TOP 最新の記事 戻る≪ I NDEX ≫進む


漫画関連ファイル


2000年03月22日(水)
少女まんがの世界展

全国11ヶ所の美術館を、2年9ヶ月かけて巡回してきた
「少女まんがの世界展」も福井で最後です。26日(日)まで。

池田理代子、大島弓子、木原敏江、成田美名子、萩尾望都、美内すずえ、山岸涼子、羅川真里茂
8人の漫画家のカラー原画と白黒の原稿、276点。
まんがの原稿を美術館で見るって、どんなものかな、と思っていたけれど
質量ともに充実していて、おもしろかったです。

まんがは、多かれ少なかれ現実をデフォルメしたものだから、
こんなふうに、白日のもとにさらされているのを見ると、気恥ずかしかったりする、
という気分が私にはありますが、
今回の展示は、それぞれの漫画家さんの気迫というか、オーラみたいなものが
感じ取れて、十分存在感があったように思います。

池田さんの人気が絶頂だったころのカラーイラスト。オスカルを間近に見て
30年前のどきどきを思い出してしまいました。
バスティーユでオスカルが撃たれるページの原稿からは
全国の読者の悲鳴が聞こえるようです。(当時のことを知らない人には意味がないかしら?)

美内さんのカラーの配色は、う〜むとうなってしまうのだけれど
(ピンクと紫と黄色と青を同時に平気で使わないで〜とか)
それでも原画はきれいだった。この配色さえもがこの人のパワーなのね、って思いました。

木原さんは、どこかバランスのとれない危うさを感じてしまうのだけれど
それでも、摩利と新吾のイラストには、魅力があふれていると思う。
ちょっと展示の数が少なかったかしら。

成田さんはうまかった!構成、配色、バランス、技法、仕上がりの美しさ、どれをとってもすごい。
、、、でも、深みに欠けるのはなぜ?イラストレーターの作品のように美しい背景だけれど
もしサイファ達が画面にいなかったら、イラストとしては成り立たないと思う。
完成度の高さと内容の薄さにううむとうなってしまいました。イラストの中の空気は
とても好きです。

大島さんのチビ猫を最後に読んでから何年たっただろう。
軽く10年くらい再読していないような気がする。でもイラストを見て思い出してしまった。
ふわふわした感触や、自然な会話やいろいろなものを。
一枚の絵として見た時に一番まとまっているのは大島さんのイラストかもしれない。
さらさらと何の苦もなく描いたかのように見える漫画の原稿も、素敵。
チビ猫のやわらかい世界が、時間がたつにつれて、硬い手触りのギリギリの瀬戸際に
立っているような世界になっていったような気がするのですが、、、今はどうかしら。

萩尾さんの原稿を見て、ホワイトをさっといれた筆の感触まで、
指ではじいた勢いまで、好き!と思ってしまった私は、ただのミーハーのファンでした、、、
線の一本一本が愛しい、、、と、わずかな白黒原稿を見て再確認いたしました。
カラーはきれいだけど、この色合いは印刷に出にくいかもしれない。
「テレビでいっしょ」という雑誌に載ったというイラストがきれい。
こんな雑誌しらないぞ。

山岸さんの原稿はすごい。カラーも白黒の点描も。
どの絵を見ても、「この人には何かが欠けている」という感じがする。
描かれる人物にも何かが欠けている。それが欠点になってなくて、欠けたまま
堂々と存在できるまでに昇華された感じがして不思議。
もしかしたらバランスのとれた円満な人生ではないかもしれないけれど
普通の人たちには見えないものが見えるんだろうなあ、と思いました。
押さえた色調の精緻なイラストは絶品でした。

図録はまだゆっくり読んでいないのだけれど、学芸員の方々による漫画の解説は、
わかっているものもあり、全然わかってないものもあり、ぱふや評論家のうけうりやまる写しもあったりで、
内容のレベルは高くないです。
会場のイラストについてるタイトルや初出には間違いがけっこうあって、
ちゃんと漫画のこと知らないんだなあ、という感じでした。
(きちんとした監修をつけるべきだ)

あああ、暴言大魔王してしまったかしら。でも根っこにあるのは愛です。多分。