOLをやっている。 そして私の目の前で、カウンターの中に立って、大きい手で、 魔法のように器用にサンドイッチを皿に盛り付けている加藤直人は、 この店の店員で18歳。 5歳の年齢差をものともせず、私たちは付き合い出して数ヶ月になる。
「りょうちゃんが? なんで?」 きょとんとして、私は言った。 ウワサの本人は、直人と同じくこの店の店員として、アルバイトしている 女の子で、近くの白翠女子大の1年生だ。 ショートカットで、細くてさわやかでかわいい女の子で、この店のマスターである 藤井和広くん(私と同じ年の23歳)と、最近いい感じになりつつある。・・・と、思う。
「なんかよくわかんないんだよね」 首をかしげながら直人は言った。 「ちょっと痩せたみたいな感じもするし、あんまり笑わないし」 「藤井くんとうまくいってないとか、そういうのとは違うの?」 たまたま、他に客があんまりいなかったのと、藤井和広氏本人が、 翌日のパンの仕込みに行っていてその場にいないのをいいことに、 私はずけずけと思ったままを言ってみる。 ハタから見て、こういうのっておばさんだろうか?と思っていると、 意外と気にしてない風の直人は、いや、と明快に首を振って。 「見ててそんな感じはしないから、そこは大丈夫だと思う」 まっすぐな調子でそう言った。 直人には、そういう、直感的に人の気持ちがわかるような所があり、 それを目にする度に私は安心とか、すごいなという気持ちがいり混じった、 変な感覚を味わう。 この子がそう言うなら、そこは大丈夫だという感じ。 なんでこの子にはそういう空気を読み取る力があるんだろう?とか。 そういう感じがする。いつも。
「で、ウワサのりょうちゃんは? 今日はお休み?」 カフェオレを飲みながらそう聞く私に、直人は言った。 「うん、なんかサークルの関係で遅くなるからって、今日はお休み。 寄れたら帰りにちらっと寄るって言ってたけど、どうだろうねー? 文化祭の出し物準備らしいよ」 「文化祭! サークル! 学生って感じよね。なつかしい〜!」 りょうちゃんって何のサークルやってんの? と聞くと、テニスだって。幽霊部員らしいけど。と直人が答えた。 「似合うわ。それ。さわやかすぎる」 カウンターからサンドイッチを持って出て、少し離れた席に座っている、 もう一組のお客様にそれを持って行く直人。戻って来ながら、こう聞いてくる。 「笑美子さんはなんかやってたの」 「ええー? 私はね、恥ずかしいんだけど、オケ」 「オケって何。樽とか桶とかのオケじゃないんでしょ。カラオケでもないよね」 「ちがうに決まってんでしょ・・・。ああ、でも、フツウわかんないよね。 オーケストラのオケ。楽器はチェロ」 「ええー、すげーじゃん。チェロ弾けるってこと?それって?」 「下手くそだけどねー」 「じゃあ今度弾いてみせてよ」 「・・・わざわざ持ってきて弾くようなもんじゃないわよ」 「ふうん。オレは聴きたいけどな」 少し口の端で笑いながら直人がそう言ったのと、カランと音がして りょうちゃんが店に入ってきたのとが、同時だった。
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