2、3年前に描かれた短編を集めた本です。 収録作品は『砂の上の楽園』『僕は旅をする』『雨になればいい』『夜の森の底に』 表紙が異国風で、いったいどんな話か見当がつかず、 買おうかなどうしようかなあ、と思っていましたが、 読んでみたらさほど違和感なく表題作も楽しめました。 『砂の上の楽園』は長編読みきりにするには惜しいようなストーリーとキャラクター。 ああ、もったいない、いくらでも伸ばして話が作れそうなのに。 砂漠のオアシスの描写の一こまが、どこまでも丁寧に描かれているので もう少しゆとりがあったら、その場所にトリップできそう。
子供の頃は、わずかな描写で十分その場所に入っていけたものだけれど このごろでは、それが難しいのはなぜでしょう。熱中して読んでいてふと気がつくと 自分の部屋だった、、、みたいな読み方はなかなかできなくなってしまいました。 でも、この本はちょこっと、その感覚を呼び戻してくれるような場所がいくつかあって お買い得だったわ。
表題作以外の3編は、こわい。 『百鬼夜行抄』じゃないのにこわい。 弟がふっといなくなったあとの、部屋の描写を淡々と描かんといてくれ と言いたくなってしまう『僕は旅をする』 このあといったいどうするんだ〜という所で終わっている『雨になればいい』 たっぷり満足できる『夜の森の底に』 私は最後の話が、なぜかとっても気にいって何回か読み返しました。 ちょっと『ひいなの埋葬』を思い起こさせるシチュエーション。 いろんなものが盛りだくさんにつまってる怖い話。
「グレンスミスの24ページの呪い」(←今市子特集号より)は、 けっしてマイナスに働いているんじゃなくて、いつかあれくらい短くて深いお話を描くという 決意になってるんじゃないかしら。
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