| 2003年08月02日(土) |
デッドエンドの思い出(byよしもとばなな) |
ばななさんの最新刊『デッドエンドの思い出』が、知らない内に刊行されていた。 (どうやら7月27日発売だった模様。)で、読んだ。
あとがきから最初に読むのが習慣の私、いつもの通りあとがきを一番に読んだら、 ばななさんが「デッドエンドの思い出という話が自分でも今までの作品の中で いちばん好きです」というようなことを書かれていて、とりあえず表題作でもあり この本のラストにおさめられている“デッドエンドの思い出”という話だけ、 最初に読んだ。
そうしたら。 その物話は、すうっと私の心の奥に染み込んで、私にとってもかけがえのない、 忘れ難いと言ってもいいくらい、本当に読み手である私にとっても、ばななさん の作品の中で、もしかして一番好きかもしれない。と思う位、印象深いものとなった。
つながっちゃったのかもしれない。と思う。 なんか、今の私の心理状態と、この物語が。 まるで、昔、斉藤由貴ちゃんと一緒に『ラブレター』という舞台をやった藤井兄 が、それはお互いにあてたラブレターをずっと読んでいく、という形式のもの だったらしいが、途中であまりにハマってしまい、演じながら泣けて泣けて しかたなかった。ってくらいに。 ハマっちゃった!って感じだったのだ。 今日、午後のアフタヌーンティー・ティールームで、この話を読みながら、何度も 涙をこらえるのに必死だったってくらいだ。笑
なんたって、最初に出てくる会話の感じから、好きかもこの話。とか思ってた程。 2頁目(本で言うと174頁)に描いてある光の感じとか空の感じの描写に、 すでに涙ぐみそうになっていたって位なのだ。
そして何より、ここに出てくる西山君という登場人物は、私の永遠の理想かも しれないと思うほどの人だった。 理想と書いたが、それは私の相手としてとかでは無く、私がこういう風に なりたい!という理想形。 本文5頁(本で言うなら178頁)の1行目にある西山君の描写から、涙が出た。 (ほんとに!笑 喫茶店にいたのに!私。笑)
その、子供時代に特殊な経験をしたという設定になっている西山君という人に ついて、『なんとなく人をくつろがせて楽しくさせるその特別な力は、彼が 自由であろうとしていることから発しているんだな、』と主人公が思うところ。 その一文を読み、その文章は、突然私の心を揺さぶり、『なんとなく人を くつろがせて楽しくさせるその特別な力』、ああ、そういうのが私にもあったら いいのに!なんて、切ないくらいに強くそんなことを思って涙なんて 浮かべていた私は、本当にちょっとどうかしているかもしれない。 そんなこと思うこと自体が既に傲慢かもしれないとも、思うが。
ただ、わかる。と思った。 一生の宝物にできるような時間は、不意打ちみたいに突然あらわれるものだ。 予測なんかできない。 そして、どんなにツライ経験の中でも、不意にそういう幸せな瞬間があらわれる こともある。それを知っている。と思う。 そしてそれを知っているから、人生なんてやめられない。とも思う。
いくつもいくつも、心を打つ一文があり、思わず頁を折り曲げてしまった所が 5箇所とかあった程だ。そんなことも結構珍しい。ばななさんの最近の作品は とても良くて、『王国その1-アンドロメダハイツ-』にも何箇所かそういう 部分があったけれど、これほどではなかったと記憶している。
その、おっとりしているが実は冷静なところもある、長女である主人公のミミ という女の子が、どこか私と共通する部分を持っていると感じたのも、感動が 深かったことにつながるだろうか。
そして、一番心を打たれたのは、その西山君がミミに向かって、お嬢様だなあ、 と言ったあとで、「いい環境でいるのを恥じることはないんだよ。武器にした 方がいいんだよ。もう持っているものなんだから。」と言うところだった。 そうなのか!と思った。目からウロコが落ちるとかそんな感じ? その部分にも、思わず、涙していたってくらい。 人目もあって、必死で我慢したってくらいだ。笑
そして、最後の方で、もう一つ、西山君が言う言葉。 人の心は自由で、閉じ込めることなんてできない。ということを言ってる。 心はどこまでも広がっていけて、人の心の中にはどれほどの宝が眠っているか、 ということを、言っているところがある。 (詳しく書かないのは、あまりにすばらしい言葉だったから、皆に実際に 読んでほしいなあ!と思って書かないんですが。だって、最初からきちんと 読んで、その言葉を読んでもらうのが絶対いいって思うんですよ。)
すばらしいと思った。 そして、ラスト辺りのシーンで、イチョウの黄色が視覚的に用いられている。 うつくしさとか。 バランスとか。それは文章的にも、読み手の心に訴えてくる心理的なものと しても。 すごく良かった。
こういう作品にめぐり会えることがあるから、やっぱり生きるっていうことは、 そう悪くないと思うのだ。(大袈裟なんだけど!笑 でも本当に、そんな風に 思うのです。)
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