なべて世はこともなし
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2006年11月18日(土) 更新再開記念スペシャル:ようやく完結。ダブリン家がある!シリーズ3

更新再開に際して、きちんと話をまとめておきたかったのが、「ダブリン家がある」シリーズ。2ヶ月近く開いてしまって話をご記憶でないという方、そんな話しらねーよという方は、どうぞ、その(1)その(2)その(3)その(4)その(5)その(6)その(7)をご覧ください。全部読むのはちょっと面倒という方はその(6)その(7)を読んでいただければだいたいの話はつかめると思います。あと、一部内容が10月2日の日記にかぶってますが、きちんとした形で完結させたいと思ったので敢えて重複させてますのでご了承ください。


結局最初の「厚化粧おばあちゃん家」か、「大家が隣にすむきれいなウナギの寝床か」というある意味で究極の二択で、ひでかすが私がいいなあと思っていた、ウナギの寝床に拒否権を発動し、21倍だかの競争率を勝ち抜いて住めるという状態になったのにそれを断ってしまった。こうして、結局「厚化粧おばあちゃん家」に住むことになったのです。


その翌日。私は掲示板で気になった投稿があったので、ちょっと実験をしてみることにしました。


4866番の掲示板の投稿より転載。

仕事中もずっとdaftをチェックしておりました。もちろん仕事はそっちのけ。しかもある特定の地域の物件をいち早くメールしてもらえるよう、設定もすると言う気合の入れよう。ある日、よさそうな物件があったのですぐに電話。しかし、電話に相手が出てもあわてて、「えっと、いつ物件が見せられるかどうかわかんないから後で電話する。名前と電話番号ちょうだい」といってくれたがかかってこず。(不動産屋とおしてないところ)

その後違う物件で電話したら不動産屋だった。
また同じ答えをされるものの電話がかかってこず。1時間半後シェアーする友だち(アイリッシュ、女)に代わりにかけてもらったらすんなりと時間と日にちを教えた!

そこで思った。「こいつら、人種差別してる。」

もちろんその後も電話なんて私にはかかってこなかったのであった。

まあ、2件だけそれがあったほかは私は大丈夫だったんですがね。2件くらいで軽々しく人種差別といってはならないと誰かに怒られそうな気がする。。。



これを読んだときには正直言って、「さもありなん」と思った。この際だから私も実験してみましょう。


実験台に運悪く選ばれたのは、LisneyというDrumcondraにあるエージェンシー。ここ、何回か異なる物件で電話をかけたが、色よい返事をもらったためしがない。Daft.ieで見つけたNorthwoodの物件について電話。


私:「Daftに載っていたNorthwoodのアパートについてお伺いしたいのですが。ご担当のXXXさんはご在籍でしょうか」
相手:「少々お待ちください」



電話を回される。


私:「Daftに載っていたNorthwoodのアパートなんですが、まだ空室ですか?」
相手:「あ、さっき契約されたところです」
私:「そうですか。どうもでした」



で、30分後に、アイリッシュの同僚に電話を頼む。


相手:「実は一組興味を持っている方がいらっしゃるのですが、まだ空室ですよ。内見されますか?」


人種差別化どーかは知らんが、私と同僚のときでは返ってくる答えが違った。これは事実。


まあ、これが人種差別だとしても私は全く驚かないし、むしろ、そうだろうなあと納得さえする。今はどうかは知らないけど、私が日本でアパートに住んでた頃は、「外国人不可」だの「水商売不可」だの「子供同伴不可」などいろんな規制があって、それが堂々と広告に書かれていた。それ自体わからなくもない。外国人は身元の引受人がいないことが多いから万が一のトラブルのときに困るとかつけようと思えばいくらでも理由はつけられる気がする。


ともあれ、そんな国から来た人間が、「こっちで人種差別された!」と怒っても…という気がする。もっと大本に立ち返ると、人種差別のない国なんてたぶん今のところこの地球上にはない気がするし。


ただ、どうせ最初から外国人お断りのつもりだったら、いっそのこと最初からそう書いていてくれればお互いに時間を無駄にしなくてすむのにとも思う。むろん、そんなことを書いたら、人種差別だなんだで違法だの何だのという騒ぎになるのは目に見えているが。


ただ、ひとつの明るい話としては、日本人は「逆差別」される可能性もあるということ。一度よい日本人を店子にとった大家さんは、汚さないわ、文句は言わないわ、家賃も滞りなく払うわと、いたく感心して、以降その店子が出て行くときに、「ぜひ別の日本人を探してきて」と懇願したりすることもあるらしい。


いや、そんなとってつけたような話じゃなくて、つい最近もそうやって日本人が住んでいたアパートが別の日本人に引き継がれたケースを知っていたりする。語学留学のホストファミリーにしてもしかりで、「日本人限定」というホストファミリーも身近に知っていたりする。要は、「捨てる神あり拾う神あり」ということなのだと思う。


かくして、数日後には契約書にサインをしまして、決戦の木曜日の翌週末に引っ越すことに。これを運がよかったというのか悪かったというのかは意見の分かれるところかもしれませんが、私達の前の家の退出期限は月曜日。


で、新しいおばあちゃん家の入居日はその前日の日曜日。つまり、日曜日と月曜日にすべてを終わらせなければいけない。よく言えば二重家賃がほとんど発生しない。悪く言えば、月曜日には仕事のある二人、日曜日にすべての荷物を動かして、家の掃除をするというのはほとんど無謀に近い。さあ、どうなる?


