| 2021年07月04日(日) |
久しぶりに眠ってしまった。眼が覚めた時やけにすっきりしていて、何か変だなと思って時計を見ると午前2時半。え、こんなに私寝たの?というのが最初に思ったこと。そそくさと置き出してもう一度時計を見る。いやほんとに私寝たんだわ、と思ったらちょっと可笑しくなって笑ってしまった。 普通は眠って当たり前なのだろう。でも私はいまだ、眠ること、横になることが不得意。そんな私にとって、5時間も眠るなんて吃驚以外の何者でもない。 そんなこんなの朝、ワンコが私の顔を見ながらトイレをし、私はそれを片付ける役。
恩師に手紙を書く。その前は受刑者さんに手紙を。立て続けに手紙を書いたせいか、ちょっと頭がいっぱいになる。手紙を書く時はいつだって、頭が沸騰する。一生懸命その相手に向けて思いを寄せるから、身体にも力が籠る。 恩師に会えなくなってどのくらい経つんだろう。コロナのせいで先生のホームに行けなくなった。それまで会おうと思えばいつだって会えていたのに、それが突然叶わなくなった。先生のお歳は私の四十上。もういつ亡くなったっておかしくない年齢。先生、逝ってしまわないでね、ちゃんと会えるようになるまで待っていて。そんな思いが手紙を書いているとぐるぐる廻る。身体中がその思いでぐるぐる巻きになる。
この間のカウンセリングで、過去の亡霊があちこちに出て来てる、という話になった。私が食卓の話をしたからだ。 食卓にゆっくり座っていられない、食べるという行為も駆け込むようにしか為せない話。落ち着かないのだ、もっと言うと、食卓が怖い。 「どうして怖いの」 「何と言うか、食卓っていつだって恐ろしいもの、みたいな印象が私の中にあって。そもそも私、食卓でいい思い出何もない」 「たとえば」 「父母との食卓といえば、無言で黙々と食べる、そしていつ雷が落ちるかひやひやしながら食べる、そんな感じ。いつだって緊張の中にいる」 「お父さんお母さんはもう、今、いないでしょう?」 「確かに、今いないんだけど。ありありとそこに居る」 「過去の亡霊に囚われちゃってるのね」 「過去の亡霊?」 「そうでしょう? だって今そこにいるわけじゃないのだもの」 「…」 「今はどうなの? 今の食卓は」 「落ち着かないというか、ゆっくり座っていられない。味が分からない」 「どうして?」 「家人はゆっくりよく噛むようにしなさいって言うんだけど。なんか、いらいらしてきちゃって、早々に食べ終えて、換気扇の下に煙草を吸いに行く。ようやくほっとする」 「なるほど。でもどうしていらいらするの?」 「どうしてだろう。何と言うかこう、すべてをぶち壊したくなるというか、怖い感じがずっと付き纏っていて。家人はいつだってお酒飲むし。家人がお酒を飲むとその背後に義父母が思い出される」 「アルコール依存のお二人ね。でもそれはそこには実際にはいない人でしょう?」 「そうなんだけど…いるんですよ」 「過去の亡霊よ?」 「いや、過去になってないんです全然。今そこに居る」 カウンセラーと話しながら、ああそうだ、私にとって父母も義父母も、加害者たちもみな、過去にはなりきっていないのだ、ということを痛感する。だからうろうろと、私の周りを浮遊している。私はそれに囚われている。 分かっている、囚われているのだということは。でも。薙ぎ払えないのだ。過去になりきらない。 カウンセリングルームを出てから、しばらく頭の芯がじんじんした。でも、もうちょっと考えておかないと、という気持ちもあって。私はじんじんする頭であれやこれや考えてみる。でも何も納得できる答えなんて見当たらない。
過去にする。過去になる。過去のもの。
いつの間にか夜明けの時刻。雨がじっとりと降っている。ざあざあと降っている。肌寒い朝だ。 |
|