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■■ 月夜の騎士087完結
8月どころか九月も終わりに差し掛かってまいりました。……お待たせしました……。
盗賊と城・種明かし編は、やたら長くなってしまいました。 しかし本当は、もっとイロイロ入る予定でした。レオ君がにんげんふしんになったり、エル君が相当な悲惨っぷりを匂わせたり。 それらを削ってこの長さ……です。
削りまくったエピソードの中で、阿呆なものがありますので、以下にのせておきます。
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「契約成立してるのに、村人虐殺! とか後味悪いし」 「……虐殺などしない」 「いや、ヘタに刺激したら向こうが襲ってきそうだったからさ。報酬貰っといて返り討ちってのは、ねえ? ちなみにオレの買値から六割貰ったんだけど。さすがにちょっと変な感じだったなー。賊さんは髪切ったら解放するとか言ってたけど、実際そんなわけないしねー」 急に饒舌になってどうでもいいことを話し始めたエルを、レオは目を眇めて見る。そのまま早足で近づいていくと、どことなく、エルが目を逸らしていた。 「それで、どうして賊を選別して、村まで連れて行ったんだ?」 「…………」 「どうにか、というのは、誰から受けた依頼なんだ」 もはや完全に視線をあさっての方向に向けて、エルはしばし口を閉じる。レオも、口では追求せずに眇めたままの目で見続ける。 そこに、ぐぐぅ、と腹の音が響いた。 「すべて隠さずに話したら、飯を奢るが」 「…………」 「燻製だが肉があってな。これが最高級種とうたわれる東部山岳地帯産レホド牛の中でも選び抜かれた一級種の肝臓と舌で、特に舌は、口に入れただけで肉の旨味が……」 再び、腹の音が大きく響く。 「昼には少し早いが、そろそろ飯にしようかな。一人で食べるが悪く思うなよ、レホド牛」 「……こ、の、金持ちがっ! 話せばいいんだろ!」 エルは自分の腹に屈した。 レオは満足して、エルはぷりぷり怒りつつ腹を鳴らしつつ、道端に腰を下ろす。 思えば、夜から何も食べていないので、少し酷いやり方だったかもしれない。レオは反省して、エルに先に肉を渡すことでそれを示した。 「あ、ちょっ! 全部食うやつがあるか! 吐け! 戻せ!」 そして、すぐに後悔した。 恐るべき速さで舌の燻製を食い尽くしたエルに掴みかかるが、エルは至福の表情で口を押さえて抵抗する。……まあ、吐き出したところで食べる気にはなれないだろうが。 ふてくされて肝臓を齧り、レオは、そのとろりとした食感に癒された。機嫌を直して、すでにほとんど飲み込んだエルを見る。 「ハイハイ、話すよちゃんと」 水で喉を潤してから、エルはふうと息を吐いた。 「ああ美味かった。高級肉最高。……で、賊をどうにかってやつだけど」 レオは相槌を打ちつつ、肝臓をもう一口。美味い。
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お分かりの通り、最後の説明に入るための流れの案 その一でした。 これを書くためにわざわざ燻製肉通販サイトで美味しさチェックをした私は……たぶん、腹が減っていたのでしょう。
どうでもいい設定ですが、高級肉燻製とか豊富な旅費とかが示すように、レオ君もともとはお金持ちの子でした。こっからが彼の金銭的転落人生の始まりです(ニヤリ)
2007年09月23日(日)
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