KALEIDOSCOPE

Written by Sumiha
 
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  3/感情を言葉で表す難しさよ(溜息)


2003年06月01日(日)
 



一昨日の続き)

 どこまで行くのか。
 魔道士協会とは反対方向だ。人の流れに逆らい大通りを直進している。
(調べものでもなく聞き込みでもないようですね)
 足取りに迷いなく、とうとう町から出てしまう。まだ歩みは止まらない。街道に沿って行くのかと思いきや脇に逸れる。どうやら町の中からも見える小高い丘を目指しているようだった。
 一度として振り返らない。ずんずん先へ進む。まるで一人で行動しているようだ。ゼロスの存在を無視している。
 気付いていない訳ではないだろう。ゼロスは足音も気配も殺していない。のんびり後に付いて歩いている。特に急ぐでもなく。後ろ姿が見える距離を保ち。
 景色が変わる。雑草以外なにも無い平地から木々の生い茂るなだらかな坂道へ。
 丘を上るとようやっと立ち止まった。辺りを見回し手近な木に体を預ける。遠目には木にもたれ眠っているように見える。
(……もしかしなくても、これは)
 勘違いだったのか? しかし意味もなく自分を見ていたとは思い難い。彼女が視線に気付かれていないと思いこんでいたなら、それは慢心だ。とんだ見込み違いの人間だったという証明だ。
 ならば――――。
 表情が見える位置で足を止める。彼女は目を閉じていた。
 まさか本当に眠っているのではあるまいな。
 ゼロスは疑念のままに眉根を寄せた。
「こんなところまで呼び出して僕に何の用ですか」
 声が尖っていたかもしれない。自覚する余裕は無かった。
 女魔道士の唇が弧を描く。
「あたしは呼び出したつもりなんかないけど?」
 リナの声は対称的に明るかった。からかいの色を含んでいる。
 さすがに寝てはいなかったらしい。目は閉じているが意識がこちらにしっかり向いている。
 少し落ちつきを取り戻した。
「付いて来て、なんて言ってないし。来たのはあんたの勝手。そうでしょ」
 反論しようと思った矢先に言われた。正論なだけに言い返せない。
 これでは意味ありげな視線は何だったのかと問うてもまともな答えを期待できそうにない。見てないわよと一蹴されるか、見ちゃいけないのと言われるか。
 恨みがましげな目を向けても目を閉じている彼女に見えない。
 口には出さず心の中で唸る。手の平で踊らされているようで気に食わない。
 町に戻ったところで暇だ。かと言ってここに留まるのもなんだか癪に障る。どうすべきか。付いて行くと決めた時より簡単に答えを導き出せそうになかった。
「まあでも」
 紅の瞳が開かれる。
 何故だろう。動けない。憤りも迷いも一瞬にして消え去ってしまった。
 まっすぐな眼差しに射貫かれる。
「どうせ来てくれたんだし? 番犬してて」
 ……確信犯だったらしい。
 はじめから彼女曰くの番犬をさせる為に、わざわざ意味深な視線を寄越したり無言で誘ったのだ。言葉に出さなければ言質を取られない。
 確かにここへ来たのは全てゼロスの意思である。誰も強制していないのだから。
 ゼロスは力無くその場に座りこんだ。
「なんですか番犬って」
 大凡の予測はできていたが尋ねずにいられなかった。
 よりにもよって魔族である自分を、しかも獣神官という実力に伴った肩書きを持つ純魔族を番犬呼ばわりか。
「このごろ寝不足なのよね、あたし。ここでちょっと寝てるから見張り役お願いね」
 邪気の欠片もありませんという笑顔を向けられる。
 無性に腹が立った。
「――僕が」
 手の中の錫杖を振り上げる。リナは動かない。
 ざんっ。
 一筋の赤い線がつっとリナの頬に走った。ゼロスの錫杖の先が掠ったのだ。錫杖はリナの顔のすぐ横、地面に突き刺さっている。
 ゼロスは錫杖を支えにぐっとリナに顔を近づけた。
「その隙にあなたを殺すかもしれないとは考えないのですか」
 彼女は無防備に微笑う。ゼロスの本性を知らぬ訳ではないのに恐れず話しかける。親しい友人相手だとでも言うように。
 馬鹿なのか、それとも本気で殺しはすまいと高を括っているのか。
 何を考えているのかわからない。真意が見えないから苛立つ。
 魔族を相手にしていると理解しているのか、本当に?
「殺したいの?」
 笑うでもなく、怯えるでもなく。奇妙なセリフを聞いたと心底驚いた顔で逆に問われた。
 何の疑いも持っていない。何を信じているのだろう。何が殺されないという自信の根拠になっているのだろう。
 ゼロスは応えない。
 殺せるか殺せないか、という問いならば至極簡単に答えを導き出せる。答えは殺せる、だ。彼女が生きていようが死のうが何とも思わない。命令が下れば躊躇わない。命令が無いから殺さないだけだ。
 ならば、殺したいのか、殺したくないのか。己が心情を尋ねられると――――。
 不意にリナが笑った。
「あんたはあたしを殺さないわ」
 殺せない、ではなく、殺さない。
 彼女は理解していたのだ。いつ何時殺されてもおかしくないと。ゼロスが殺す気になれば今この瞬間に命の奪い合いになってもおかしくないと。
 ならば何故。
 まったく警戒せずゼロスの前で寝ると宣言できるのか。
「必要が無いでしょ。あたしを殺したって無意味だから放っておく。違う?」
 あっさり解答を目の前に提示された。
 呆然と至近距離にあるリナの顔を見つめた。
「んじゃ、そういう訳でちゃんと番犬しててね。夕暮れ前に起こして」
 話は終わったとばかりに言うだけ言って目を閉じる。
 相当、眠かったらしい。寝息が待つ程の間もなく聞こえてきた。
 いつまでも顔を覗き込んでいても仕方ない。錫杖を抜き取り近くへ改めて腰を下ろす。
 必要が無い。殺しても無意味だから放っておく。
 だから、生かしておく。
 殺されないという自信の根拠は、彼女が信じていたのは。他ならぬゼロス自身だった。
 ――――これは信用か信頼か?
 ゼロスはややして苦笑を面に浮かべた。
「どちらにしろ嬉しくありませんね」
 風が独り言を掻き消した。



