私季彩々
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ベランダに出て爪を切ってみた。
今時だと爪が飛ばないような仕組みになっているけれど、手元にあるのはどこかの会社の名前が入っている景品のような爪切りだ。そんな凝った物はついちゃいない。で、ビニル袋に手を突っ込んで切ると結構いろんなところに飛び散ってしまう。時には目に飛び込んでみたり、なかなか手強いものである。 昔は新聞紙を兜を作るような三角錐を作ってその中で爪を切った。切った爪は父の灰皿の中に捨てた。父がタバコを吸って灰を落とすと爪の焼ける匂いが広がる。いつしかその匂いを父が嫌って、離れたところにあるごみ箱へ捨てるようになった。めんどくさいなぁと思ったが、その匂いが髪の焼ける匂いと同じことに、後になって気がついた。死の匂いに繋がった。
回収してごみ箱に入れる必要がないというのは何とも楽な事だ。使い捨て全盛のこの世の中で、捨てる必要すらないというのはなんとも豪気ではないか。なぁにそんなもの、どうせ土に帰るんだ。気にするこたぁない。 そう考えると生ごみにしろ、糞尿にしろ、生き物の姿は土と海の背景を持っているわけで放って置けばいいわけだ。問題なのはその量と質。 そう簡単にことが運ばないことは、目の前に広がる高層マンションの姿が象徴している。今の私にはこの爪ほどの繋がりしかない。 けれどその向うに手稲山の姿が広がっている事もまた確か。そのくらいの不便は事の本質を知ると言う事で、現代では尊いともいえるでしょう。
肉を焼けばかぐわしき香りがする。それはいい。 では、自らの爪を、髪を。自分の一部が燃えるということがどのようなことか。アロマテラピーに凝る前に、その匂いを知ることもまた大切なことではないだろうか。
爪を切り髪をも切りて火をつける 吾の燃ゆ匂い 知りて生きんと
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