『日々の映像』

2008年04月18日(金)  食糧高騰―市場の暴走

 富が仕掛け人に吸い寄せられて行く。食糧高騰__市場の暴走の仕掛け人がいるのだろう。金融(株式・債券)、通貨、商品まで先物取引があるのだ。商品について言えば、エネルギー、貴金属、農産物(トウモロコシ・大豆・小麦ほか)に至るまで先物取引がある。イギリスにADPという先物取引で利益を出し続けているファンドは、20年連続して20%以上の利益を上げている。素人が表現すれば、先物の投資で利益を上げている。投資資金は農産物・石油に流れ込むところに、小麦、大豆、トウモロコシなどの値段が暴騰している原因のように思う。

 世界一、二のコメ輸出国であるタイやベトナムが相次いで輸出を規制している。カンボジアでは自国のコメが高値で外国に買い占められてしまい、国内に回らなくなったという。世界33か国で高騰する食料価格に対する暴動が発生しており、コメの輸入大国であるフィリピンでも、政府が対応を謝れば暴動が発生する可能性があるのだ。マルクス・エンゲルスの「共産党宣言」流で言えば、「地球上を妖怪が歩き回っている。食糧不足という妖怪だ」(朝日社説)になるという。ともかく、小麦、大豆、トウモロコシの価額が平均で 2倍になるという市場の暴走が続いている。自由経済という名の「弱肉強食」の争いだ。

 世界平和のために生命を削り続けたガンジーのお墓には、次のような碑文が刻まれているという。現代の狂った資本主義をもしガンジーが生きていたらどう表現するだろう。食糧高騰_市場の暴走はまさに「労働なき富 」「道徳なき商業」に該当する。

『7つの社会的罪』
理念なき政治
労働なき富
良心なき快楽
人格なき学識
道徳なき商業
人間性なき科学
献身なき信仰


食糧高騰―市場の暴走が飢餓を生む
                  2008年4月14日 朝日新聞社説
食糧高騰 『外から買う』が危うい
                  2008年4月16日東京新聞社説
フィリピンで深刻化するコメ騒動
                  国連(UN)高官の説明

参考
物価上昇が加速する気配
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20080406
世界の穀物価額の狂乱
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20080327

