あたたかなおうち



 すき

昨日は我が家に祐ちゃんがお泊り。
晩御飯はチンジャオロースーにした。

テレビを見ていて、ふいに祐ちゃんの方を向いたら
祐ちゃんは優しい目で私を見てた。
きゅっと抱きしめられて
「俺、華がいないと生きていけない」
と言われた。
優しい声で。
ふわりと祐ちゃんのにおいがする。

私は目を閉じ、
うん
と言った。

2004年10月13日(水)



 寝顔

昨日も祐ちゃんがうちにお泊り。

祐ちゃんのお仕事は忙しい。
毎日くたくたで帰ってくる。

昨日のご飯はちょっと豪華に
ステーキ用のお肉を和風にじゅうじゅう焼いた。
ご飯を食べてお風呂に入ると
マッサージして、とお願いされる。
そのまま寝ちゃだめだよ、と念を押す。
コンタクトはずしてないんだから。
お仕事だって残ってるんでしょ。

言ったそばから祐ちゃんは寝てしまう。
うつぶせのままで。
もう何をしても起きない。
私は諦めて、隣で寝顔を見ながら背中をさする。
眠った祐ちゃんに勝手にたくさんキスをして。

そして、いつのまにか一緒に寝てしまう。

目が覚めると、もう祐ちゃんの姿はない。
ジャージとシャツが丁寧にたたんで置いてある。



2004年10月14日(木)



 手紙

祐ちゃんの家に泊まった。

私はとても疲れていて、先に布団に入っていたら
そのまま眠ってしまった。
朝、祐ちゃんの目覚ましの音で目が覚める。
おはよう、祐ちゃん。
背中にぴとりとくっつく。

私は寝ぼけながら、
お手紙書いて、とお願いする。
はいはい、と祐ちゃんの優しい声がする。

もう一度目が覚めると祐ちゃんはもういなかった。
テーブルの上にノートの切れ端が置いてある。
ほんの5行くらいの、たわいのない手紙。

祐ちゃんはとてもきれいな字を書く。
生徒のような気持ちで、それを何度か読み返す。

さあ、今日も頑張ろう。


2004年10月15日(金)



 二人乗り

金曜日の夜は、いつも少しだけデートする。

昨日は、ちょこっとだけカラオケに行った。
祐ちゃんが大学時代に働いていたカラオケ屋さん。
内輪の人たちばかりが集まる、小さなお店だ。
祐ちゃんがまだ学生だった頃は、本当によく遊びに行った。

祐ちゃんは歌もそこそこ上手だ。
良く通る声をしている。音程も問題ない。
なんでもこなしてしまう人だと思う。
それでも上手すぎないところに私は好感を持つ。

マスターと祐ちゃんは延々と思い出話をしていた。
今日のお金はいいよ、とマスターがいう。
また顔見せにこいよ、と。

自転車を二人乗りして、私の家に帰る。
おしゃべりしながら、
祐ちゃんの厚みのある背中を眺める。

段差があるからおしり痛いよ、
と祐ちゃんがやんちゃな声を出す。
でも痛くないようにしてくれることを私は知っていて
段差がちょっと楽しみになる。

2004年10月16日(土)



 完敗

日曜日はお昼まで二人で寝ている。
昨日は夕方から私がバイトだった。

バイトまで図書館で祐ちゃんのお仕事に付き合う。
5時までには余裕で終わるから、
バイトの前にル・グレのケーキを食べよう

と祐ちゃんが言う。

私はそのケーキが大好きで
何より祐ちゃんと出掛けるのが嬉しくて
とても楽しみになる。

でも、思いのほかお仕事はたくさんあって、
結局終わったのはバイトの10分前だった。
お仕事だから仕方がない。
分かってはいても、目に涙が浮かんでしまった。

祐ちゃんはちゃんと気がつく。
泣いてるの?ごめんね、ごめんね
私はあわてて否定して、笑顔でバイトに向かう。


帰ってくると、祐ちゃんは本を読んでいた。
あっ
冷蔵庫の中のとって

と言われる。
これ?
オレンジジュースを取り出す。
違う違う
じゃあ、これ?
飲むヨーグルトを取り出す。
違くて違くて

奥に黄色い袋が見える。
あっ、これだね

手に取った瞬間になんだか分かった。
袋の中に小さな箱が入っている。

ル・グレのケーキが2つ入っていた。
お詫び。今日はごめんね。

こういうところにかなわない。
祐ちゃんは私を簡単に幸福にしてしまう。



2004年10月18日(月)



 豪華に…

昨日は記念日でもなんでもないのに
フランス料理を食べることになった。

うどんが食べたくて、
雨の中、必死で行ったうどんやさんがお休みで
仕方なく隣のフランス料理店に入った。

家庭料理を出す小さなお店で、
お客さんは私たちしかいない。
祐ちゃんは研修があったのでスーツを着ていて、
私もコートを着ていたので社会人カップルに見えただろう。

前菜でフォアグラが出た。
二人とも生まれて初めて食べる。
…珍味だねぇ
…珍味だ

2品目に私はエスカルゴを選んだ。
あ、でんでんむし…
言わないでー
(笑)でも貝みたいなものだもんね
確かに貝みたいでとても美味しかった。

メインのお料理は牛肉の赤ワイン煮にした。
お肉が柔らかくてとろけた。
デザートも少しずつたくさん楽しめる。
幸せだぁ…
いちいち感激する私を見て、
祐ちゃんは目を細める。

帰り道、ひとつ傘でくっついて歩く。
ワインを飲んでほろ酔いの私は、
傘からはみ出しながらけらけらとはしゃぐ。
祐ちゃんは優しく私の手を引く。
いつのまにか車道側を歩いてくれている。

でももうフランス料理なんてしばらくいいからね、
祐ちゃん。


2004年10月20日(水)



 おうち

台風の夜を一人で過ごすのが嫌なので
祐ちゃんの家に行った。
メイと、その彼氏がいた。

祐ちゃんはメイの彼氏とルームシェアをしている。


私たちはみんな同じサークルに所属していた。
私とメイは仲が良く、
祐ちゃんとメイの彼氏も仲が良かった。

そしていつの間にか、こうしてみんなでここにいる。
仲の良い家族のように。


笑い声の絶えない、
ここが私のあたたかなおうち。



2004年10月21日(木)
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