声。気持ちの良い声。

高校だったか中学だったか忘れてしまったが
体育の先生が暫くお休みをしたことがある、らしい。

らしい、というのは、いつのことか忘れているくらいだから
代わりの先生が来たことは覚えていても
「誰の替わり」だったかわからないからだ。

誰の替わりだったか、もちろん覚えていないし、
その先生の名前も顔も忘れてしまった。

ただ、頭の芯が痺れるような
ぼーっと神経が麻痺してしまうような

そんな感じの声だけはハッキリと覚えている。

ものすごく心地よかった。
「眠かった」のとは全然違って
もっと聞いていたい、ずっと聞いていたいと思う声だった。
ものすごく気持ちよかった。

「良い声」だったか、と訊かれると、実はよくわからない。
物静かな喋り方と、頭の中をそっと撫でられるような、
それも、子供の頃親に撫でられて気持ちが良かった時みたいな
そんな穏やかで優しい声が、一種独特の気持ちよさだった。

漠然とした記憶では、顔立ちはほとんど覚えていないが
かーなーりー額の広い冴えないオッサンだったと思う。
それなのに、その先生の保体(保健)の授業がすごく待ち遠しかった。
数えるほどしかなかったのだが。

当時友人に確認したわけではないが
みんなのその先生に対する評価は概ね中の下というところだったし
「良い声だね」というコメントも聞いた覚えがないので
おそらくそんな風に感じていたのは私だけなのだろう。

何故急にこんな事を思い出したかというと、
平沢進のソロアルバムを友人に聴かせて貰ったら
ものすごく気持ちよかったからだ。
P-MODELと全然違う雰囲気の曲が揃っていて
ヘッドフォンで聴いていたら、もう全身の力みが抜けてしまって
本当にふわぁっといい気持ちになった。


ああ、気持ちの良い声だなぁ!

そう思った途端、ずっと昔に聞いた先生の声を思い出していた。

声が良いって、得だよねぇ。
平沢進を聞きながら「この囁くような歌が、あの声なら」と
見果てぬ夢を見たのだった(爆)

2001年10月16日(火)

花のもとにて / しっぽ

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