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

食糧高騰―市場の暴走が飢餓を生む
                  2008年4月14日 朝日新聞社説
 地球上を妖怪が歩き回っている。食糧不足という妖怪だ――マルクス・エンゲルスの「共産党宣言」流で言えば、こうなるだろう。
 世界中でコメや小麦、大豆、トウモロコシなどの値段が暴騰している。香港ではコメが売り切れ、カイロでは政府支給による格安のパンを求めて長蛇の列が続いている。
 世界一、二のコメ輸出国であるタイやベトナムが相次いで輸出を規制した。カンボジアでは自国のコメが高値で外国に買い占められてしまい、国内に回らなくなった。
 国連の世界食糧計画(WFP)によると、援助用食糧の価格は昨年6月から55%も上がった。必要な量を賄うことができなくなり、各国に資金の追加拠出をアピールした。ところが、この1カ月でさらに2割も上がってしまったという。「まるでツナミのような緊急事態だ」と、訪日したパウエル事務局次長は述べた。
 なぜ、いま、食糧不足なのか。
 確かに、オーストラリアの干ばつなど、主要農業国の不作が重なった。中国やインドといった人口大国で食生活が変わり、肉の消費と飼料の需要が急増したこともある。トウモロコシなどの穀物を、ガソリン代わりのバイオ燃料に転用し始めた影響も大きい。
 だが、今回の事態を招いた要因として何より注目されるのは、投機資金が食糧市場に流れ込んでいることだ。米国の金融不安を機に金融・株式市場から引き揚げられた資金が穀物などに向かう。価格が上がり、それがまた投機資金を呼び込むという悪循環である。
 その結果、食糧輸出国は売り惜しみをし、輸入国は買い占めに走る。世界の食糧生産は増えているという現実があるのに、貧しい国、貧しい人々には手が届かなくなってしまうのだ。市場の暴走というほかない。
 日本の私たちも、その余波を肌身で感じさせられている。パンや即席めん、乳製品などの値上げラッシュである。だが、いちばんの被害者は最も弱い立場の人たちだ。
 たとえば、紛争が続くスーダン。難民キャンプにいる200万人への食糧支援がおぼつかない。このままではさらに新たな難民が出る恐れもある。
 途上国の都市の貧困層にも飢餓が広がっている。食品の値上がりで食事の回数や量を減らす世帯が急増している。アフリカなどの一部地域では、暴動が起きるほどの深刻な事態だ。
 食糧の値段や供給は市場が調整するが、それが人々の生存まで脅かすことがないよう、国際的なセーフティーネットをもっと拡充する必要がある。
 先進国の投機と無策が人道危機を引き起こしている。飢餓の広がりを防ぐために、日本をはじめとする先進国は緊急支援に動かねばなるまい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
食糧高騰 『外から買う』が危うい
2008年4月16日東京新聞社説
 米大統領が食糧危機に瀕(ひん)するアフリカなどへの緊急支援策を打ち出した。英国の首相は食糧問題を北海道洞爺湖サミットの議題にすべきだと訴えた。日本も食糧調達の危うさを直視せねばならない。
 今月に入り、アフリカのチュニジアでは食品の値下げを求めるデモが暴動に発展し、警官の発砲で二人が死亡した。エジプトでは安いパンを求める人々が列をなし、けんかによる死者も出た。中米ハイチでは首相解任につながった。コメ輸出国のタイやベトナムは国内向けを優先し、輸出削減に踏み切っている。
 食糧高騰がもたらす混乱を早急に収めたい。アフリカと関係が深い英国のブラウン首相からそんな危機感が伝わってくる。世界銀行のゼーリック総裁は七月のサミット前に大阪で開かれる八カ国財務相会議でも議題とするよう求めた。サミット議長を務める日本の首相は真摯(しんし)に受けとめ、対策づくりを主導しなければなるまい。
 小麦やトウモロコシの市場価格は二〇〇六年に比べ二倍になった。小麦は主要生産国のオーストラリアが二年連続して干ばつに見舞われたことが影響している。
 米国のサブプライムローン問題を機に行き場を失った投機資金が穀物市場に押し寄せ高騰に拍車をかけている。トウモロコシがバイオ燃料の原料に回されて品薄となり、そのあおりで大豆の生産面積削減という悪循環も招いている。
 日本は穀物の多くを輸入に頼っており、めん類やパン、しょうゆ、食用油などの値上げが止まらない。投機資金の対策などサミットで議論すべき課題は山積しているが、同時に、日本も先進国中最低の食料自給率39%という厳しい現実と向き合うことが不可欠だ。
 二〇〇〇年に消費量の30%を超えていた世界の穀物在庫は国連食糧農業機関が安全水準とする18%を下回った。中国など新興国の旺盛な消費に生産が追いつかない。
 長く続いた「外国から買える」という日本の食糧調達が危うくなり、絶対不足の領域に移りつつあることを知るべきだろう。
 日本の農地のうち埼玉県の広さに匹敵する三十八万ヘクタールが耕作放棄地だ。生産基地を遊ばせているのが現実であり、そんな余裕はなくなっていると言うほかない。
 農政をめぐり与野党は激しく対立しているが、世界の食糧事情を見据えれば早急に対策を講じるべきだ。食糧政策を与野党一体で打ち出す覚悟を見せてもらいたい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
フィリピンで深刻化するコメ騒動
国連(UN)高官の説明
2008年4月11日、フィリピン・マニラ(Manila)の国家食糧庁(National Food Authority)の倉庫前で、政府配給米を買いに来た市民。(c)AFP/ROMEO GACAD
【4月13日 AFP】フィリピンの首都マニラ(Manila)を訪問中の国連(UN)高官は11日、世界33か国で高騰する食料価格に対する暴動が発生しており、コメの輸入大国であるフィリピンでも、政府が対応を謝れば暴動が発生する可能性があると警告した。

