暗い部屋にふわっと雪が舞い込んで来た。
男はふっと息をもらして視線を落とした。その先では缶珈琲がほのかな湯気を細く細く宙へ上げていた。 ……すでに充分寒い季節だ。外ははらはらと雪が舞い、火を落とした暗くがらんとした部屋はそれだけで随分と寒い。 どうしてだか窓が細く開いていて、その寒さは一層男の身に染みた。 それ故にか、男は手にした缶を両手で暖を取るように包み込み、それを時折、口に運んだ。 美味い不味いよりも、口に残る苦味や温かみを必要としているのだ。 男は更に目を伏せ、ほんの少しだけ笑った。
「……遅せえぞ」 男は不意に呟くようにそう言った。 ちゃりん、と鈴の音を鳴らして小さな白い仔猫が細く開いて雪の降り込んでいた窓からのんびりと駆け込んで来たのだ。 くすっと笑って男は立ち上がる。―――椅子代わりにしていた、古いスーツケースから。 そして、雪に濡れて幾分貧相になった仔猫を抱き上げ、肩に乗せるとスーツケースを持って扉を開けた。 すでに荷物も運び出され、火も落ちて暗く寒くがらんとしたその部屋にわずかな時間、外からの白銀の光が差し込み、そして―――光が薄れた。 扉がぱたん、と音を立てて閉まった。
後に残されたのは、ほんの少し温かみを残した珈琲の、空き缶だけ。
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木村拓哉氏演じる、缶珈琲「Fire」の宣伝。 すごく雰囲気があって一目惚れしました……。 たった今、一回見ただけなのに何故か文章に起こしてみる私…(汗)。
でもね、本物のCMを見て下さい。 いい感じです。
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