なべて世はこともなし
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2003年04月30日(水) ちょっとした事件から見るアイルランド人とのつきあい方(その2)

昨日の日記の続きです。


待っているうちに雨も止み、私は車の中でぼーっと待つ。こういう時にたばこを吸う人はいいなあと思う。ただぼーっとしているのでも手にタバコがあるのとないのではかなりの差があるような気がする。たばこを吸っていればなんとなくタバコを吸うことが目的でいるような感じだけど、ただぼーっとしているのはなんとなく格好がよくない。…などと壊れた車の前で格好を気にするなど愚の極致ですが。


まあやることもないのでイグニッションをひねったりしてみるものの当然車は反応を示さない。だいたいなんで給料日に車が壊れるねん?


工事現場の現場用のブルドーザーをトラックの荷台に乗せるまさに神業とでもいうべき技術に感心していると、フロントに


Recovery


と赤字で大書きされたトラックがやってきた。所要、電話から計って45分。うん、アイルランドにしては決して悪くない。


トラックの運転席から降りてきたのは私くらいの年齢のお兄さん。なんとなく数年前までシャコタンのスカイラインに乗っていたような感じの人(そういえば珍走団ふうの車ってこっちじゃあまり見かけないなあ。走り屋さん仕様の車はたまに見るけど)。


で、降りてきておもむろにボンネットを開け、取出したのはバッテリーブースター。


私:「あのー、ラジオもハザードもつくんできっとバッテリー上がりじゃあないと思うんですが…」
お兄さん:「やってみないとわからない」



で、バッテリブースターをつないでエンジンをかけようとするも当然かからない。自慢にならないけど私が車関係で分かるのはここまで。ボンネットを開けても


「エンジン脱落してないじゃん。何で走らないのよ?」


と真顔で言いかねないアホタレです。


で、この元珍走団ふうのお兄さんも実はあまり車のことを知らないようで。バッテリー上がりでないと分かると、


お兄さん:「こりゃ、修理工場に持ってかないとだめだね」

…うーん、4トンの免許さえあれば、この仕事、私にもできるなあ。

お兄さん:「どこの修理工場に持って行ってほしい?」
私:「どこにも行きつけの修理工場なんてないけど…」
お兄さん:「じゃあ、ボクの知り合いがやってるBallymunの修理工場に持って行こう」



なんでまあ数ある修理工場の中からBallymunの修理工場を選ぶかねえ?


Ballymun…この日記をしばらく前からお読みの方は、「かわいい赤ちゃんの写真」という日記をご記憶かなあとも思う。あのBallymun。10-15階建ての中高層アパートが並び、日が暮れてからはドラッグのやりとりがあちこちで行われ、しょっちゅう車が燃やされるあのBallymun。そういえば知り合いの日本人の女の子も車が盗まれて、散々乗り回された挙げ句に見付かったのはこのBallymunだったよなあ。


よりによってそんなとこに持っていきますか?あなた?


…とはいえ、実際のところ他に選択の余地がない。仕方がないのでBallymunの修理工場に持っていくことに。


お兄さん:「で、どうする?今から会社に行く?それとも家に帰る?」

時刻はすでに午前10時。トラブル発生からすでに2時間経過。陸の孤島にあるうちの会社、車なしでは到達するのは著しく困難です。最寄りのダブリンバスのバス停から歩いて30分はかかる(どういうとこやねん)。


私:「帰る。途中まで乗っけて行って」


そしてレッカー車の荷台が傾いたと思ったら、お兄さんはなれた手つきでワイヤーを使い車を引っ張りはじめる。数分後、車は荷台にしっかり乗せられた。


で、自宅近くで降ろしてもらう。


お兄さん:「じゃあ昼過ぎに電話するから。で、そっちに連絡するまで修理はしないようにするから。ちゃんと同意を得てから修理するからね」


と言いつつもらった名刺。


…怪しげな会社名と自分の名前。そしてケータイの番号のみ。うーん、信用できるんだろうか?


で、自宅から会社に電話して、今日休む旨伝える。


上司:「今日休む?全然オッケーよ」


…この辺がアイルランドも捨て難いと思う理由だったりする。


で、昼過ぎても連絡が来ない。午後2時ごろ電話してみると


お兄さん:「ああ、まだ車、レッカー車から降ろしてない」


…あんた、私の車をレッカー車に乗せたままどこをほっつき歩いているんですか?


で、午後5時。充電が終わったケータイが鳴る。


お兄さん:「ああ、修理終わったから。レッカー代入れて225ユーロね」


…ってあんた。「ちゃんと同意を得てから修理する」って発言はどこに納めるの?え?確かに車の修理にしては安くついたよ。だけどあんた「約束」ってもんがあるでしょうが。や・く・そ・く。


そののちドイツ語のコースが終わった午後9時。私は日も暮れかかったBallymunにバスで向かう。13番のバスはシティセンターで結構な数の客を乗せ、ならず者が吸うたばこの匂いを車内に漂わせながらBallymunへ。


で、Ballymunの中心でバスを降りると目に飛び込んでくるのは(推定)麻薬を警戒中のパトカー。ついでにおまわりさんも数人歩いている。ここではいつものことなんだろうけど、何でもない住宅地にこれだけのケーサツがいるとやっぱりこの辺は治安が悪いんだろうなあと思う(まあ逆におまわりさんが居るから安心と言うのも事実ですが…例えおまわりさんが丸腰でも)。


で、Ballymunの中心から歩いて10分。ガレージに行くと…誰もいない。ケータイで電話すると、


お兄さん:「ああ、今から行くから」


と言って数分後に、フルスモーク、金ぴかのアルミホイール、超走り屋さん仕様のスバルのレガシィでお兄さんはやってきた(ただしさすがに車内に紫色の絨毯を敷き詰めたりはしていなかった)


やはりそっち系の人だったか。


結局、一部のパーツ交換で済みました。それにしても車が壊れるだけでここまで疲れるとは思いませんでした。もう壊れないでね>車



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