川底を流れる小石のように。  〜番外編〜  海老蔵への道!
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2004年05月22日(土) おそるべし当日券・・・。

 平日昼の部を三階席で観る予定。
 夜の部の勧進帳、千秋楽の前にもう一度だけみたいものよのう〜と思っていたので、
 だったら早起きして当日券に並んでみるか!と前の晩に、ふと思い立つ。
 とはいえ始発に近いような時間に並んで、10時にチケット発売。
 昼を三階で観て、それから当日券で夜の部鑑賞となると、相当キツイ。
 一度は五時くらいに起きてみたが、とうてい布団から出られず。
 もう一度ベッドにもぐり込む。

 結局、昼の部ギリギリに到着。
 「暫」、伊藤園の昼の部の時もちょっと思ったのだが、声は大丈夫なんだろうか?
 75%くらいの声をギリギリにだしてるような、
 少しざらついてるような気がする。
 権五郎が本舞台に来てからが特に。

 海老蔵は頑張って元気そうにしていたが、
 料理人喜助役の時、はだけた胸元からのぞいた肌が、
 蕁麻疹かなにか、赤くボツボツと痒そうにあれていた。
 疲れてるんだろうな。
 
 夜の部の幕見は早い時間から行列していることだろう。
 なので昼の部のラスト15分を切り上げて、外に出る。
 ミーハーな私にとっては、これは相当に勇気のいることだ。
 喜助のふんどしをあきらめ、夜の富樫に会おうという、究極の選択。

 外はすでに夜の部の人で凄い混雑。
 幕見の最後部に並ぶも、定員を超えておりますので入場できないかもしれませんとのこと。
 雨まで降り出し、とほほな気持ち。

 ほどなく昼の部が終わり、さらに混雑が増す。
 ちょっと嫌だなと思ったのは、
 この混雑の中、歌舞伎チャンネルのスタッフが歩きたばこで通り過ぎたこと。
 今にも誰かに火傷させそうな混雑だったのに。
 普段お世話になってる歌舞伎チャンネルではあるが、これはいけない。
 むむうう。。
 ようやくジワジワ列が進みだす。
 雨降りのせいか、幕見の行列がゆっくり進む間を、
 雨を避けつつ強引に突き抜けてゆこうとするチケットを持った老人多数。
 頼むから無茶せんでくれ。
 あと一息!と思っていると、
 「申し訳ありません!ここまでで定員いっぱいです」と
 私の少し前で区切られてしまった。
 がっくり。

 これで一幕目の白石噺とニラミの口上は見られないわけだが、
 このまま二時間ちょっと並べば勧進帳は立ち見でみられるらしい。
 
 座席数90、立見数60、合計150名の定員だが、
 その殆どが次の幕「勧進帳」まで券を買っているとのこと。
 30名くらいが口上が終わると出てくるかも?と係りの人は言っていたけれど、
 一度中へ入ってしまったら、居続けも可能なのが幕見のシステム。
 人数は読めないだろう。
 どのみち入れても立ち見は必須。
 でも覚悟は決まっているので、ともかく大人しくさらに行列。
 歌舞伎座の番頭さんがベンチを出してくれたので、座って待てる。
 ありがたや。
 しても、こうして窓口のそばで小一時間過ごしていると、
 どうにもこうにも勝手な質問や言い分をもって係りにつめよる人のあまりにも多いこと。
 その都度、繰り返し丁寧に説明する歌舞伎座スタッフ。
 たいへんだなあ。
 
 静かに待っていると、さささと歌舞伎座のお兄さんが登場。
 お一人ですか?三階席、当日券がでましたよ、と言ってくれる。
 わおー!当日券!
 今やオークションでも、三階席は倍以上出さないと手に入らない夜の部。
 はい!三階でみますとも!
 チケット売り場に誘導され、もはや夢心地。

 すると驚くべき事に、オペレーターのお姉さんが見せてくれたモニターには、
 一階一等席の当日券が!
 しかも前から二列目、真ん中!
 自分の目が信じられず、お、あわ、ど、どっちが舞台でしたっけ?などと聞いて笑われる。
 このチケットが、どんだけプラチナか俺は知ってる。
 しかも6月の一等席お断り電話が後援会から来たばかりだ。
 その分浮いたお金がある!
 何を迷うことがあろう。
 (ちなみに、どの席かは確認しなかったが、三階席もこの時点であるとのことだった)



 ふわふわと夢見心地のまま入場。
 もう始まっている薄暗い場内を係りのお姉さんに導かれて着席。
 目の前で菊ちゃんが、姉妹ご対面の場面でよよよと泣いてる。
 すんげーー!こんな席でみられるのか!
 富十郎さんのたっぷりピリリとした演技も、菊ちゃんのめんこいさまも、
 時蔵さんの仇っぽい美しさも、迫力!
 しかも、この姉妹、良い香りがしてる!レモンみたいな何とも言えない良い香り!
 わあ〜。
 
 この幕、姉妹の再会を富十郎さん扮する主人惣六が障子の影から聞いており、
 ついもらい泣きしてしまう話なのだけれど、
 この席だと、まるで私も一緒に聞いてるような気持ちになってくる。
 女形さんは、もちろん美しいのだけど、
 間近で見る富十郎さんの、きりっと美しい目線や張りのある声に
 すっかり惚れ申した。
 天王寺屋!と心でかけ声。

 幕間、気が付くと三階席仕様のジーンズで、顔はオイリー、髪もぼさぼさ。
 まさかこんな席で見るとは、お釈迦様でもご存じなかった。
 とほほ。
 
 それでも、口上では目の前で海老蔵ににらんでもらって、
 死んでしまいそうになる。

 勧進帳。
 視界丸ごと、頭の中すべて海老蔵富樫に持って行かれる。
 すんげーー!
 呼吸できない。
 泣けて泣けて。
 すごい緊迫感。
 息づかいや、裾をさばくしわぶきの音1つひとつ、視線の行く先、額の汗。
 全てが耳に入り、目に飛び込んでくる。
 幕がひかれ、ほうっと肩で息をつき涙をぬぐうと、
 周りのご婦人方も同じように泣いてる人多数。
 
 
 最後の幕も、こんな席では気が抜けず、
 三津五郎さんの熱の入った宗五郎堪能。
 こうしてみると、芝雀さんのおはまが、
 なんとも情の深い女房っぷりでよいなあと思う。
 菊ちゃんのおなぎは、宗五郎に妹が亡くなった時の状況を説明しにきたのだが、
 そのお女中ぶりが、落ち着いてしっとり若やいで好ましい。
 三吉の松禄さん、これがこの間俳優祭で飲んだくれていた人かと思うと、にやけてしまう。
 父親役の松助さんの背中のお芝居が、なんとも泣ける。
 この方、私の中では「助六の通人」のイメージが強いのだけれど、
 昼の部では腹だし赤っつらで、どーんとしていたし、夜はこのよぼよぼぶり。
 すごいなあと、今更感動。


 いやはや、思いがけずにこんな席でみることが出来て、
 ぼーーっとしたまま帰宅。
 喉から手が出るほど欲しかったかぶりつきの席だけど、
 一体どんな経路で、今日私のもとへ届いたことか。
 もし口上から幕見で入れていたら、手に入らなかった席だった。
 本当にご縁なんだろうな、とつくづく思う。
 矛盾するようだけれど、
 チケットは、基本は無欲で、でも最後まであきらめない、が肝心とみた。


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