私季彩々
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山からおりて疲れが出たのでしばらく車の中で寝ていた。虫がぶんぶんとフロントガラスにぶち当たってたけどしばらくたっておさまった。起きた時には車は大分減っていた。帰りは悪路だから明るいうちにと車を走らせた。慎重に走ったつもりだったけど何度か底をすってしまった。
ようやく舗装路にでると文明のありがたさがわかる。エセナチュラリストは健在だ。緩やかに下っていると道の真中に何か黒いものが。石にしては妙にやわらかそう。するといきなり軽く飛び立ってまた道に降り立った。 鷲だ。そんなに大きくはないけれどそれでも1m近い。悠然とど真ん中でこちらを見据えている。どくのはおまえらだといわんばかりに。まったく逃げようともしない。車をとめて写真を撮ろうかと思ったが山中で電池を使い果たしてしまった。でもこんな近くで鷲を見る機会などそうはない。独り占めの光景にほくそえみつつ王者の前にひれ伏していた。
すると後ろから車が猛スピードで突っ込んできた。しかたなく道を譲ると邪魔そうに追い抜いていく。その瞬間鷲は翼を広げて飛び去った。車は一瞬たじろいだようだったがそのまま通り過ぎていった。 小鳥のように飛び立つのではなく”失礼な!”とでもいうようにゆっくりと舞い上がっていった。羽の一振りで周囲の空気を従えるように浮かび上がった。それから空高く舞い上がり木の枝に舞い降りた。その後姿を消した。
あたりは何も変わらず静か。幻でも見たかのように。
凛とした風格をもつ生き物にはそうは会えないものだ。それはやはり近くで出会いたい。これ以上近づいてはいけないと思わせるぎりぎりのところで。 今塩野七生著”ローマ人の物語”を読んでいる。鷲は確かローマ軍旗の紋章。皇帝の列伝を読んでいるとあの鷲をおもいだした。 凛とした人に出会いたい。この時代には難しいようにもおもえるけれど。その視線だけで全てを見据えてしまうほどの器量に憧れてしまったのです。
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