かくして引越しの日曜日。「引越しには一日かかるから、朝の9時半には鍵をもらいたいんですが」と新しい家の大家に頼んでおいたが、大家は9時になって、「ごめん!まだ片づけが済んでないから11時まで待って」と言ってくる。こうしてますます少ない時間がより少なくなる。


それからは…よく覚えてない。ひでかすと、手伝いに来てくれた友人と私の3人で、手当たり次第に荷物を私の車に突っ込んで、歩いても10分くらいしかかからない新しい家に運び込む。もう、時間がなくて考えるだけ時間の無駄だからと、目についたものをそのままゴミ袋に入れて捨てりゃいいのに、捨てずに車に放り込んで新居に運ぶ。それを繰り返す。


私がアイルランドにやってきたときは、当然といえば当然スーツケースひとつでやってきた。それから年々歳々荷物が加速度的に増えてゆく。引っ越すたびに荷物が増える。


今じゃ考えられないが、最初の頃の引越しなんかタクシーで荷物を一度で運びきってしまったのに、今じゃ、スーツが5着だの(数えてないからわからんけどそれくらいは確実にある)書籍に関してはカウント不能、CD・DVDも多数…と、まあ、考えられないほどの荷物に囲まれているわけ。ひでかすの荷物も入れてだけど、車で10往復以上しました。今度の引越し。


すべてに荷物を運び終わったときは、すでに夜の9時を回っていた。





そのときに撮った新しい家の写真。どこのご家庭も引っ越した直後はこんなもん…なんですかねえ。


で、荷物を新しい家に運び終わった時点で日曜日が終わってしまったというのはほとんど致命的な遅れといっていい。新居が片付いていないというのは、開き直ってしまえばそれからのんびり片付けていけばいいのだが、前の家が汚いまんまというのは非常によくない。


これまた開き直ってしまえば、前の家、あとは野となれ山となれ、テキトーに汚いまま返してしまったっていい。よほど壊したりとか、よほど壊したりしない限りデポジット(敷金)はこの国では返ってくる。…だけどさ、この辺が日本人だと笑われるのかもしれないけど、やっぱり気持ちよく返したいんですよね。きれいにして。


百歩譲って、あとは野となれ山となれ状態で返すとしても、まだ家の中はゴミだらけだし、少なくともあと1-2時間は掃除をしないといけない状態。今から掃除機をかけたりすると近所迷惑というのも事実。


やむなくひでかすと私はよく月曜日の午後、半日休暇をとりました。月曜日が特に忙しい私は上司に散々文句を言われ、いつの忙しいと嘆いているひでかすに至ってはいったいどうやって休みをひねり出したのか疑問。


私は昼の2時ごろ前の家に行き、掃除機を手始めに思いつく限りの場所の雑巾がけをして、水周りの徹底した掃除を始める。途中からひでかすも参加して家の中の徹底的な掃除を始める。


大家は夕方の6時ごろに来るといっていたので、いつものパターンからして、来るのは早くても6時半と見ていたのだが、ありがちと言おうかなんと言おうかこの日に限って大家は6時きっかしにやってきた。


大家:「まだ、終わってないの?」
私:「うーん、あと1時間」
大家:「んじゃ、ちょっと散歩に行って、1時間後にまた来るわ」



大家は1時間後に酒臭い息で帰ってきた。どこへ散歩に行ったやら(愚問)。ちなみに、私もこの日記をビール片手に更新してるから人のことは全く言えないんだけど。


大家は、家の中を見回すと三浦友和のような口調で、


大家:「時間、かかったろう」


はい。かかりましたよ。大の大人二人で半日ほど。


無論そうは言いませんでしたが、大家はいたく感心した模様。デポジットを全額返してくれたのは勿論のこと、2週間に1度くらいの割で手紙をわざわざうちまで持参してくれています。やっぱり、気分よく取引を終えるって大事なことだと痛感した次第。こういういい日本の常識は、どんどんアイルランドに持ち込むべきだと思う。もっとも、そうすることで日本人であることを悪い意味で利用されないように気をつけなきゃいけないという問題は残りますが。


というわけで、ダブリン家があるその3はこれでおしまい。おまけとして、掃除が終わったときに撮った前の家の写真をどぞ。4ベッドルーム、1バスルーム、リビングに予備室、台所に広い庭というこの家、家賃は月に1650ユーロです。





まずはこちらは主寝室。私の部屋でした。この作り付けの棚がいらないものを全部しまえるという意味で本当に便利でした。





こちらはひでかすの部屋。主寝室が8畳とすれば、こちらは6畳くらいの計算になるのかな。この部屋のやはり作り付けの棚があり、便利。





撮影に広角レンズがほしくなるこの部屋は日本的に言えば3階になる屋根裏部屋。広さは5畳くらいあるのだが、屋根が迫っている分体感的にはもっと狭く感じる。引っ越した瞬間は、この部屋もいいかと思ったが、掃除をしながらそのすごい圧迫感を感じ、「ああ、この部屋には住めないな」と感じた。





こちらに至っては、撮影に魚眼レンズがほしくなる玄関真上のボックスルーム。狭い!ですが、現在のダブリンでのハウスシェアで「シングルルーム400ユーロ」と書かれていたら、大方こんな部屋です。これより家賃が高かったり安かったりするのは、家そのものの質や、場所などで、部屋そのものは多分似たり寄ったりだと思います。





トイレです。見りゃわかると思うけど。





リビングルーム。この棚にワイングラスなどを並べていたのはよかったけど、この壁の色のセンスの悪さと、もはやコメントのしようのないソファーにいたっては論外でした。すわり心地は悪くなかったけど、このデザインはあんまりでしょ。





予備室。そして、私のお気に入りの部屋。実は棚の中は私の酒コレクションで埋まっていたというのはここだけの話です。お客さんが来たときなどに実に便利な部屋でした。





台所。おヒマな方は、拙著「指差し・アイルランド」の台所のイラストと比較してみてください。そう、あの台所は実在したのです。




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