ぼそっ・・と独り言
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2005年03月28日(月) 調味料

ケミカルは、日々メカニックやカスタムをしているが、それでも常々大切なものだと感じている。

どんなに良いシールでも、ガスケットでも、高価な製品でも、ケミカルの使い方を知らなければ、その製品を生かしきれない。メカニックにとってのケミカルの使い分けや使い方を知る事とは、最も先に習得しなければならない項目かもしれません。

ネジ1つ取ってみても、奥が深い。

取り付けた時には普通に締めたはずなのに、今度緩める時は何故 ネジが絡む(ナメる)のでしょう?

それはネジが伸びるから。

きつく締めれば折れなくてもネジは伸びてしまいます。
それが何度も繰り返されれば、次第に伸びたところはピッチが変化。変化したピッチは言わば「ネジ違い」
当然 緩める時にネジは折れたり、ナメたりします。ネジ違いな所を通そうとすれば、引っかかるから当然でしょ?
それがネジの中で起こってしまうから、それを取り出す時は非常に大変です。それの修復はもっと大変。

よくあるのが、ツインカムのシリンダーヘッド。プラグが入るスレッドが厄介物。
普通にプラグをつけたはずなのに、外すときに大変な目にあうこともよくあります。
ヘッド側のスレッドのピッチが変化してしまい、「ネジ違い」が発生。

一度こうなると、外すときにこの変化に気が付き潤滑剤を流し込んでも手遅れ。
プラグのスレッドとヘッドのスレッドが激しく噛み、ネジを破壊しながらでも、
無理やりプラグを外してしまわなければ、仕方ありません。

こうなると、修復にリコイルを使うが、これもまた紙一重な作業。
メカニックの力量が試される。なんて、見てる方は楽観的でいいですね。
できるならば、リコイルなんて使いたくはありません。
もし、リコイルまで失敗してしまうと、もう後が無いから。
まさに崖っぷち。

雨ざらしに乗りっぱなしで全く手入れしないハーレー(バイク)の整備も、これまた大変。
至る所、ネジがサビで固着しているのです。特にフェンダー裏やマフラークランプなんて酷い錆。
少し緩んだら、一度締める。 これを繰り返し最後はトラブル脱出。
そう出来ない方々は必死で緩める、緩める、緩め・ ・ ボキッと折れる。
なんだ〜このボロボルト!ではないんです。やり方が問題なのです。

こうなってしまう前に、モリブデンスプレイなどを予め散布することを、勧めています。
壊れてしまった後の修復を考えると、何倍も安上がりで、早く、楽。サビてネジを緩めるのに一苦労というのが、サビることができないから、まずない。
料理で言えば「塩」みたいなもの。と調味料に例えるとは巧く言ったもので、私はこれがなければ整備ができないほどの物。

トルク管理をきちっとするところにはモリブデングリースを、高温部やマフラーのフランジナット部には、アンチシーズやスレッドコンパウンドを塗る、ウェットなベトツキを嫌う部分には乾燥するモリブデンスプレイに、電気部分には電気用のグリースやスプレイを使うなど、なんでもモリブデンスプレイではなく、各箇所に合わせてケミカルを使い分けることも重要です。

ネジの緩み止めをしたい場合はスレッドロッカーを使い、緩み止めと、強力な漏れ止めの両方が欲しいときにはスレッドシーラントを使い分けます。

また、その同じ種のケミカルでも、性能や適用箇所も様々で一概に全く同じ効果が期待できるという訳でもありません。
例えば、エボスポーツスターに多いブリーザーからオイルがでてくる症状。
アンブレラバルブが硬化してダメなんだろうから、交換してみようか。そこまでは普通。

ただ、交換するだけでは△。

アンブレラバルブにシリコーングリースを塗って交換は○。
しかし、普通のシリコーングリースでは流れ出てしまうこともあります。

実は、これを◎にする方法があります。

流れ出てしまわないシリコーングリースというモノが世の中には存在しています。
それは、真空炉のシールに使われるシリコーングリース。
超高温にも対応し、化学安定性にも優れ、11気圧まで耐えられる。

製品が生きるか死ぬかの真空炉に使われるケミカル。
そういう現場でしか使われないものだから、一般には殆ど出回ってない。
値段も驚きプライス。腰が抜けるほど高いです。

それをアンブレラバルブとロッカーカバーとの接触面へ適度に塗ると、よほどの事がない限り、ブリーザーからオイルが出てくることはありません。このシリコーングリースに切り替えてからは、エンジンを組み立てて、始動したその時からブリーサーが確り仕事をしているのが確認できます。

(エンジンオイルを入れすぎてブリーザーからオイルを吹く事もあります)

また、普通のシリコーングリースでも十分ですが、塗り過ぎない程度にロッカーカバーのラバーガスケットに塗ると、これまた漏れ防止に最適なのです。
「ロッカーからオイルが出てきてディーラーでガスケット交換してもらったけど、また漏れた」という話を聞きますが、それは組み方がマズイのではなく、そのケミカルの使い方が今一歩というのが多い。まぁ、イコール、組み方がマズイになってしまうのですが。エンジン開けてみれば、すぐに分かります。

要するに、シリコーングリースを塗ったことでラバーガスケットのシール性が向上したということです。
スポーツスターに限らず、オイルが出てくるのは悩みの種です。
私は、今使っているケミカルより、良いと認めたケミカルがあれば、迷わず切り替えていきます。

今、製品化前の「メッキ防錆ケミカル」も、メッキ用の防錆剤としては画期的なものです。

メッキ表面に膜を張ったりしないから、メッキの光沢にはほとんど影響せず、普通に磨くこともできる。磨いても、防錆効果は継続する。メッキ表面の穴を埋め、サビの元(発生源)を断ち、サビを食い止めてしまうという発想が素晴らしい。
いままで使ってきた防錆剤では、メッキ製品には長期的に効果が継続しないし、防錆効果が継続しても、膜を張ってしまい見た目に影響したり、ベトツキがあったりしてたからなぁ。

どちらにしても、長年やってなければ思いもしないことです。

(かんりにん)


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