「いつもにこにこ・みけんにしわなし」
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昼過ぎに年配の男性がやってきた。
「これ、あんたとこのネコのか。」 見ると、確かにメイの首輪の切れ端である。
そうですと言うと、 「昨日処分させてもうたでな。」 と言う。
え?処分?と聞き返すと、 「保健所に持ってってもらったから。」
え?と言ったきり次の言葉が続かない。
隣のご町内に、どうやら、ネコ屋敷があって、 そこのネコに困ったこの男性が、ネコ罠をしかけているらしい。 それにメイがつかまったらしい。 ネコ屋敷のネコではない証拠に首輪をしていたので、 あちこち聞いてみたらたまたまうちの知り合いに当たって、 うちのネコだと知れたらしい。
赤い首輪の切れ端を、「まぁ、これだけでも埋めたって。」と持ってきたのだ。
見せしめのつもりなのやら、 親切のつもりなのやら。
ただ、私がそのネコ屋敷の主人とは違うタイプの飼い主だと知って、 男性は申し訳ないような顔をした。 相当そのネコ屋敷との間に確執があるのだろうと想像はできる。 うちのネコはよせばいいのにノコノコと出かけていって巻き込まれたのだということも想像できる。
「おとうさんとこに、うちのが、ご迷惑かけたんやろか?」 と聞くと、 「うちはええんやけど、近所がみんな困ってるもんでワシが代表で罠をかけとるんや。」と歯切れの悪い返事。
あまりに突然のことなのでただただぼーぜんとする。
ネコ害は確かに腹立たしいもので、ネコを憎む人はとても多い。 このおとうさんもネコ害に我慢ならない人なのであろう。
メイが何か迷惑をかけたかどうかじゃなくて、 メイが運悪くこの人の罠にかかっただけなのだ。
だんだん申し訳ないような顔になってくるその人に、 ご迷惑かけてすみませんでした。お手数おかけしました。 と頭を下げて見送ってから、 しばらくぼーっとする。
もうメイは、いないのか。
処分した、と、言っていた。 もう帰ってこないのか。
エサ皿を見る。 爪のあとのついた柱を見る。
保健所に電話をする。 あきらめきれないのだ。 もし万が一、まだ生きていたらと。
保健所では昨日収監したネコは1頭だけだという。 まだ処分されていないという。
カッコ悪く電話口でしゃくりあげて泣く。
すぐうかがいます。と電話を切って、保健所に向かう。
薄暗い倉庫の中のぬれた檻のなかに、メイがいた。
メイ、メイ!
「なうー。」
いつものように甘えて腕の中に抱っこされる。 あほメイ。
「首輪つけておいてくださいね。飼い猫とわかれば、連絡できますから。」 といわれたので、 切り取られた首輪を見せて、 たぶん、こちらに引き取られたときにはもうつけてなかったと思います。 と言ったら、 係りのおじさんは絶句して、 「わかりました。本当でしたら返還するのに料金がいるんですけど、 今日はいいです。大事にしてあげてくださいね。」 と言ってくれた。
帰り道で新しい赤い首輪を買った。
あきらめなくてよかった。
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