『日々の映像』

2008年03月27日(木)  世界の穀物価額の狂乱

穀物価額の狂乱が続いている。
2月19日の終値で1ブッシェルあたり大豆12.6ドル、小麦10・7ドル、トウモロコシ5.3ドル。いずれもここ1年で2倍、小麦は2年で3倍にはね上がっている。

 米国産トウモロコシは07年度、エタノール向け需要が初めて輸出向けを上回った。レスター・ブラウンの「穀物争奪戦:スーパーマーケットとガソリンスタンドの戦い」にリポートされている通り「工業が食物を奪う」事態が現実化して来ている。

 エタノール問題のほかに、世界の穀物需給に重大な影響を与えるのは中国の穀物の輸入なのである。大豆の世界最大の輸入国である中国「07年度に日本の約8倍、過去最大の3400万トンの輸入を見込む」という規模なのである。

 米国のワールドウォッチ研究所(レスター・ブラウン所長)は2030年、世界は約5億トンもの穀物不足に陥ると予測している。その最大の原因は、中国の穀物輸入量が2億1600万トンに急増すると予測しているのだ。現在の世界の穀物輸出量は約2億トン。中国だけで消費してしまう計算で、世界の食料需給に中国の存在が大きな影響を与えるのである。

 中国は大豆を含めて食料の自給の向上こそ最大のテーマとすべきである。大豆を「日本の約8倍の3400万トンも輸入」するなどは、世界の食料の需給バランスを根本から崩すことになると思う。

参考記録・資料

農水省・輸入小麦、4月から30%引き上げ
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20080219

穀物争奪戦:スーパーマーケットとガソリンスタンドの戦い
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20070227

トウモロコシ・サトウキビで車が走る 
http://www.enpitu.ne.jp/usr2/bin/day?id=22831&pg=20050614

食料危機は来るか
http://www.maff.go.jp/soshiki/koukai/keikaku/den-en/pamphlet/yutaka/b02/b02.html

 



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穀物マネー狂乱 家計を直撃
2008年03月20日

小麦などの穀物が高騰している。新興国の需要増とバイオ燃料ブームに加え、大量の投機マネーが価格を押し上げる。日本ではこの春、食品の値上げラッシュだが、こうした傾向は当面続きそうだ。
「高くても日本が買う」
 世界の穀物価格を主導する米国の商品取引所。春小麦市場は、品不足の中、1月末から11営業日連続で値幅制限の上限へ値上がりする「ストップ高」になり、「狂乱相場だ」と関係者を驚かせた。「いくら高くても日本が買う」とのうわさも飛び交い、2月25日には1ブッシェルあたり25ドルと、例年の5倍に達した。
 大手商社の米国担当者は2月下旬、取引先から「春小麦は高騰が早すぎて価格がつけられず、売れない」と告げられた。
 日本の農水省が買い付けた小麦を製粉業者へ払い下げる価格は4月に3割の値上げが実施されるが、市場価格の上昇幅ははるかに上回る。商社担当者からは「次回の価格改定がある秋にも大幅な値上げは避けられない」との声が上がる。
 相場を連日押し上げる主役のひとつがファンドマネー。サブプライム住宅ローン問題で株式市場が低迷し、小麦など価格上昇が見込める商品市場への資金流入が加速した。企業年金や生命保険などが経済指標に連動して運用する「インデックスファンド」。先物取引市場で売られた小麦の約35%はインデックスファンドが保有する。
 小麦が06、07両年に豪州など主要産地で不作に見舞われたことが高騰のきっかけだったが、より影響が大きいとされるのがバイオ燃料の元となるトウモロコシ。手厚い補助金を追い風に、世界が頼りにする米国産トウモロコシは07年度、エタノール向け需要が初めて輸出向けを上回った。エタノールに価格競争力がついており、「工業が食物を奪う」事態が現実化してきた。
 トウモロコシの生産が拡大した結果、小麦や大豆などの作付けが大幅に減り、穀物高騰の連鎖が始まった。
 シカゴ商品取引所では、主要穀物すべてが高騰している。19日の終値で1ブッシェルあたり大豆12.6ドル、小麦10.7ドル、トウモロコシ5.3ドル。いずれもここ1年で2倍、小麦は2年で3倍にはね上がった。日本では、パスタやカップめんから、マヨネーズ、ジュースに至るまで食品の値上げが止まらない。
 特に心配なのは生産が落ち込んだ大豆。07年度末在庫率は4.6%と、約半月分しかない歴史的な低水準となる見通しだが、大豆には世界最大の輸入国・中国の存在がある。中国は07年度には日本の約8倍、過去最大の3400万トンの輸入を見込む。「穀物が耕地を奪い合い、減産が見込まれるとすぐに高騰する状態は続く」と住友商事の担当者は話す。
 ■商社、自前集荷強化へ
 日本への穀物買い付けを担う各商社も、海外で安定供給に向けた投資を急ぐ。いま力を入れているのが、外資に依存しない自前の集荷能力の向上だ。
 飼料輸入シェアで最大手の全農は、米国トウモロコシの穀倉地帯・中西部にある集荷業者2社を買収した。穀物メジャーによる独立系業者の買収が相次ぐ中、「今決断しなければ、来年は売り手がないかも知れない」との危機感が背を押したという。
 三菱商事も、オハイオ州にある集荷業者を子会社化した。乱高下する相場に対応するための資金繰りが中小の集荷業者にとって負担になりつつあることから、「資金力のある商社が強みを発揮できる」(同社)とみる。
 日本企業で数少ない、100%出資の小麦集荷網を持つのが丸紅。米西海岸に近いポートランドの輸出基地では11万トンの貯蔵設備をさらに2.7万トン、増設する計画が進む。
 ブラジルの穀倉地帯、バイーア州などで計約10万ヘクタールの農場を経営する現地大手、マルチグレーンに、三井物産が25%を出資した。商社が農場経営に直接関与するのはあまり例がないという。

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石田ふたみ