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2000年09月14日(木)
『雨になればいい』

しとしとと雨が降り続く中、娘達は絵の教室に傘をさして歩いて行った。
少し前までは、わずかな距離でも車で送り迎えしていたものだけど、
さすがに3年生と5年生になると、もう大丈夫な気がする。
2時間ほどして、姉が帰って来た。
「あれ?まだ帰ってないの?先に先生の家を出たのに…」
妹の方が先に帰ったというのに、まだ家には着いていない。
「どこかで寄り道しているのかな?」
と、窓の外を見るが見渡せる限りの並木道に人の気配はない。
「変だなあ。」

絵の教室から家まではほとんど一本道なので、迷いようがないし、
雨の中、寄り道のしようもない。
「ちょっと見てくるから、家に帰ってきたら携帯に電話して」
と言って外に出た。

雨は小ぶりで少し肌寒い。並木道の歩道を歩いている子供はいない。
どこかの用水の水の流れでも覗き込んで時間をつぶしているのかしら。
先生の家に忘れ物でも取りに行ったのかしら。
そうこうするうち、先生の家に着いた。でも、いなかった。

ここで本格的に心配になってきた。
人目のない住宅街で車にでも連れ込まれたらどうしようもない。
誘拐でなくても、変なのにつかまってたら大変だ。やっぱり迎えにいけばよかった、、、
昨日読んだばかりの『雨になればいい』を思い出してしまう。
あれは本当に怖い話だな。親にとったらたまらない。
救いがないわけじゃないけれど、ぎりぎりの狭間をねらっていると言ったら言い過ぎか。
『ペット・セマタリー』もそういえば、そうだった。

家に帰って警察に電話するべきか、もう少し待つかと逡巡してると、
見慣れた黄色い傘がこちらに向かってかけてくる。
「どうしたの!」と思わず大声を出してしまった。
「あのね、今日はおねえちゃんの誕生日だからね。プレゼント買ってきたの。」
「黙って行ったら心配するでしょ。」「でも、内緒で行きたかったの。」

ああ、よかった。何もなくて。
何もない日常は何よりも幸せなことなんだ。
これまで雨に打たれた子供達のことを思うと、心のどこかが
ちくちくと痛むような気がする。子供達の両親の心は休まることがないと思う。
そんなことを思った雨の一日だった。