なべて世はこともなし
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2004年07月27日(火) トイレの中にスッチーさんを押し込めるのは...やはりまずいというお話

数日前のニュースによれば、全日空のチャーター機の機長がおよそ30人の乗客をコックピットに入れ替わり立ち代り入れたとかで国土交通省から怒られたとか。この記事を読んで思ったこと。


え?全日空がダブリンに飛んできた?


このヒコーキが関空発ダブリン行きということに私は驚いた。だって、アイルランドから日本に行くのに、いちいちヒースローだのフランクフルトだので乗り換えるのって面倒ですよ。直行便があればいいなと何度思ったことか(利用者の数とか考えたら、まず、無理。何せダブリン空港には定期旅客便ののジャンボは飛んできてないのです)。ゆえに、チャーターとはいえ日本から直行便が飛んできたというのは驚き。


完全に論点がずれてますね。問題は、オタクが機長を刺殺したあとに禁止された乗客のコックピットへの立ち入りを認めたという点。まあ、これ、このオタクの機長刺殺事件とか9.11がなかったらニュースにもならなかったろうなあ。


これが事件になるならこっちはどうでしょう?アイルランドの例の格安航空会社は、全日空の社長をしてあきれ果ててアゴが外れるようなことをしてます。



(お約束のイメージ画像)


そう、新しいヒコーキからは窓のブラインドやシートのリクライニングを設置せずにコストを下げるだとか、ゆくゆくは乗客の預託手荷物から金を取ろうとか、まあ、


(ど演歌「浪花恋しぐれ」の節で)
♪ゼニのためならお客も泣かす
それがどうした文句があるか



という会社のお話なんですが、さすが、モラルもへったくれもないですね。



(数日前の夕刊紙の一面)


キョトーン。


この見出しをそのまま理解すれば、


トイレの便座を座席として使った


ということになります。


話の前提として、航空会社には「スタッフトラベル」というシステムがあるのを御存知でしょうか。私もよくは知りません…勤めてるわけじゃありませんから。しったかして続けさせてもらうと、これ、よくある「社員販売」とか「社員割引」のヒコーキ版。席が空いてさえすれば、格安の運賃(あるいは諸税の自己負担のみで運賃は無料)で社員は飛ぶことができるのです。ただし、「空いていれば」の話。空いていなければ乗れません。当然ですがチケットを持った(あるいはお金を払う意思のある)お客さんがいる限りそっちが当然優先です。


とはいえ、航空会社にはけっこう横のつながりがあって、例えばA社の社員でもB社のヒコーキに乗れたりします。つまり自社が満席でも他社に乗れたりするわけ(運賃が同じとは限りません)。ただし、「格安航空会社」と呼ばれる会社にはこの横のつながりがないのです。つまり、自社便が一日一便しかなく、それに乗れない場合、翌日まで無為に待つということになります。ちなみに、「スタッフトラベルで乗れなかったから今日は休む」というのは理由になりません。会社によっては懲戒の対象になるようです。これが話の前提。


以下、この記事および、それ以降の新聞記事、さらには私の勝手な憶測を入れて物語を再構築すると以下の通りになります。


場所はスペインのフランスの国境に程近いGironaという空港。某社はこの空港を「バルセロナ」と言っているらしいが、バルセロナまでは月ほども遠いらしい。ともあれ、この空港から夏はダブリンに一日1本の割で飛んでいるらしい。


夏のハイシーズンということもあって、この日は予約で満席。で、困ったのは、約2名のオフできていたスッチーさん。ふだんなら、no showと呼ばれる、予約をしたにもかかわらず空港に現れない人がいるものだが、今日に限っていない。予約をしたお客は全員やって来た。…つまり、満席で乗れない(ちなみに、この会社はオーバーブッキングはしないそうです)。


こういう時、他の航空会社での一部パイロットは、「オフのスッチーさんならジャンプシートを使っていいよ」という人もいるようです。とはいえ、基本は離発着時には「全員着席」していなければいけません。あの急加・減速時に立っているなど自殺行為ですから。ところが、パイロットが


Ah, that's graaaaand.
(意訳「だいじょうぶだよ」)


と言ったかどうかは知りませんが、こともあろうに、この満席で乗れないオフのスッチーさん2名を勤務中のスッチーさんが座るはずのジャンプシートに座らせ、で、席がなくなった勤務中のスッチーさん2名は離発着時に後部のトイレにいた…と言うのですから、もはや呆れて言葉もありません。上の「話の前提」に書いたとおり、これに乗り遅れると、翌日までヒコーキはないし、もしかすると翌日から仕事だったのかもしれず、どうしても乗りたかった...大方、当たらずしも遠からずだと思います。


で、彼らにとっては運の悪いことに、これをチクった乗客がいるようで。問題になります。この会社の広報の人もなかなか肝っ魂が据わってまして、言うことがすごい。これは確かに問題だと言いつつ、


「これは、オーバーブッキングの問題ではなく、スタッフトラベルの問題ですから」


と開き直る始末。そう、トイレに押し込まれたのは客ではなく自分のとこの社員だから良いじゃないかと言う理屈。「会社もいろいろ。社長もいろいろ」などと開き直って顰蹙を買った総理がどこかの国にいましたが、開き直り具合はそれをも越えてます。


まあ、これに世論かあるいは政府が黙ってませんで、結果、会社は関係者に離職の勧告を出しますが、パイロットを含め、全員拒否。結果、会社はトカゲの尻尾切りよろしく関係者を懲戒解雇しました。


私は言いたい。


この会社にはモラルがないんかい!


例え格安だろうとなんだろうと、機長をはじめ客室乗務員は乗客を安全に運ぶ義務があるはずです。そんなモラルのかけらも持っていないと思われる会社のヒコーキには…やっぱ乗りたくないですね。


かわいそうなのは、この会社のおかげで価格戦争に巻き込まれているアイルランドの国営航空会社。昨日、1300人のレイオフを発表した模様です。この会社も一生懸命セールをやってまして、9月の週末にデュッセルドルフ往復の航空券を買いましたが、往復80ユーロ(税金込みで)。安すぎると思うのですが、ライバル会社のページでは


「うちのセールはぼったくり国営航空会社のセールの半額だけんね」


とケンカを売られてます。この潰し合いとしか思えない価格競争は一体どこまで続くやら。どっちかの会社が大事故を起こすか潰れるまでやりそうだなあ。くわばらくわばら。

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