ことば その2 感覚

日本語が乱れているという。
乱れている、だろうと思う。

しかし、乱れているぞと大きな顔で指摘するほど自分の日本語に自信がない。
そりゃそうだわ、知識量が少なすぎるもの。
これで自信なんか持たれちゃかなわないわな。
いや、自分のことなんですけどね。


大学の時に下宿していた部屋は、大家さんの自宅と壁一枚だった。
電話は呼び出しで、電話の鳴る音まで聞こえ、
壁をドンドン叩いて「海乃さーん!電話ですよー!!」と
文字どおり大声で呼び出してくれるのだった。

この家では犬を飼っていた。
餌をやるのは息子の役目だったらしい。毎日毎日お母さんの声が聞こえる。
「キョウスケ!犬にごはんあげた?」
毎日同じことばで同じ質問をする。(叫んでいるんだけどね)
これが心底不思議だった。
ペットに「ごはん」「あげる」という所を見ると
その犬は人間と同列に扱われているのであろうと思われ、
大層溺愛しているように感じられるが、しかし
大家さんは決してその犬を名前で呼ばなかった。
必ず「犬」と言うのだ。
…大事にしている訳じゃないんだろうか。

それとも「名前で呼びたくない理由」でもあるんだろうか。

未だに謎のまま、今後も永久に解決しない素朴な疑問だ。
2001年10月12日(金)

花のもとにて / しっぽ

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