日記

2002年09月26日(木) かわいい話。

てことで、創作日記パート3です。爆
ま、少女小説お好きな方はどうぞ。笑 勿論フィクションでござる。
かわいい話というか・・・まあ、現実はそうそううまく行きませんけれどね。笑

********************************

  【ベイビー・ピンク】
朝、午前6時50分。私は眠い目をこすりながら、バイト先のパン屋である
“小さな家”という名前のその店で、カウンターに立っていた。11月の終わり
の冬が近い朝、ストーブも今つけたばかりで結構寒い。外に視線を流すと、太陽
が出た直後で、金色とピンクとブルーに世界が染まっていてとても綺麗だ。

朝ごはん用のパンを買って行く主婦やサラリーマンや学生のために、毎朝この
店は7時に開店する。私・咲坂りょうは、この店のすぐ近くにある白翠女子大の
1年で、ここでバイトをし始めて、もう、半年が経過していた。
朝は苦手だけど、世界が朝で染まる感じをこの場所から眺めているのはかなり
好きで、毎日、いいなあ。と思ってしまう。

「りょうちゃん、おはよう」
爽やか〜な笑顔と共に私の後ろから、チーフが現れてそう言った。
チーフとは、藤井和広氏、23歳。その若さでパン屋を経営している、小柄で
細くて童顔で、気配りの精神にあふれ、お客さんからの人気もとても高いと
いう、この近所のアイドルのような存在の人だった。
それにしても、朝っぱらから爽やかだなあ。爽やかすぎる! なんて心の中で
思いながら、心拍数上がり気味の私は、なるべく平静を装って挨拶を返している。
「・・・あ、チーフ。おはようございます」
何をかくそう、私はチーフのことが、初めて会った5月から、もうずっと大好き
なのだ。

「なんか、いつにも増して眠そうじゃない? 今日。なんかあった? 昨日の夜」
焼き上がったパンをトレーごと棚に乗せながら、チーフは言った。
「ハイ・・・実はリョーちゃんのライブに誘われて、ゆうべ行ってて。
終わった後二次会とか行ってしまって、帰って来たの4時だったんですよ・・・」
リョ―ちゃんというのは最近友達になったバンドをしている子で、ここ数ヶ月で
この店の常連になりつつある子だった。
「うわ、不良娘だ」
私の台詞に、ちょっと笑いをふくんだ視線で振り返って、私を見てそう言うから、
心臓が更にどきんと跳ねる。
(だからあんまり寝てなくて自制心が働かないんだってば・・・。)
とか思いながら、チーフと目を合わせて。
参るなあ。この角度。好きだなあ私、この人の顔も性格も全部・・・。
なんて、朝も早くからそんなこと思ってどきどきしてる。

「でもアレだよねえ。俺なんてこういう職業じゃない?」
「はい?」
ふいに、そう言われて。聞きかえす私に、やさしい声でチーフは続ける。
「オレ、朝早いでしょ。3時とか4時とかから起きて毎日仕事だから、夜遊び
とかあんまり付き合えないんだよねえ。だから、それで昔、フラれたことあるよ」
なにそれ。と思った。
こんな毎日、この仕事大好きでこの街の皆に美味しいパンを提供してるこの人の
こと、なんでそんなことで振ったりできるのー?って思った。それで思わず、
私はこう言ってしまってた。
「・・・でも私は、そういうチーフが大好きですけど?」
思わず言ってしまって、はっ。と口を押さえたけれど、遅かった。
何言ってんのー?
ばかばか。眠くて頭まわってないにも程があるよ私。・・・と思ったけど、
時既に遅し。
「え」
と振り返って固まるチーフ。
言うつもりなんかカケラもなかったのに〜〜。どうしよう。
チーフが立っている場所の左隣に置いてあった皿時計が、7時3分を指していた。
なんで時計なんか見てるかって、その時の私が、とてもチーフと目を合わせる
勇気なんてなかったからだ。
もうすぐ、お客さんが誰かくる。
おねがい、だれか来て。
誰かこのおそろしい沈黙をどうにかしてよ。
「ええと」
そうしたら。
沈黙を破ったのは、チーフの方だった。
「どうもありがとう」
真顔で。そんな風に言われたから余計怖かった。やっぱりダメだって思った。
そしたら。
「じゃあ・・・付き合う?」
一瞬呆然として、その後、はい。と頷いた。
チーフの後ろでは、綺麗なベビーピンクの色をした朝の空が広がっていた。
それはとても甘くて、泣きそうに綺麗な色をしていた。


 < 過去  INDEX  未来 >


dona-chan