『日々の映像』

2009年07月13日(月) どうなる 新疆自治区暴動 どこに原因が


1、新疆暴動、国境貿易にも打撃ロシア人業者ら一時退避
               2009年7月12日  日経
2、中国共産党、新疆暴動の首謀者らに厳罰方針 新華社報道
                   2009年7月11日  日経
3、新疆暴動、観光への打撃深刻 ツアー中止相次ぐ
                      2009年7月11日 日経
4、中国:ウイグル住民の脱出続出 バスターミナルに人の波
毎日新聞 2009年7月9日
5、社説:新疆自治区暴動 民族政策に寛容さ欠く
                    2009年7月9日  毎日社説
                
 中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで大規模な民族暴動が起きた。死者数中国発の情報が信用できない状況だ。少なくとも昨年春のチベット暴動大きく上回っている。ウイグル人と漢民族の衝突が伝えられている。

ウルムチで起きた大規模暴動が、中西部の地域経済に打撃を与え始めている。
 ウルムチ市の観光会社によると、同社が予定していた海外から同自治区に入るツアー旅行が10日までに、すべて中止になった。理由は「現地の治安悪化に対する不安の高まり」である。自治区の域内総生産(GDP)の約7%を占めるというから経済の打撃も深刻だ。

 中国政府はこの暴動で武装警察・軍を大量に派遣している。社会の安定をはかカギは武力ではない事は歴史が証明している。なぜ、中国に民族闘争的な混乱が起こるのか。ここに視点を置いて事件の成り行きを見なければならない。

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1、新疆暴動、国境貿易にも打撃 ロシア人業者ら一時退避
               2009年7月12日  日経
 【ウルムチ(中国新疆ウイグル自治区)=戸田敬久】新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで起きた大規模暴動は、中国とロシア、中央アジア諸国との国境貿易にも影響を与え始めた。国境貿易の拠点のひとつである同市に滞在していたロシア人業者らはすでに中国国外に避難し、国境貿易の本格再開が遠のく公算が大きい。
 ウイグル族が暴動時に集まった延安公園近くの貿易品卸売りセンター「辺疆国際商貿城」では11日、外国人バイヤーの姿がみられず、辺りは閑散としていた。同センターは靴や服飾品、玩具など3000軒の卸が入居する同市最大規模の拠点。関係者によると「ロシア人などのバイヤー300人は、軍に国境まで運ばれ出国した」という。(07:00)

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2、中国共産党、新疆暴動の首謀者らに厳罰方針 新華社報道
                   2009年7月11日  日経
 【ウルムチ(中国新疆ウイグル自治区)=戸田敬久】中国国営の新華社によると、中国共産党は8日夜、胡錦濤総書記(国家主席)の主宰で、新疆ウイグル自治区の大規模暴動に関する政治局常務委員会会議を開き、暴動の首謀者や実行者らに厳罰で臨む方針を決めた。一方、区都ウルムチ市では中心部で厳重な警備が続くなど緊張が続いている。
 党最高指導部が参加する政治局常務委員会会議の開催が公表されるのは極めて異例で、国内向けに強い姿勢を示した。対外的にも外務省の秦剛副報道局長が9日の記者会見で、一部の国が暴動に関して国連安全保障理事会での議論を求めていることについて「完全な内政問題であり、安保理で議論する理由はない」とけん制した。(01:23)
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3、新疆暴動、観光への打撃深刻 ツアー中止相次ぐ
                      2009年7月11日 日経
 【ウルムチ(中国新疆ウイグル自治区)=戸田敬久】中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで起きた大規模暴動が、中西部の地域経済に打撃を与え始めている。
 ウルムチ市の観光会社によると、同社が予定していた海外から同自治区に入るツアー旅行が10日までに、すべて中止になった。理由は「現地の治安悪化に対する不安の高まり」という。上海の旅行会社も「予約客のキャンセルが相次ぎ、国内ツアーの再開はメドが立たない」と頭を抱える。
 多くのモスク(礼拝所)では10日、イスラム教徒にとって大切な金曜礼拝も中止された。モスクの近くで土産物店を経営するウイグル族の男性(49)も「売り上げが大きく落ち込んだ」と嘆く。自治区の域内総生産(GDP)の約7%を占める観光業への打撃は深刻だ。(07:00)
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4、中国:ウイグル住民の脱出続出 バスターミナルに人の波
毎日新聞 2009年7月9日
 【ウルムチ(中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区)鈴木玲子】暴動発生から5日目の9日、中国新疆ウイグル自治区ウルムチは依然、緊張した空気に包まれていた。街の至る場所に武装警察や兵士らが配置され、大規模暴動の起きた地域の店舗はすべて閉ざされていた。市中心部の長距離バスターミナルには、治安の悪化を恐れて街を脱出しようとするウイグル族住民が押し寄せている。
 「カシュガル行きは売り切れ。明朝再開する」
 市中心部バスターミナルはこんな張り紙にもかかわらず、ウイグル族住民でごった返していた。衣料品販売店に勤務するウイグル族女性、アミナさん(22)は治安の悪化を恐れ、カシュガル郊外にある実家に脱出しようとしていた。だが、切符を手に入れることはできず、疲れ切っていた。
 大規模な暴動が起きた直後、アミナさんは市内にある漢族経営のホテルに逃げ込んだ。しばらくすると、ホテル側から「今日は営業をやめたい」といわれ、その後、近くのウイグル族経営のホテルに移った。
 その翌日、ウルムチ駅に向けて歩いていると、漢族男性から「ここでうろうろするな」とどなられ、漢族男性が運転するタクシーからも「ウイグル族は嫌だ」と乗車拒否された。
 ウイグル族のホテルで宿泊していた7日昼ごろ、漢族の集団がウイグル族の経営するビルを襲い、奇声を上げているのを目撃した。中国国営のテレビでは、血を流す漢族や、漢族が被害に遭う様子ばかりが強調されているように見えた。「なぜ漢族の被害場面しか放映しないのか。国営メディアは真実を流していない」。怒りが込み上げてきたという。
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毎日新聞 2009年7月9日 21時10分(最終更新 7月9日 23時26分)