――終。

稿了 平成一五年六月一日月曜日





ぃよッしゃ終わったー!(笑)(妙な開放感と達成感) 最初ゼルリナで書こうと思ったってのは秘密v(バラしてんじゃねえか) その内ガウリナやゼルリナで書くかもしれん。でもお題目が同じだったらつまらんな。……うーむ。ゼロリナが一番か。このお題目は(私が書くという前提)。しかしものごっつ久々にゼロスを(真面目に)書いたから口調がわからなくて苦労した。……レゾみたい。(禁句!)ですます体のキャラクターの書き分けって難しいですわよ奥様!(誰)

原作でもTRYでもOKなよーに書いてみました。原作なら6巻後(=ゼロスが魔族であるとリナが読者にバラした巻)、TRYならヴァルガーヴに狙われてる時。表現がかなり規制されたので(原作6巻とアニメのTRYじゃ時間軸にかなり違いが。汗)書くのが難しかった。その分、楽しくもありました。ゼロリナはたまに書きたくなりますね。年に一回とか二回くらい。つまりあと半年以上は書く気にならんつーことか。書く気になっても書かない時もあるし書いても表に出さなかったりするし。貴重だね私のゼロリナ。(笑)おかしいな昔はゼロリナが一番好きだったのに。

原作6巻後だと思って読むと矛盾点が出てくるんですが。気にしないで下さい。だってリナがゼロスのテストに不合格だったら、ゼロスってあっさりリナを見殺しにするか護り導く価値など無しと判断して殺すかしそうだなあと思って。フィブには所詮人間、と言えば終わりだし(ぐちぐち嫌味言われるかもしれんが)。言い訳言い訳。

これの総目次はサイトの正式後悔、もとい公開日の日記にあります。まだ05しか書いていないのだよ明智君(アンタ誰)。



BGM
鬼束ちひろ
流星群
Fly to me


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とあるサイト様でギャグのリナゼルを読みました(註:ゼルリナではありません)。ヘタレなゼルラブ。こんな私は駄目ですか(ダメです)。ギャグ書くならアニメも使えるです。ゼルも馬鹿だから(毒)。つかアニメになると全体的に皆様馬鹿になりますね。姫が一番キャラクター壊されているので他のキャラクターの壊れはあまり目立ちませんが。

……反転部分は毒です要注意。毒イヤンな方は読んじゃイヤン。ところで上記BGMを聴きながらギャグ読むのってどうなんだ。


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ありゃりゃ。半ば予想できていたことではありましたが(つか寧ろ良くここまでもったなというのが正直な感想)。3nopageさんがサービス終了だそうです(ひょっとしなくても情報遅い?/汗)。うむむ。リナ100を3nopageさんの鯖に置いているので、近日中にどうにかせねば。ということでリンクしてくださって(いてこちらでリンクを確認してい)るサイト様、近々移転の報告に参りますー。ご迷惑をお掛け致します。

何故だか夜中〜朝陽が顔を出すまで今日は月曜だと信じていた。なんでだ?


BGM
鬼束ちひろ
月光
Arrow of Pain


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バレバレだと思いますがラストシーンが書きたかったのです(↑の小説)。予想外に長くなってしまった。誰ですか短いじゃんと的確な(……)ツッコミ入れたのは。これでも長いのですよ!(笑) 他のお題はどうしようかな。レゾリナで書けるのあるかな。ジェイドリナも書きたいんだけどな(笑)。

ジェイドリナってレゾリナ以上にマイナーのような気がする(気がするだけじゃなくて事実マイナーなんだが)。うーん駄目かなー。かなり好きなんだけど。サイトに置いてある時間シリーズ、昔書いた話ながら結構好きです(昔書いた話はもう殆ど読み返すのも嫌なほど稚拙ですが。あれは別。好きv やぱし稚拙なことに変わりないですけども)。ムー。他の話も書いて布教に努めるか。あとヴァルリナv 長編ではなく短編を五本くらい書きたいにゃー(その前に長編の続き書けよ)。シリアスと微甘を。どっかからネタの神様降ってこないかな(笑)。
 



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