『たんぽぽクレーター』のシリーズの一冊。 年末の買い物に出たついでに、ブックマーケットに寄り道し、 この本を見つけて手にとってしまい、持っているくせに買って帰って 忙しい最中に再読してしまった。そして読んで涙しました。
『たんぽぽクレーター』『ものまね鳥シンフォニー』『火星に捧げるデュエット』 そして最長編の『空の上のアレン』も同じ時系列のお話です。 それぞれの作品が深く関わりあっているので、それぞれ独立した話としてもよめますが 全部読むと、味わいも深くなります。
『小さき花や小さき花びら』を最初に読んだ時には、『たんぽぽクレーター』しか 読んでいなかったので、ハイファイのことを知りませんでした。 ハイファイはサイボーグで、サイコキネシス(念動力)を使って仕事をしていました。 地球で息をひきとったあと、月のたんぽぽクレーターの丘の上に埋葬され、 墓碑銘の変わりに一本のアメリカ杉が植えられました。 ハイファイの残留思念がたんぽぽクレーターを優しく包み、 一人で泣いている子供や、友人達をなぐさめてくれます。
やさしい絵と語り、空を飛ぶ子供達。木の葉をゆらす風や、月から見る青い地球。 それにもかかわらず、お話には甘いところはみじんもありません。 『小さき花や小さき花びら』はニューヨークがミニ水爆で破壊されたという設定になっています。 (今回、911をちょっと連想してしまいました。) たんぽぽクレーターは放射能に被爆した子供達の治療施設。 マック院長でさえ、自分の力の限界にどうしようもなくなってしまう、 それでもぎりぎりのところで、希望はあると作者は言っているようです。 まるでハイファイの残留思念のように、作品を読んだ後に暖かいものが残ります。
シリーズの他の本を読もうと思ったけれど、引越し以来、本が未整理ででてこない・・・ 筒井さんの本は絶版になっていて、本屋さんで手にとることはできませんが、 『たんぽぽクレーター』は、復刊ドットコムで交渉中だそうです。
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