 国際稲作研究所(International Rice Research Institute、IRRI) によると、増大するコメ需要に生産が追いつかないため、価格高騰は続く見込み。
フィリピン政府は消費者保護のため業者に対する監視を強化している。(c)AFP
世銀総裁、貧困対策へ行動呼びかけ IMFとの合同開発委員会で
2008年04月14日 09:04 発信地:ワシントンD.C./米国
2008年4月13日、ワシントンD.C.(Washington D.C.)で開かれた世界銀行(World Bank)と国際通貨基金(International Monetary Fund、IMF)の合同開発委員会。(c)AFP/PAUL J. RICHARDS
【4月14日 AFP】世界銀行(World Bank)のロバート・ゼーリック(Robert Zoellick)総裁は13日、ワシントンD.C.(Washington D.C.)で開かれた国際通貨基金(International Monetary Fund、IMF)との合同開発委員会で、空腹と貧困に取り組むための「新ニューディール政策(New Deal)」を発表し、各国政府に対し途上国の不安定化の要素となっている食糧危機に対処するよう呼びかけた。

 ゼーリック総裁は、過去3年間で食糧価格が2倍になったことで、途上国の中でもより貧しい国々に住む約1億人がさらなる貧困に追いやられる可能性があると指摘し、「空腹を抱える人々に対し食糧を与えられるよう、実際に行動する必要がある」と対策の必要性を各国政府に訴えた。
 ゼーリック総裁によると、1930年代の世界大恐慌の際に、当時のフランクリン・ルーズベルト(Franklin D. Roosevelt)米大統領が行った「ニューディール政策」同様の、世界的な食料政策として提案した今回の「新ニューディール政策」が委員会で支持されたという。
「新ニューディール政策」には、世界経済の減速が貧国に及ぼす影響を緩和するため、アフリカにおける政府系ファンド(SWF)の投資奨励などが盛り込まれている。
 さらに、世界食糧計画(World Food Program)が食糧危機対策のため早急に求めている最低5億ドル(約500億ドル)の追加資金について、約半分の拠出が合意されていることを明らかにした。(c)AFP/Veronica Smith
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 世銀総裁、食糧価格高騰への対応を呼び掛け
http://www.cnn.co.jp/business/CNN200804140030.html
ワシントン(AP) 世界銀行のゼーリック総裁は13日、世界的な食糧価格の高騰が各地で飢餓や暴力などを引き起こしていると述べ、各国政府はただちに対応する必要すべきだとの認識をあらためて示した。国際通貨基金(IMF)との合同開発委員会後の記者会見で語った。
世銀の概算によると、世界の食糧価格は過去3年間で2倍近くに跳ね上がり、途上国などで貧困が深刻化している。ゼーリック総裁は会見で、「短期的にみても重大問題だが、次の世代が犠牲になることを防ぐことも重要だ」と強調した。
同総裁は委員会で、農業生産性の向上や学校、職場を通した食糧配給などを目指す「世界食糧新政策」を提案し、承認を受けたと述べた。
飢餓などが特に深刻化しているアフリカに対しては、世銀が今月初め、農業支援のための貸与額をほぼ倍増させる方針を表明している。総裁はさらに、アジア、中東諸国などに政府系ファンドの1%をアフリカに投資するよう求める提案を示し、前向きの反応を得たという。
ゼーリック総裁はまた、中米ハイチで食糧価格の高騰に対する抗議デモが激化し、暴動や略奪が多発している状況を指摘。世銀が同国に1000万ドル規模の追加食糧支援を提供することを明らかにし、各国政府にも協力を求めた。
同総裁はさらに、国連食料計画(WFP)が食糧、原油価格の高騰で活動資金不足に陥り、5月1日までに5億ドルを緊急出資するよう、資金拠出国に求めている件に言及。「WFPから呼び掛けがあった後も価格は上昇し続けている。各国政府は対応を急ぐ必要がある」と訴えた。



 < 過去  INDEX  未来 >


石田ふたみ