TOP 最新の記事 戻る≪ I NDEX ≫進む


漫画関連ファイル


2003年01月01日(水)
『小さき花や小さき花びら』by筒井百々子

『たんぽぽクレーター』のシリーズの一冊。
年末の買い物に出たついでに、ブックマーケットに寄り道し、
この本を見つけて手にとってしまい、持っているくせに買って帰って
忙しい最中に再読してしまった。そして読んで涙しました。

『たんぽぽクレーター』『ものまね鳥シンフォニー』『火星に捧げるデュエット』
そして最長編の『空の上のアレン』も同じ時系列のお話です。
それぞれの作品が深く関わりあっているので、それぞれ独立した話としてもよめますが
全部読むと、味わいも深くなります。

『小さき花や小さき花びら』を最初に読んだ時には、『たんぽぽクレーター』しか
読んでいなかったので、ハイファイのことを知りませんでした。
ハイファイはサイボーグで、サイコキネシス(念動力)を使って仕事をしていました。
地球で息をひきとったあと、月のたんぽぽクレーターの丘の上に埋葬され、
墓碑銘の変わりに一本のアメリカ杉が植えられました。
ハイファイの残留思念がたんぽぽクレーターを優しく包み、
一人で泣いている子供や、友人達をなぐさめてくれます。

やさしい絵と語り、空を飛ぶ子供達。木の葉をゆらす風や、月から見る青い地球。
それにもかかわらず、お話には甘いところはみじんもありません。
『小さき花や小さき花びら』はニューヨークがミニ水爆で破壊されたという設定になっています。
(今回、911をちょっと連想してしまいました。)
たんぽぽクレーターは放射能に被爆した子供達の治療施設。
マック院長でさえ、自分の力の限界にどうしようもなくなってしまう、
それでもぎりぎりのところで、希望はあると作者は言っているようです。
まるでハイファイの残留思念のように、作品を読んだ後に暖かいものが残ります。

シリーズの他の本を読もうと思ったけれど、引越し以来、本が未整理ででてこない・・・
筒井さんの本は絶版になっていて、本屋さんで手にとることはできませんが、
『たんぽぽクレーター』は、復刊ドットコムで交渉中だそうです。