伊藤忠商事の丹羽社長が言う「労働力の均質化」が企業収益を支えるというのは その通りだと思います。
収入の高い社員と低い社員を同時に抱え込むのは、社員が収入の高さを求めて 企業全体の高収益化を忘れてしまう危険があります。日本製品の高品質が実現 するのは、社員の中間層が高品質化されて初めて実現できるもの。
つまり製品の質は社員の質とほぼイコールの関係です。 モノ作りはやはり人間が手を加えるものですから、設備の最新鋭化をしても それを決めるのも人間、製品を作り上げるのも人間、作り込みを考えるのも 人間です。だからその人間の質が製品の質を決めてしまうのです。
モノ作りに関わる人間は多数の人間が関わるわけですから、少しの突出した 人間を高待遇するばかりでなく、多くの人間の質を高めるために多くの人の 待遇を良くして、多くの人間の質を高めることが経営には求められます。 これがいわゆる総合力です。中間層の質の高さが企業の質を高めます。
多数を占めるこの中間層が腐った企業は、そのまま腐ってしまいます。 中間層が生き生きした企業は、そのまま生き生きしています。 この中間層をいかに活気溢れるものにするのか。この活かし方が経営に求め られるということです。
考えてみれば、事務職でも技術職でも、活気があるかないかはそのまま製品の 売れ行きに直結していますし、勢いが違います。これは社員の質をどうするか といった、経営側の考え方の問題です。そこに管理職の存在が問われるわけ。
客先に行っても自分の会社を見ても、その担当者の顔色を見ていれば、ある 程度はその会社の活気が読み取れます。実務に携わっている担当者の顔色 ひとつで会社の具合が分かるというのもウソ臭いかもしれませんが、大多数を 占めるこういった担当者のやる気が会社を支えているのは間違いありません。
勝ち続けていい気になっている会社は、他の野心のある会社に取って変わられる という憂き目に会うことも少なくありません。日本の製品が高品質になったのも 安かろう悪かろうの時代から必死になって品質を追求した結果であり、その 努力があったからこそ。今の日本は、この必死さがなくなったというわけです。 だから他の国に品質で負けるようになった。日本の製品が選ばれるのは品質では なくてデザインがいいからだと。特に中国ではそうらしい。
マレーシアのマハティール元首相が取り入れた「ルックイースト政策」があり ましたが、今では日本を手本にしていません。これは上記が原因。真面目で 努力をする国民性は終わったと感じたからです。彼もそう言っています。
生活が良くなって、誰でもがそれなりに生きていける環境になってしまった。 不況とはいいながら、それでもそれなりに生きていける環境です。 それを当たり前としても生きていける環境です。歯を食いしばって頑張る姿を 忘れてしまったようにも感じます。楽して収入を得る方向に行きがちだし。 こういう姿を見た他国の人たちは、日本は、手本にするには終わった国だと 判断するわけです。モノ作りで成長してきた日本にとっては情けない状態です。
昭和30年代から40年代にかけてのいい時代は過ぎ去りました。 しかしそれを忘れなかったからバブルが到来し、そして弾けました。 弾けてもまだバブルのいい時代を忘れることができない人たちが残っています。
能力はあってもそれを出すことを忘れてしまった年代がまさしく中間層です。 ここにテコ入れすることが丹羽社長の言う労働の均質化ならば、それは自分も 含めて、能力を発揮するべくがむしゃらにならなくてはならないということ。
諦めの早い自分にとっては結構ぐさりと突き刺さった言葉です。 突出した誰かが高収入を得るのではなくて、みんながより高い収入を得られる ようになればいいのであって、これを均質化の他の言葉で言えば「配分」です。
より高い配分をして、会社を下支えする中間層が能力を引き出せるのであれば、 それは会社の活性化に貢献するというわけ。原資は限られていますから、それを どうするかが経営者の腕の見せどころ。不況はある意味いい機会。これを機に 社員が頑張って、それを原資にすることが一番の近道でしょう。
そういう意味で、話を日本に戻せば、不況は日本を活性化させるいい機会で あったかもしれません。収入が減って、しんどい思いをして、頑張って収入を 増やす努力をすることが正しいことで、それが実現するならば、日本は資本主義 の正しい方向を進んでいると言えるでしょう。
やみくもに市場原理を導入したい小泉首相は、ある意味、古典派なのかもしれま せん。日本を正しい資本主義の道を進めているのかもしれません。個々には おかしいこともありますが、理念としてそれを貫くのなら、大きな目で見ると 正しい方向を示しているのかもしれません。
丹羽社長の言葉を聞きながら、自分を反省し、小泉首相のことを思う。 彼が引っ張りだこなのも分かるような気がします。考えさせてくれます。
はい。今日は晴れときどき曇り。(東京地方)
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