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社説:新疆自治区暴動 民族政策に寛容さ欠く
                 2009年7月9日  毎日社説
 中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで大規模な民族暴動が起きた。当局の公表した死者数は150人を超え、負傷者は1000人以上。死者数では昨年春のチベット暴動を上回る。
 暴動後、警察が多数のウイグル人を連行したため新たな抗議デモが起きている。一方、漢民族の対抗デモも起き、民族対立の不穏な様相だ。
 中国は今年秋に建国60周年を迎える。いまや世界第2位に迫る経済大国に成長した。だが、チベット、ウイグルという建国以来の民族問題をいまだに解決できないのは、民族自治を尊重しようという寛容さに欠けているからではないか。
 今回の暴動の背景にあるのは、少数民族に対する人権抑圧だろう。主要8カ国首脳会議に出席する胡錦濤国家主席は、国際社会に向かって武力弾圧一辺倒ではない問題解決の道筋を示してもらいたい。
 事件の全容はまだ明らかでない。これまでの報道によると、発端は広東省で起きたウイグル人出稼ぎ労働者襲撃事件への抗議行動である。インターネットを使った呼びかけに応じて、ウルムチ市内の公園で抗議集会が開かれた。それを鎮圧しようとした警備当局と衝突になり、暴徒化したウイグル人が漢族の通行人を襲い、バスなどに放火したらしい。
 昨年、カシュガルで起きた国境警備隊襲撃事件については、東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)によるテロとされ、イスラム教徒の弾圧監視が行われた。
 今回は、亡命ウイグル人で組織する世界ウイグル会議(本部ドイツ)が主導した国際陰謀のせいにしている。だが、人権侵害に対する抗議行動を警備当局が力で抑えつけようとしたのがそもそもの原因ならば、ウイグル人の不満解決なしに治安が回復することはないだろう。
 ウルムチはウイグル人の居住地区と漢民族の居住地に分かれている。言語、宗教、生活習慣が違うだけではない。民族の違いによる所得格差が歴然としている。同じことはチベットでも言える。民族自治区域において、その土地の少数民族が貧しく、外来の漢民族が豊かなのは、民族政策に問題があるのではないか。
 治安の悪化は、少数民族地域だけではない。中国全土で住民と警察の衝突が増えている。1000人を超えるデモや集会は5月だけで約2万5000件に達し、過去最高記録を更新したという。人権侵害への抗議や労働争議が増えたためだ。
 世界が中国の成長力に注目している。中国の成長維持は、社会の安定を維持できるかどうかにかかっている。社会の安定をはかる真の力は武力ではない。寛容な政治である。


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石田ふたみ